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六角の花   作者: フミ
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よく分かんねえから俺は寝る

色で言えば(赤) そして(動)さらに(熱)の側に振れた振り子が、

(青)、(静)、(冷)、に向かい振れ始めた。

それ程にスネエモンの影響力はあった。

ニザエモン達 現在の大旦那達が今のサカイの繁栄を築いたとするなら、

スネエモンはその基礎を作った人物である。

フナオカヤマ合戦により一時頓挫した移民計画は彼によるものだった。

商(あきな)いには手を出さず、生産の側に身を置き、

しかし優れた先見の明により事態を打開する画期的な方針を打ち出しサカイを導いて来た人物である。


「商いなどは蛇道、民を養うは天道と水と大地であったな。」


ニザエモンにとって振れ始めた振り子など問題では無かった。

一見 見当違いな物言いではあったが、

物理的な戦いでは無い戦いを共に歩んで来た戦友の座右の銘を持ち出し、お互いの本質での対峙をもちかけたのだった。

それがニザエモンの今回の本来の目的であった。


「ミナヅネ様は死んだのだ、いつ迄夢を見ておるニザエモン!

勝てる筈など無かろう!

サカイの民の命をなんと心得ているか!」


「勝てると申したであろう。」


「何を根拠に妄言を吐くか。

なるほど名だたる猛者を揃えたようだが、ナリカワに勝つ程の兵は揃ったのか!

金にものを言わせ集めたとて国を治めておる訳で無いのだ、せいぜい三千がやっとであろう!

七万と三千 勝敗は戦わずして目に見えておるわ!」


「彼我(ひが)の戦力を知りたいのだな。

それについては 頼みましたよフミさん。」


フミは少しも慌てる事無く立ち上がり、

ずっと手に持っていたスミトモの着流しを座っていた椅子に置いて スネエモンの目を真っ直ぐに見た。


「はい、お答えします!

先ずは我が方の兵力で御座います。

先ずはシジマ家の家臣の皆様が二百二十二名。

ヤツガサト衆の皆様が六十八名。

スミトモ様の子分様が五十名、

更に後ほどいざ開戦となった折には、普段 漁師や用心棒で生計を立てていらっしゃる三百九十七名が駆け付けて下さる手筈となっております。

ジョスイ様率いるサカイ自警団が千五百四十六名。

アキヨリ様の要請に応えて下さった侠客(きょうかく) 国人衆の皆様が合わせて八百十八。

最後にここにいらっしゃいます国士無双の方々八名。

合計三千百九名が現在の我が方の兵力で御座います!

続いて敵方の推定兵力で御座います。

ナリカワ家の直轄地であるオワリ国 ミノ国オウミ国の石高と人口を、

正確な記録のあるミナヅネ様が治められた頃の記録に照らし合わせ、

あたくしが知る限りの作付けの豊凶、戦による死亡を加減いたしますれば 五万八千とんで七十二名で御座います。

不当に占領しているアキ国の水軍六千百二十一名と

イスパニア軍一万二千二百七十名の参戦も考慮しなければなりません。

イスパニア軍の兵力はヘイクロウ様の報告を元に算出いたしました。

しかし案ずる事は御座いません。

我等が誇る四千三百九十四丁の鉄砲が絶え間無く火を吹いたなら一時と三分の二で壊滅いたしまする。

お分かり頂けましたでしょうか?」


キリュウは眠りに落ちた。

アキヨリは音曲を聞くが如く心地良く酔いしれた。

スネエモンは言葉を失い当然の問いさえ口に出せずにいた。

フミはその当然の問いへの答えを用意していたが、いつになっても問われ無いので勝手に答える事にした。


「あたくしがどうして最後の一桁までお答えしたか疑問に感じられましたでしょうか?

全てあたくしの算術により導き出した数だからで御座います。

数を推定するにあたっても、あたくしミアケ フミは(約)だとか(おおよそ)といった言葉は用いませぬ!」


店内の一同はフミに圧倒され、(赤)だとか(熱)だとかの振り子は、横回転を始め遂には重りを吊るす紐が切れ吹っ飛んだ。


パチパチパチパチ


一人拍手する者がいた。

かなりゆっくりな動作で五回に一回は左右の手はすれ違い音が鳴らない。

つまりなかりの高齢者である。


「一所懸命じゃあ………う……お…一所懸命じゃあ!」


公家の出自を自称する オヅキ コレノリ、要するにセンロク和尚は上機嫌であった。

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