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サラとアリシアの日常風景とシルヴィアによる忘れていたヒロイン説明、そこで発覚するレイハルクとセシルによる接触済みのお話、アリシアとリズベットの初会話
踊り場でのちょっとした口論?はふたりが正気に戻ったことで終幕を迎えた。目立ちたくないと言い合っていた二人だが今現在目立っていることに気づいたのだ。二人は急いで階段を駆け上がり屋上で二人して乱れた呼吸を整えた。
そんな二人はお互いをチラリと見る。そしてその視線が同時に交わったとき、
「っあはは!」
「ふふ!」
サラはくしゃっとした笑みで口元を隠しているけど開いた手から見える大きく開いた口から溢れる元気な笑い声、アリシアはもともと下がっていた目尻をさらに下に下げてふにゃんと小さく笑っていた。
「なんか、似たようなことあったよね?」
「ええ、入学式のときだよね?」
「あー!ほんと可笑しい!結局目立っちゃったし!」
「本当に、ね。」
顔を合わせて笑いあっている二人の顔にはもう、何一つ曇りはなかった。
「これじゃもう、目立たないなんてむりかなあ。」
「かも、ふふ。じゃあ一緒にご飯食べてくれる?」
「まだ言うか。…もう、しょうがないなあ。」
サラは苦笑を零しながら前に立っているアリシアの顔を見上げた。すらっと細い手足に、自分より少しだけ高い位置にある整いすぎている綺麗な顔。控えめに、でもコロコロ変わる表情に耳触りの優しい可憐な声。
全てが物語に出て来そうな可愛いお姫様は、もうサラの中では変えようのない特別な友達になっていた。目立ちたくないとはまだ思っている。アリシアの隣にいればこれからもその願いはきっと叶うことはないのもわかっている。
でも、それ以上にこの可愛く笑うアリシアの隣で一緒に笑いたいと思ったら、そんなことどうでもよくなって来た。
そんな彼女たちの耳に届いて来たのは、無情にも昼休憩終了の合図。
その音を聞いた二人は慌てて校舎へと続く扉へと走っていった。ご飯食べてないとか、次の準備してないとか、いろいろ二人の頭の中に掛けてきたけど。
「…今日のディナーメニュー、なんだろうね?」
「!……私はニシンが食べたいなあ。」
「アリシア、ニシン好きなの?」
「うん、サラは何が好きなの?」
「私はねー……――――――」
「それで?なんでシルヴィアは落ち込んでるのさ。」
「べ、別に落ち込んでなんかないわよ!ただアリシアが友達できたとかいって嬉しそうにしてるのを見たとか、その友達と笑いあってるのみたとか、そんことくらいよ!」
「『アリシアを取られたようで寂しい』、と言っておられます。」
「あ、やっぱり?」
「勝手に変な意訳しないでくれる!?」
アリシアと食堂で一緒に食事をして二日、アリシアはなんか上手く言ったらしく最近は楽しそうに友達と食事をしている姿が確認されている。それはあの、食堂内に作られた王族専用のサロンから確認された事実だ。
シルヴィアも毎日レイハルクたちと一緒に食事をしているわけではなく、学友と取ることもあるのだがなにせ突発的に誘ってくることの多い王太子の呼び出しは学園が始まってからも続いていた。
そしてシルヴィアの友人たちも学園入学前からその様子を知っているので最近ではレイハルクのレが出ればい「いってらしゃーい」の声が聞こえてくるほどだ。
今日も今日とてレイハルクに呼び出されて一緒に食事をとることになったシルヴィアは鏡の向こうで見えたアリシアの様子に釘付けになったところからあのような会話が始まっている。
「っそもそも!何度も言ってるけど突然呼び出さないでくれる!?」
未だ文句を言いつづけるシルヴィアと
「まあまあ、面白…可愛い婚約者には毎日会いたいっていう気持ちがあるんだからしょうがないでしょ?」
余裕綽々で直すつもりはこれっぽっちもないレイハルク。
「なっ何言って…!、…ちょっと待って面白いって隠せてないわよこのバカ王子!」
「ごめんって、ぶはっ!」
「隠せてない!!」
漫才のような、そんな二人の関係はどこに行っても変わりない。そしてその中に無理矢理巻き込まれる、
「…そういうのは二人でやれよ。俺を巻き込むな…!」
「あれ、遅かったねセシル。」
「ちょっとどういう意味よセシル!」
遅れて登場したセシルであった。
「ああ、ちょっとな。」
「そう?あ、ほら。君の婚約者があそこにいるよ?」
「ん?ああ、サラ嬢か。」
「!…知ってるの?」
「ああ、アリシアから昨日紹介されてな。」
「へー、どんな子なの?」
「ああ、…アリシアに似てるところもあるが、元気な子だよ。」
「…ってない。」
「ん?なに?」
「私はまだ紹介されてないわ!!なんで私より先にセシルなわけ!?私は!?」
「いや、そもそも昨日は会う約束してたんだよ。」
「…うん、聞いてないね。」
なんでなんでー!?といまだ騒いでいるシルヴィアの耳には何も届いていない。むしろ周りを見えていない。いまこのサロンの前を通っている生徒はそんな取り乱したシルヴィアの姿に二度見したり目を擦ったり、夢かと現実逃避したりしていることにすら、気づいていない。
今は完全に彼女の常に被っている公爵令嬢としての仮面は地面に粉々になって落とされていた。
「まあまあ、落ち着きなよ。今日は聞きたいことがあって呼び出したんだから。」
「…聞きたいこと?」
やっとシルヴィアにも多少の余裕が戻ってきた時に本題だ、というように椅子の背もたれから起き上がったレイハルクはやっとこっちを向いたシルヴィアに向かっていった。
「君、この間の話覚えてる?」
「?」
「ああ、あれか。」
「え、なに?」
「君の危惧している『なんちゃらゲーム』ってやつのことだよ。」
「『乙女ゲーム』よ。」
「シルヴィアの説明でそのゲームの流れや趣旨はわかったんだけど、どうやって回避するのかが大事だって話だよ。」
「ああ、そっか。まだ私あらすじと大まかな流れしか説明してなかったわね。いい?」
この『真実の愛を愛してる〜彼の愛を摑み取れ!〜』略して『真愛』はヒロインが入学する今年からスタートするの。つまりヒロインはアリシアの同級生ね。ヒロインは男爵家の庶子でここ最近まで庶民として暮らしていたんだけど、父親である男爵に引き取られてすぐに学園に入学するの。そんな理由から貴族としての暮らしや振る舞いに精通していないヒロインは自身の天真爛漫や真面目、真っ直ぐさでいろんな攻略対象者に恋されていく。ここは前にも話したよね?え、ヒロインは男爵令嬢なのかって…、いってなかったけ?ま、まあそういうことよ。それでまあその貴族らしくないところが攻略対象者にウケるわけね。
それで最初のイベントからもう駆け足で攻略対象者と仲良くなっていくの。それをプレーヤーが動かす『悪役令嬢』が自分や婚約者のスキルを上げて行って対抗する、的な。そんな内容よ!だからまずは貴方達はヒロインにあったら警戒することが重要よ!ヒロインは本当に攻略対象者を落とすのが上手いからね!
「それは分かったんだけど、そもそもだよ?」
「なに?」
「その『ヒロイン』がどんな子なのかわからないと警戒も何もできないんだけど。」
多分シルヴィア以外ヒロインの存在知らないよね?
「あ。」
シルヴィアさんうっかり!




