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これから2、3日に一回の更新に移行していきます。
秋まで又は夏中の第2章完結を目指しますのでどうかよろしくお願いします^ ^
季節は段々暖かくなり、太陽の顔を出している時間が少しずつ伸びてきた今日。空は青々とした雲一つ見えない晴天。こんな良き日に王華学園の入学式が行われた。今年度は数年ぶりかの王族の、しかも王太子も式に参列していることもあり例年以上の華やかさであった。
レイハルク・ジル・ド=グランドスワレイ。その名はもはや近隣諸国にまで知れ渡っているほどの天才的な才を持っておられる。黄金に輝くサラッとした髪にエメラルドに輝く瞳は童話に出てくる王子そのもの。鍛え抜かれたその体は程よくその長い手足に見合うものをもっている。
そして、王太子同様に視線を集めている人物が二人。一人はレイハルク王太子殿下の側近にして現軍将で有るギルジーク公爵の嫡男、セシル・フォレスト=ギルジーク。藍色の短く切られた髪は太陽によって鮮やかに照らされ、白銀の涼やかな瞳は透き通っている。万人が振り返るであろうその彫刻のように美しい顔立ちに、彼が歩みを進めるたびに令嬢達が振り返り頬を染めている。
そしてもう一人のお方はレイハルク王太子殿下の婚約者にして現宰相であるセントフォーズ公爵のご令嬢、シルヴィア・ラルク=セントフォーズ。薄紅色の腰までまっすぐ伸びた透き通るような長い髪に黄金に輝く意志の強そうな瞳。氷世界の女王のようにすらりと伸びた背中とすでに色香を感じさせる女性的な体型は、性別問わず思わず振り返させる。そんな彼女は王都に限らず、グランドスワレイ王国全域で王太子殿下との恋物語が語られており、若い女性たちに尊敬と憧れを抱かれている。
そんな御三方は式典が終われば同じ場所に集まり談笑されている。レイハルク殿下は穏やかな微笑みで見えるはずのない光を体に纏わせて、セシル公爵子息は表情こそ変わらないが身に纏う雰囲気が何処か穏やかで。シルヴィア公爵令嬢は少しだけキツく感じさせる瞳を和らげ穏やかに、美しく微笑んでいる。
そんな彼らは一つの絵画のように神々しかった。幼い頃からのご友人でもある彼らはお互いの入学を祝いあっているのであろう…―――――。
と、外側からはそう感じさせるが話の内容はなんともまあ残念ではあるが。
「シルヴィア寝坊しなくてよかったね?」
「ふふ、ご冗談を。」
「…ここで言い合いはやめておいてくれよ、二人とも…。」
擬態がうまいのなんの、と思わないでもない。特にシルヴィアの擬態は本当に別人のようだ。いつもの忙しい彼女は一体なんだったのか、と思わされる。使用人であるランドに言わせれば『もう一つの人格』らしい。全くその通りだと言わざるをおえない。
「今日は一緒に食事をしようか?」
「そうですわね、ぜひご一緒させてくださいませ。」
「…その喋り方は違和感しか感じないな。」
「聞こえてるわよ、セシル?」
小声でボソリと言った声に瞬時に反応したシルヴィアは擬態した笑顔のまま声色だけいつも通りに戻してそんなことを言う。それにセシルは眉をピクリと動かせたのち、その口を閉じた。シルヴィアの目の色が怪しく光ったらしい。
そんな二人を変わらない笑顔でニコニコ見ているレイハルクも目の奥で楽しそうにしている。どれだけ外面を完璧にしようも、結局はいつもの三人であった。
勿論自分たち以外の人間がいれば三人ともそれすらも感じさせないだろうが。
これが他にバレるような事があれれば良くて二度見、最悪そのものは幻惑を見たと感じる事だろう。
そんなこんなで式典が終わり各々が寮にある自室へと戻って行った。シルヴィアも同じくして女子寮の自分に振り分けられた部屋へと歩みを進めている。
王華学園の寮は男子寮、女子寮そして、職員寮の三つある。また生徒が利用する寮内の部屋は全て同じ造りをしている。これは学園の方針で、学園内において身分差などは生じないと言うものだ。教師も生徒も身分差別なく平等に生活を送る義務がありはするものの、全く身分差がないというわけではない。王華学園は『社交界の縮小版』として子息令嬢が礼儀やマナーを学んだり、繋がりを作ったりする場である。そのためある程度の階級差を持って接することが要求される。
しかしこれは生徒間においてのみ執行されるものであり、教師相手には適応されない。たとえ教師が誰よりも階級が低かろうが、教師としてこの場にいる以上礼儀と礼節を持って過ごす。
この様に細かい縛りがあれど、簡単に言えば「こんな事くらいサラッとこなしてこそ貴族だ」と言うのが世間共通の認識であるため、まあ頑張ってくれとしか言えない。
シルヴィアが一歩一歩進むごとに女子寮内にいる令嬢たちの視線を集めている。これはまだ社交界デビューをしていないシルヴィアにとって初めての経験だが、全く気後れする事なく堂々と歩いているのは流石と言えよう。
そしてその視線たちはシルヴィアが自室へ入り扉を閉めるまで続いていた。パタン、と小さな音を立ててしまった扉に中にいた者たちが視線を寄越す。それはこの学園にいっしょにくることになったランドとサリィだ。
「おかえりなさいませ、シルヴィア様。如何でしたか?」
「ただいま。…特に何もないけど、取り敢えず視線が鬱陶しかったわ…。」
そう言いながら部屋の中央にあるソファーに座り溜息をついたシルヴィアは気を張っていたものが緩んだためか、先程までとは違う、何処か緩みを感じるものだ。
サリィがサッと出した紅茶を飲んでソファーい全身の力を全て預ける。やはりシルヴィアでも応えたのだろう。
「お疲れのところもうしわけありませんが、お食事の時間が迫っていますよ。」
「もう?早いわね…はあ。」
式典用の制服を脱ぎ、平常時用の制服を身に纏う。式典用の制服は白に統一されて最小限の露出を抑えられた作りのワンピースドレスだったが、普段のものは其れを簡略化されたものだった。
白の膝下ギリギリまでの飛騨が二つほどのハイウエストなスカート、白ベースで金色のボタンや折り返し部分が紺色で作られた上着など、体のラインをうまく隠しつつも美しいラインを作っているものだ。
「では行ってくるわね、サリィ」
「行ってらっしゃいませ、シルヴィア様、ランドさん。」
従者であるランドは寮内をいどうする時や学園の敷地内を移動する時のみ連れて歩くことが許されている。それもこれも護衛のためであるが、そもそも学園内は騎士団の強固な守りで構成されているため殆ど必要はない。金銭的に護衛や従者を持たない子息令嬢たちは、連れていないものもいる。
「やっと学園生活が始まりましたね、シルヴィア様。」
「ええ、はやいものだわ。」
「ちゃんと擬態できてましたか?」
「擬態って言わないでくれる?…はあ、当然上手くいったわよ。」
「シルヴィア様の擬態はもう人格から違いますもんね。」
「っだから…、もういいわ…。」
「溜息ばかりついてると老けますよ。」
「老けるの!?幸せが逃げるんじゃなくて!?というか、つかせてるのはあんたのせいよ!!」
「ほら、シルヴィア様擬態が解けてますよ。」
「ほんっとうに私をおちょくるのがうまいわね?ランド…。」
「ありがとうございます。」
「褒めてないわ。」
やはりこの二人は学園にいようと変わらないのか、顔こそ何時もの様にはいかずとも会話のテンポやトーンはいつも通りだ。
「そう言えば…、アリシア様から贈り物が届いていますよ。」
「!…なに?」
「開けているわけないでしょう。お食事後にご確認ください。」
「それもそうね…。」
「しかしまあ、アリシア様は健気ですね。会えば嫌味しか言ってこない姉に入学されたからと贈り物をされるなんて。涙が出てきますよ。」
「わ、わかってるわよ…、部屋へ帰ったらレターセットの用意をしておいて。」
「わかりました。…ちゃんと正直に書いてくださいよ。」
「手紙くらいちゃんと書けるわよ!」
そう言い切ったシルヴィアを見るランドの顔はどこからどう見ても疑いの色を持っている。
その顔で数秒見られたシルヴィアは徐々に視線を反らせていき、そしてか細い声で一言。
「………………多分。」
「…はあ。」
そんなこんな話している間に食堂についた。この食堂は渡り廊下で男子寮と女子寮が繋がっているちょうど中央に位置している。そのため共有スペースとしても使われているため食堂はいろんな人物たちで賑わっていた。
シルヴィアたちは約束通り、もう先につきシルヴィアの到着を待っていたレイハルクたちの元へと進んでいった。
少し短いですがここで切らせていただきました。




