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「ふうん、そういうこと。」
「あ、あの、レイハルク…様?」
「ん?様呼びなんて久しぶりだね?」
「ひっ!い、いえ…」
ドウシテコウナッタ…(2回目)
あの時のレイハルクの瞳は本当に怖かった…(ガクブル)と後にシルヴィアが語る程、その時の瞳は色々な意味でヤバかったレイハルクは今、シルヴィアの話を聞いて考え込んでいる。
シルヴィア・ラルク=セントフォーズ。この名前が今世の私の名前だ。今までシルヴィアとして生きている中で多少他の人や物との違和感は感じていたけれど、今日あの夢を見るまで気のせいだと思って生きてきていた。わたしの前世の名前は‘高瀬美希’で16歳という若さで生涯を終えた。仲のいい両親に歳の近い優しい兄、そして10歳近く離れた無邪気な妹の五人家族で過ごした時間はかけがえのないもので、わたしは喧嘩こそするもののいつも幸せに満ち溢れていた。
しかし家族で家に帰っている途中、向かい車線から暴走車が突っ込んできて敢え無く人生を終えた。その時に咄嗟に妹だけは、と思って上から被さるように守って、その上から兄も同じようにしてくれたことは覚えてる。最後に見たのは妹の大きく開かれた瞳に映った、突っ込んでくるトラックだった。
あれからどうなったのかな。少なくとも記憶のないわたしはその頃に命を終えてしまったんだろうけど、妹はまだ幼なかったんだ。せめて妹だけは生き延びていてほしい。あの無邪気で少し我儘で、私たち家族が大好きだったあの子の事だ、一人で生き残ったとしても年齢的にも精神的にも酷なことかも知れないけれど。
それでも生き残ってもっと世界を見てほしいと願うのは、忙しかった両親に代わって兄と切磋琢磨して育てた第二の母親として思うことは許されると思いたい。…まあ、第二の母親なんて、言い過ぎかも知れないけれど。
そんな家族だった‘高瀬美希’としてのわたしは、自分で言うのもなんだけど今の私とほんっとうにそっくりだ。喋り方とか細かくいえば違う所はいっぱいあるんだけど、容姿や意地っ張りで面倒臭いこの性格はあの頃のまま。よくお兄ちゃんに呆れられてたっけ。あと付け加えるのなら、それはわたしが生粋のOTAKU☆だった事。もう両親やお兄ちゃん、果てには親友にまで呆れられるほどだった。そしてそのハマっていたものは「乙女ゲーム」なるものだ。その中でも「真実の愛を愛してる〜彼の愛を摑み取れ!〜」なんていうちょっと題名が乙女ゲームっぽくないものなんだけど。これは本当に面白かったのよ!!あの世界では一部のマニアの中ではものすっごく話題になったものなんだから!!
ごほんっ…ま、まあ。その内容は従来の乙女ゲームには程遠いもので、巷では「婚約者育成ゲーム(笑)」とか「主人公vsヒロイン(笑)」とか言われていたみたいだけど…!そう、この略して「真愛」は主人公が俗に言う悪役令嬢なのだ。主人公は元々定められた婚約者に恋をしていてその婚約者をポッと出のヒロインに奪われない様に好感度や‘婚約者の’スキルを上げる事で回避すると言うゲームだ。ちょっとそこ!!はあ?みたいな顔しないでくれる!?本当に神ゲーだったんだから!
と、とにかく「真愛」は本当に乙女ゲームの世界に新しい風を巻き起こした革命的乙女ゲームだったの。元々某小説サイトで悪役令嬢モノの小説が大流行したからなんだけど、そのお陰で今まで「乙女ゲームって干物女子がやるものでしょ(笑)」なんて言われてた人達にも人気に火がついて多くの作家が悪役令嬢モノを書く様になったの。そんな中生まれたのが「真愛」よ!プレーヤーは数いる悪役令嬢の中から一人選んでスタートし、婚約者と結ばれるまで地道な努力をして勝ち取るのよ!ストーリーも人気作家さんだったし声優も超人気声優だったの。それにオープニング映像が美しかったのなんの!!主人公が「悪役令嬢」なんだから結構おどろおどろしいモノなんだけど、最初は普通の悪役令嬢としての高圧的だったり陰湿な表情をする主人公だけど、婚約者がヒロインに惹かれるところを見てどの令嬢もその子にあった色んな泣き方をするの!!!そのビジュアルが美しいの!!凝っていて主人公を選ぶごとに内容も変わるオープニング映像だから掴みはバッチリ!
そんなこんなで創作者側が物凄く力を入れて作られたモノだったってことはたしかね。それでわたしがハマった理由は勿論神ゲーだったからなんだけど、加えてメインのシルヴィアの家族家系が私たち家族ソックリだったのよ!勿論アニメ風に加工はされてるんだけど、元々の美形家族だった私たちのいいところをそのまま絵にした感じでそれはもうよくって…え?自分のこと美形って言うなって?しょうがないでしょう、事実なんだから!お兄ちゃんなんか告白すんごい数されててストーカーだってあったんだから!お父さんとお母さんも既婚者なのに言い寄られてるところ見たことあるし、わ、わたしだってそれなりに…御免なさい嘘です!!見た目はいいのにOTAKUだからなあ…ってよく言われてましたよ!!
そ、それに妹はまだ幼なかったけど何度も変なおっさんおばさんに声掛けられてたんだよ?即抹殺☆したけどね!
それがきっかけでハマって、色々親友やお兄ちゃんを巻き込んでなんとかクリアしたゲームだったの。何度もやり直したけどね!
で、ここからが本題で、シルヴィアはメインキャラだったのよ。だって公爵家の長女で婚約者はこの国の王太子よ!?そりゃあメインキャラになるわよ。でもメインなんだけど、この王太子のクリアがほんっとうに難しくて何度ヒロインに取られたことか…!!!簡単なのは他にいたんだけど、それに差がありすぎたからねえ。人気キャラは五人いた攻略対象の中に二人しかいなかったわ。
で、その超難関攻略対象が、目の前にいるレイハルク王太子殿下なんだけど…、うわあ!!!目が、目が怖いわよ!?まだ成人してないのにどうしてそんな凶悪な顔に…!
「で?話はそれで終わりなの?」
「ハイ。ソウデス。」
なんでカタコト?と笑いながら言ってますけど、目が笑ってませんよ。こわっ!!
「シルヴィアはその「真愛」とか言うやつのプレーヤーで、僕がその攻略対象?だったわけだ。」
「オッシャルトオリデス。」
「その中の僕は王族としてダメだね。婚約者を裏切って他の者と結婚するなんて。婚約の意味すら分かっていないガキだ。まあ、僕が超難関って言ってたけど、理由なんてどうせ僕の性格が最悪で頭も悪かったからだろう?僕が王太子に向いてないと言われている様だよ。」
「そ、そんなことないわ!!!!!!!」
「た、確かに性格は良いとは言えないけど…でも、『貴方』は最低なんかじゃない!『貴方』しかこの国の王になる人はいないわ!!貴方の言葉だったとしても、そんなこという人は誰だって許さないわ!!『私のレイ』を馬鹿にしないで!」
はあ、はあ、と呼吸が乱れる。大声なんて出すことはあるけど、こんなに加減を忘れて叫んだことなんてなかった。公爵家の娘としてありえない振る舞いだったとしても、さっきの言葉は絶対にゆるせない…――――
「ふ、はははっ!!」
「っえ、な…」
「ごめんごめん…ふふふ、うん。そうだね。ごめ…ははっ!」
「止まってないわ!?」
「ふふ…、うん。…ごめんね。」
「え…?」
「やっぱり君はシルヴィアだ。…たとえ前世の記憶を持っていたとしても、やっぱり僕の知るシルヴィアだ。……僕のヴィーだ。」
「なっ…!!」
目にまだ笑いすぎたためにできた涙を拭いながら、それでもその表情は今まで見たことのない様な穏やかで綺麗で、…熱をもっていて…。
そんな瞳で見られたことなんてなかった。
「…信じてくれるの…?」
「もちろん。君が僕に嘘をつくことなんてないからね。下手だし。」
「ちょっと!?」
「ふふ、それに、君の言葉は信じるよ。ね?愛しの婚約者殿?」
「ふ、ふん…!」
そこには真っ赤に顔を染めたシルヴィアがレイハルクから顔をそむけていて。レイハルクはそんなシルヴィアを愛おしそうに見つめるのだった。
レイハルクとシルヴィアの馴れ初めとかいちゃ話書いてみたい気もします。レイハ…レイシル(命名)の話って需要ありますかね?




