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深刻そうなシルヴィアをみて、ふと気を緩めたレイハルク。それに気づいたシルヴィアはそっと視線をそちらに向けた。そこには穏やかな微笑みを浮かべたレイハルクがいて…。
「まあ、大丈夫だよ。」
「…え、」
「原作がどうこうは僕にはあんまりわからないけど、アリシア嬢は「君の妹」だろう?大丈夫だよ。」
ね?と首を傾げてみせたレイハルクは、どこまでも私を案じていた。気にしなくていい。大丈夫だよ。といつもテンパってしまって周りが見えなくなる私をそっと支えて前を向かせてくれる。
「…そうね。」
ふと外を見るとだんだん暗くなり始めていた。入学してすぐに倒れるなんて、明日から大変だなあ、何たって明日は実力測定日でその結果によって選択授業が変わってくるんだから…――?
あれ、なにか大切なことをもう一つある気がする…。
「レイ、明日って実力測定日だったわよね…?」
「え?うん、そうだったけど…、ああ、そうだ。セシルの技能検定師は将軍だそうだよ?親子対決だね。」
「……親子対決…?」
「そうだけど…、今のセシルが何処まで行くかだよねえ。これで折れてもらったら困るけど。」
「…そ、」
「そ?」
「それだーーーーー!!!!!!」
所変わってこちらはセントフォーズ公爵家のお屋敷にて、次女のアリシアは昨日届いた手紙を何度も開いては閉じて、開いては閉じてを繰り返していた。大切に大切に読まれているだろうその手紙は端が少しよれてはいるものの、綺麗なままアリシアの手の中に存在していた。
「アリシア様、また読まれているのですか?」
「だ、だめかしら…?お姉さまからなんて初めてだし…そ、それに…」
「ふふ、私はアリシア様がお幸せそうで嬉しいです!ね、兄さん?」
「はい、もちろん。よかったですね?」
「…うん、嬉しいわ…」
お姉さまは先日学園にご入学なされた。それと同時に屋敷から寮へとお住まいを移られたため贈り物を直接お渡しできなかった。だからお姉様の従者であるランドに託したんだけど…。
その時のランドは何故か目頭を押さえて受け取ってくれた。そして必ず手紙をお姉さまから頂いてくると言っていたけど、お忙しいかもしれないから大丈夫よ、といった私に、今度は何故か私の隣にいたソレルの背中を叩いていた。
ほ、本当にランドはどうかしたのかしら…?
ソレルはその時ランドを見て何か話していて、後で聞いても教えてくれなかった。でも待っていましょうね、絶対いただけますよ!、と笑ってくれたからもしかしたら本当に手紙を頂けるんじゃないかってそわそわしていた頃。
ランドから預かったといって渡してくれた手紙は私の家の家紋が透けて見れるように作られた薄紅色のものだった。急いで開いたそれにはこう書いていた。
『アリシアへ
薄紅色の万年筆、確かに受け取ったわ。私たちの髪色に合わせたものかしら?
とても綺麗だからこれからはこちらの方を使うわ。
あと、この手紙もこれで書かせてもらうけど文句なんてないわよね?
最近暖かくなったとはいえ薄着なんかでいたらまた寝込むようになるんだから、そんな馬鹿な事はしないことね。今度帰った時まで倒れるんじゃないわよ。
公爵家の令嬢として、体力も必要なことをわすれないように。
ではまた。
シルヴィア
…ありがとう。』
これを受け取っただけでも嬉しくて胸が張り裂けそうだったけれど、最後まで読んだときはもう流れる涙を止めることなんてできなかった。
この手紙を横から覗き込んできたミリィにソレルは御行儀悪いと叱っていたけど、気になったのだろう。私にハンカチをくれたのち、その手紙を二人で読んでいた。
読んでいる最初の方は何故かため息が何度も聞こえてきたけど、最後まで読んだときは私同様とても喜んでくれた。
よかったですね、と笑う二人は当事者である私以上に嬉しそうだった。
「…これ多分何回も書き直したよね、シルヴィア様。」
「まあ、そうだろうな…、ランドさんがこれを持ってきたとき目の下に隈作っていたよ。…とても満足そうだったけど。」
「ランドさんはシルヴィア様に甘いわ!最後は良かったけど最初なんて…!」
「落ち着けって、あれが多分限界だろ…。とりあえず言いたいこと言っていいか?」
「待って兄さん、多分私も同じこと言いたいわ。」
「「アリシア様マジで天使」」
「喜んでるアリシア様かわいい!!」
「同感だ。はあ、シルヴィア様があの一言言ってくれるだけでこの問題解決するんだけどなあ。」
「難しいだろうねえ。」
「二人とも、どうしたの?」
「いえ!なんでもないですよ、アリシア様!」
「アリシア様、紅茶なんていかがですか?」
「え?う、うん…?貰うわ…?」
何かこそこそと話し込んでいる二人に声をかけたらぴゅうっとこちらにきていつも通りニコニコとしていた。
なんだったのかな、って疑問には思ったけどミリィが入れてくれた紅茶を前にそれは吹き飛ぶ。
「そういえば、アリシア様。明後日セシル様のお屋敷へ行く日ですよね?お洋服はいかがなさいますか?」
「え、あ…で、出来たらでいいんだけど…藍色のドレスとかどうかなって…。」
「!いえ、それにいたしましょう!一緒に決めさせていただけませんか?」
「い、いいの?な、なら…。」
「「(セシル様…!!!!)」」
「あ、二人の意見もちゃんと聞かせてね…?」
「「っもちろんです、アリシア様!」」
どこかのお屋敷の麗しき一人のご令嬢に使えるものたちは、嬉しいやら寂しいやら、悔しいやら…。色々な感情を胸に秘めて今日も愛しい主人に仕えている。
ソレルとミリアリアは知ってます、シルヴィアのあの事。後ろ屋敷中の使用人がしってます。




