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「お待たせいたしました。」
「いや、僕たちもさっき来たところだよ。ねえ、セシル?」
「ああ」
彼らの言う通り本当に今来たところなのだろう、丁度シルヴィアが席に着いたと同時に給仕のものがそれぞれにお冷やを出して来た。その人に今日の食事内容を聞いた後、希望を伝えて再び三人の会話が始まる。
やはりと言うか、レイハルクとセシルが集まっていただけで注目されていた視線が、シルヴィアが加わることで2倍ほどに膨れ上がった。三人ともそのことに気づいてはいるもののもはや慣れたと言う様に気にしてはいなかった。
そもそも学園が始まって1日と経ってはいないが王宮でお茶会を開く三人だ。視線を集めるというものはもはや日常茶判事な事なのだ。
「とうとう学園生活が始まったね。」
「それ、さっきも言ってなかったかしら?」
「ふふ、改めて実感したんだよ。こうして三人でこれから長い時間を共にするって今までなかっただろう?」
「まあ、学園は全寮制だからな。」
「そうそう。シルヴィア、ホームシックになって泣かないでね?」
「誰がホームシックになるというの!馬鹿にしないでくれる!?」
周りが入学の式典と違い学生しかいないからか、三人の顔はまだ自然とは言い切れないけれど喜怒哀楽を多少出せるまでに落ち着いていた。
シルヴィアは多少目を鋭くさせてレイハルクを睨む。そんなもの慣れたものだという様に微笑んで流すレイハルク。そんな二人を呆れた様に見るセシルと、いつもの三人がそこにはいた。
周りの者たちは先ほどの完璧なまでに美しかった三人とのギャップに令嬢はセシルやレイハルクに頬を赤らめて目をハートにして見ている。一方令息たちは顔をコロコロ変えるシルヴィアのその幼さに普段の清廉とした美しさとのギャップに目の中に熱を宿して見ていた。
そんなこんなしている間に三人の食事が並べれられていく。
食堂には大きく二つに分けられており、片方は軽食やお茶を楽しむためのカフェスタイル。もう片方は現在三人が利用している食事をメインとする場所だ。
ここには様々な机が用意されており、二人がけの様々な形をしたものや大人数で利用するための大きな机がある。その中にも異色を放っているのは、今三人が利用しているものだ。それはたとえこの学園が身分関係なく平等だと謳っていようとも、さすがに王族には王族専用のスペースが設けられている。
そのスペースは食堂のなかにあるカフェスペースと食事スペースの中間部分に作られていて、その前面はガラス張りとなっている為中の様子は全て見えている。それなのにその場所だけ異空間かの様に思わせるのはただ単にガラス張りだからではない。彫刻品やその中に置かれている全てのものがめをひくようなものばかりだからだ。王族が利用するためこの施設の支援金を出したのはもちろん王族だ。そしてそれに加え代々の婚約者の貴族も同じく支援金をだしている。
机や椅子はもちろん花瓶すらも一目で最高級品だとわかるそれらは、まさしく‘異空間’である。
「あれ、シルヴィアは今回は魚料理にしたのかい?」
あまり好んではいなかっただろう?と問うレイハルクはいつもの微笑みとは別に瞳には少しの心配の色を宿している。レイハルクとセシルの前には肉中心のフレンチでさすが育ち盛りの青年と言わざるをえない。たとえ二人ともが他の男性たちと比べて華奢に見えようとも、だ。
「…ま、まあね。ちょっとニシンだって言われたから、その…」
「何故照れる。ん?そう言えば…」
「うん?…あ、ああそういうことかい?」
セシルがふと何かに気づいた様に眉をピクリとさせたのをみたレイハルクも、一瞬考えを巡らせたのち思い当たったのか今度はニヤニヤと婚約者を見ている。
それに居心地が悪くなったシルヴィアは美しいその顔を少しだけ顰めて視線を逸らした。
「…なによ。」
「…お前は本当に面倒臭いな。」
「な!なんで突然暴言吐かれなくちゃっ!!」
「ふふ、そこがヴィーのおもし…、可愛いところだもんね?」
「隠せてないわ!」
「妹さんが魚料理、その中でもニシンが好きだったもんね?」
「べ、別に!!そんなこと、!」
まだセシルとアリシアが婚約していない、幼い三人が王宮で遊んでいる時。あの頃よりもアリシアに対する態度が悪く、しかし言い方は今よりも可愛かった頃。口を開けばアリシアが、アリシアが、と聞いてもいない情報を聞かされていた。しかも、話を聞いていなければ理不尽に怒られもした。そのおかげかレイハルクも、もちろんセシルも出会う前からアリシアの情報を多く知っていたが。
今度は真っ赤に顔を染めて抗議の言葉を並べるシルヴィアに、そこにいた三人の従者からは温かい眼差しを(一人呆れたと隠さないものを浮かべてはいるが)、セシルからは面倒だなと瞳には呆れを浮かべられ、レイハルクに至っては通常の微笑みの上に堪え切れない笑いを乗せるという器用なことをしている。
「ちょっと!その顔は止めなさいよ!!!!」
シルヴィアの叫びは美しいガラス張りの壁という名の防音壁に阻まれて外に聞こえることはなかったのは、シルヴィアの体制を守るのには唯一の救いだったのかもしれない。
所変わってここはシルヴィアの私室。先ほどの騒動?を無理やり納め早々と食事を済ませて自室に戻ったシルヴィアはいま机の前に座って見えぬ強靭な敵と向かい合っている。
その背後では紅茶を準備してささっとシルヴィアの横に置いたことで一時的に仕事がなくなりハラハラと主人の心配をしているサリィ、今日学園から配られた従者用の書類を片手に呆れを乗せたランドがいる。ここ最近ランドはシルヴィアに呆れか馬鹿にするかしかしていない気がするのはいいことではない、絶対に。
「…一向に手が進んでいませんが、シルヴィア様?」
「ちょ、ちょっと待ちなさい…。まだ何を書こうか考えているのよ。」
「そういってもう結構経ちましたが…。」
「シ、シルヴィア様…大丈夫ですか?」
「いったい入学祝いのお礼を文に認めるだけでどれだけ時間をかけるつもりですか?それも妹様への手紙に。」
「う、煩いわよランド。」
「あーあー、また時間が過ぎて行きますって。早く書いてくださいよ。今日中に出せなくなるじゃないですか。」
「っの!従者なのに偉そうな…!も、もうこれでいいわよ!」
えーと、なになに?と渡された手紙を見るランドとその手元を背伸びをして覗き込むサリィ。それにさりげなく持つ手を下げて見やすくしているのだからランドはもしかしたら紳士なんじゃないか、と疑問に思ってしまうのは致し方ないはずだ。
「…シルヴィア様。」
「な、なによ。」
「…シルヴィア様、これはちょっと……」
「サリィまで!?」
「これは幾ら何でもダメですよ。『受け取ったわ。まあ貴女にしては考えたわね。』って…。もっと書くことありましたよね?あれだけ悩んで二言って…。」
「…しかも、この文では有り難みの一つ感じません…。」
「っぐ!」
いつもは自身を案じてくれる優しいサリィですら庇えないほどのこじれ具合に二人で大きなため息を吐いた。そしてランドはビリッと手紙を真っ二つに破き、サリィは新しい紙を出すために引き出しを開けた。
「っちょ、幾ら何でも破らなくてもよくない!?」
「何いってんですか。こんなもの出せません。寧ろ私たちがださせませんよ。」
「はい、シルヴィア様。こちらに書き直しましょう?ね、私たちの主人ですもの。もっと心ある手紙くらい簡単ですよね?」
「「シルヴィア様?」」
「は、はい…。」
女子寮のある一室では夜な夜な明かりが灯っており、其処からは度々女性の悲痛な叫びが聞こえたとかいないとか…―――――。
三人って結局仲良いんですよ。可愛くて好きです。幼い頃の三人の小噺できたので投稿したいんですが本編に関係ないので自己満足で終わらせようかなって最近思ってます。活動報告に載せてもいいのでしょうか。悩みます。




