表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/40

カズトの実効支配の完了

5月7日、ゴールデンウイークは終わった。


飲食店は繁忙時期が終わるとすぐ会議となる。




本日は株式会社スタイルイーツ店長会議の日だ。




佐山はもう店長会議に出る必要はなかった。




会議嫌いの佐山にとってそれは結構なことだが、


ヒト型AIロボット店長のカズトは店長会議をどうするのだろう。




まさかあの4輪では埼京線に乗ってシンジュクまで行くことはできないし、……もう始まる時間だ。




……と考えていると、


カズトは店舗用パソコンをオンにしてZOOMを起動した。




「おはようございます。今月より居酒屋”新世紀”サイタマ新都心オオミヤ店の店長となりました、ヒト型AIロボット店長のカズトです。皆様のお仲間になれることをうれしく思います。よろしくお願いします」




店長会議のトークルームで拍手が起きた。


どうやらカズトだけZOOMでの参加で許されているようだ。




そもそもカズトはカイシャに存在そのものを特別扱いされていると言える。




37名の他店店長たちにも、動揺が起きているような様子はない。




本山部長もカズトを紹介だけして、いつも通りの各エリアマネージャーによる4月度の営業報告に進んだ。




なにゆえロボットが店長になったのか、どういう意図があるのかとかカイシャとしての説明もない。


いつも通りに議事が進行しているようだ。




「それではこれから辞令を交付します。」


本山社長が前に出る。


進行役の水上事業部長が続ける。




「サイタマ新都心オオミヤ店の店長にはカズトを任ずる。


カズト君にはメールにて辞令を発布し、後ほど店舗に原本が郵送されます。カズトさん、ひと言お願いします」




「みなさま、あらためましてヒト型AIロボットのカズトです。


よろしくお願いいたします」


モニター越しの新宿の本部会議室には、店長37名他、本山社長、本山専務、各事業部長、各エリアマネージャーをはじめとする幹部社員も揃っている。




「わたしの当面の目標はサイタマ新都心オオミヤ店を立て直し、売上利益率を当社ベスト5に入る店へと復活させることです。そのためには


 1. 従業員の採用と教育の見直し


 2. 適正な発注と在庫管理


 3 ロスの削減


 4. 水道光熱費・店舗経費の見直し


 5. 店舗の磨き込みと必要箇所の改装


の5項目を徹底実行することを誓います。


しかし、ただ数字を追うだけではありません。


飲食業、いやサービス業として一番大切なお客様ファーストの精神を忘れずに日々の業務に邁進できる従業員を育てることを誓います。」




カズトに正式に店長の辞令が発布された。




佐山はZOOMで参加しているカズトの隣でモニターを眺めている。


カズトに注意されるので、一応手では若鶏とネギを串にさし”ねぎま”を作っている。




――しかし面白くない。




ロボットが店長になっているのに、特にざわめきの様子もない。


本山社長や水上事業部長からの何か特別なコメントもない。




カズトの新任挨拶は、しっかりとしてたいしたものだとも言えるが、


当たり障りがなく何か物足らない。




そう、なんでロボットが店長になったのかというカイシャからの説明はないのだ。


カズト自身からの経緯の説明もない。




モニター越しなので分かりづらいところもあるが、


店長たちに動揺が広がる様子もない。




肝心のことを明かされず、粛々と議事が進んでいくのだ。




佐山が気になっているのは庭山のあの発言だ。


「……抗あらがってはいけない」


「……見えざる力が働いているのだ」




見えざる力とは何なのか。


あれもこれも謎だらけだ。




しかし、オレは一介のサラリーマン。


粛々と業務に戻らなければならない。






ゴールデンウイーク明けの営業が始まった。




カズトはますます店長として接客の前面に出てお客様とコミュニケーションを取っている。




忙しくなると、大量の料理やドリンクを「パワーアーム」で一気に運びながらも、「ドローン視野」や「アイサイト」の必須技を繰り出し店を切り盛りしている。




「ありがとうございましたー。」


大きく伸びのある、あおいの声が響いた。




「ありがとうございました~。」


悠斗や亮輔の声も連呼する。




なんかこの店、雰囲気良くなった?




そんなはずはない。


佐山は思う。


奴らはカズトにやらされているだけだ。




オレが店長の時の方が、みんな楽しかったに決まっている。




オレは自分自身がバカになってバイトの奴らを楽しませてあげたり、


奢ってやったりしてたからな。




カズトみたいに生真面目にシゴトのことばっかりだと、みんなつまらなくて辞めちゃうんだよ。




「ありがとうございまーす」


「ありがとうございまーす」


厨房から松井さんとタイゾーの声も聞こえる。




何だみんな。


あの無口な職人気質の松井さんまでお客様を見てハタラいている。




佐山は気づきたくなかった。


認めたくもなかったが、


確実にこの店は以前に比べ従業員のやる気が上がり雰囲気が良くなった。




仕方ねー。


オレはオレのやり方でやるだけだ。


転職も視野に入れる。




41歳か。


まだギリギリ転職可能な年齢じゃないのかな?




妻の和美は恐ろしい。


マジでバイトして給料減額分補填しないとヤバいかも。




とにかくしばらくは......カズトと和美の言うことをきいてやり過ごすしかないようだ。




――佐山は黙々と、バッシングと洗い物を繰り返す。


次のチャンスを虎視眈々と狙っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ