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激短です。次のお話の序章としてお楽しみください。








「やあ、遅かったね、二人とも?」

「…来るのが嫌だったんだ、察しろ。」


アリシアは今、自分に起こっている出来事に頭が追いつかないでいた。何度かセシルと共に来たことのある王宮だが、殆どが書庫へ直行していたため、今いる場所はチラッと見たことがある程度。

そして、それよりもなによりも、目の前にいる人物の一人に会うことすら初めてな状況に顔を真っ青に染め上げていた。


一方のシルヴィアも今の状況に混乱しか浮かばなかった。突然のバカ王子の思いつきによって今目の前にいるのは素直に優しくできない愛しの妹、アリシアと憎き妹のこいび…婚約者のセシルだ。何故こうなったのかシルヴィアですら分かっていない。だからセシルが自分を見て憎そうに見て来るのに、心の中では全力で首を振っている。


そう、今現在王宮のテラスにいるのは麗しい四人の人物。一人は何が楽しいのかニコニコしつつ現状を意地悪くみている王太子レイハルクと、その婚約者にして貴族の二大勢力の片翼を担っていると名高いセントフォーズ家の長女で今突然の出来事に心の中が大慌てなシルヴィア、セントフォーズ家と勢力を二分にしているギルジーク家の嫡男にして王太子の側近でレイハルクに恨みのこもった視線を投げているセシル、その婚約者で先日晴れて恋人となり久々のデートを楽しんでいたのに今では顔を真っ青にして固まっているセントフォーズ家の次女アリシアだ。


レイハルク以外の三人が内心思っていることは多少言い方は違うものの同じことを思っているだろう。



「「「(…どうしてこうなった…。)」」」



と。








「こんにちは、アリシア嬢。こうやって会うのは初めてかな?僕はレイハルク。ここの国の王太子で君のお姉さんの婚約者だ。」

「っは、はい!ご挨拶が遅くなってしまい誠に申し訳ございません…!セントフォーズ公爵が次女、アリシアと申します…!!」

「はは、そんなに堅くならなくてもいいよ?」

「っす、すみませ…!」


早速というようにレイハルクがアリシアに声をかけるも、真っ青な顔を今度は白くさせたアリシアは瞳に大粒の涙をこさえてなんとか挨拶をすませた。

隣にいるセシルは縮こまってしまっている婚約者を哀れに思い苦言を呈する。


「…おい、レイハルク…。」

「ん?はは、ごめんごめん。虐めてるつもりはないんだよ?ただ反応が面白くて。」

「……はあ、大丈夫か、アリシア?」

「あ、う…、はい……。」


しかしそんなものはなんのその、とレイハルクは取り合いもしなかったが。未だ顔には面白いと隠しもしない笑顔でアリシアをロックオンしている。

そんな三人を見ていたシルヴィアは自分の婚約者だろうと許さないというようにレイハルクをひと睨みして妹を助けようと口を開いた。


「挨拶もまともに出来ないのかしら?アリシア。」

「っも、もうしわけ…!!(真っ青)」

「…おい、」



しかし口から出たのは何故かアリシアをさらに貶めるものだったのだが。


言った直後シルヴィアの顔はアリシア並みに真っ青になるも、俯いて顔を隠してしまったアリシアにはそんなシルヴィアは見えない。シルヴィアの性格を熟知しているセシルは止めようと声をかけたが口を押さえてやってしまった、と後悔しているシルヴィアに呆れしか浮かんでこない。



「ふふ、楽しそうでなによりだね。」

「「っどこがだ!!」」

「っつ!?」



ばんっと音を立てて立ち上がった二人はいつもの様にレイハルクに突っ込むも隣にアリシアがいたことを思い出し、次の瞬間には何事もなかったかの様に座っていた。

驚いて顔をあげたアリシアは目を白黒させながら視線をあっちこっちへと移す。完全に混乱している。


そんなアリシアを不憫におもったセシルはアリシアの膝の上で握り込まれている手を自分の手で包み込んだ。その瞬間つぎは顔を赤く染めたアリシアに目尻が下がる。


たとえ前方からの真冬に吹き荒れる冷風が自分を直撃していようとも、その手を離すこともアリシアから視線を逸らすことはできなかった。全く、一ミリも前を見たくないからとかそんなことではない、決して、断じて違うのだ。



「…ごほん、…それで、なんで俺たちを呼んだんだ。」

「ああ、それはシルヴィアが」

「な!んでもないわ!!!!」


なにを言おうとしてるの!と視線を更に鋭くさせてレイハルクを睨むシルヴィア。そんな姿に慣れたもの、とニコニコした顔を隠しもしないレイハルクと、初めて見たシルヴィアの姿に驚きを隠せないアリシア。


そんなアリシアの姿に一瞬視線をやったシルヴィアだったが、優秀な頭はいつもアリシア限定で働いてはくれなく、今日もまた例外なく働かなかった。次何というかすら浮かんでこない。



そんな風にいろんな意味で固まっている姉妹にレイハルクは笑みを深め、セシルは溜息を溢す。こんなに似ているのに、すれ違いすぎている、と。




するとそこに一人の王宮に仕える使用人が慌てた様に駆け寄ってくる。その事に気がついたのは固まっていない二人だけだったが、そもそも用事があるのはその二人だったらしくスムーズに伝言が伝わっていく。

そしてその伝言を聴き終わった二人は同時に顔を見合わせた。


「…おや、」

「……はあ、どうするんだ…。」


二人の視線の先には未だ固まっている姉妹の姿。レイハルクは少し困ったという様に口角はそのままに眉を下げる。セシルはこんな展開は誰の得にもならないと眉間にしわを寄せる。



「シルヴィア」「アリシア」


「「っはい!」」


同時に呼ばれた姉妹は、これまた同時に呼ばれた方へと視線を向ける。そしてその思わしくない表情に自然と嫌に胸が音を立てる。



「これから少し席を外す事になったんだ。」

「…少し、二人でいてくれ……。」


「「っつ!?」」



言われた瞬間バッとお互いを見て再び固まった姉妹。

この展開は誰もが予想をしていなかった。そう、たとえこの現状を作った張本人であるレイハルクであったとしても、だ。



嵐の予感が、王宮の庭園で感じられた…――――。
















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