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六角の花   作者: フミ
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あなたは武士キラキラ武士

「たった今総大将を仰せつかった シジマ アキヨリで御座る!

無官 無役の只の武士(もののふ)で御座ったところ、皆様方の御蔭を持ちまして目出度く職にありついた次第で御座る!」


「身も蓋もない!私の負けだ、悪かった!

皆様方このニザエモンの悪ふざけで御座いました 御勘弁を!」


やけっぱちのアキヨリにニザエモンは素直に負けを認めた。


「いや、一度 拝任(はいにん)したからには拙者が総大将で御座る!

年長者であり安房守(あわのかみ)の官職にある格上のジョスイを差し置いて総大将を名乗るはいささか気が引けるが、既に拙者には覚悟が御座る!」


「そうだ!おめえが総大将だ!」


ジョスイは嬉しかった、なぜだか嬉しくてたまらなかった。

雄々しくアキヨリに突き付けた人差し指が震えていた。


「うおっうああああああ!」


フジオカは号泣しダンザは真上を向いて堪えた。

他の者も力のこもった視線をアキヨリに向けた。

それぞれに視線で応えたアキヨリは続けた。


「皆様方、拙者の覚悟を聞いて頂く前に、話の締めくくりとしてとって置いたのであろう、

義父ニザエモンが口にしなかった御要請をいたす!

以前 拙者が皆様方に打ち明け 御願い致した事覚えておいでだろうか。

サカイの自由と誇りを奪わんとする者がある、その者が襲来した折には拙者に力を貸して欲しいと!」


「なんと既にアキヨリにより事は進んでおったか!」


目を見張るニザエモンだが 口には出さずただ見守る。


「その ある者がナリカワとは びっくりしたわ。」


外町の長の一人カギノスケはそう言ったが、深刻な表情では無い。

他の村長達も思いの外 苦く渋い表情の者は少ない。


「あの時はナリカワ家と明かせず申し訳御座らん。

改めて御願い致す!

このアキヨリの一命を賭し必ずナリカワ ヒデミツを打ち破ってご覧に入れる!

それには皆様方のお力添えがなんとしても必要で御座る。

このアキヨリに御協力下され!

御願い致す!御願い致す!」


「うおおおおおおおお!」


村長達からどよめきに似た歓声が起こった。


「まあ後出しジャンケンみたいで釈然とせんけど、

明かせなかったのも無理ないと言えば無理ないわ。

どうせナリカワなんかに仕切られたら俺らのいる場所なんかここには無くなってしまう。

ええで力貸したる!

俺らのボロ家を策に使うんやったな、かなわん思ったがニザエモンの旦那が建て替えてくれる約束してくれたし好きにせえ。

あとな、うちの若い衆 鉄砲の弾込めえらい早よなったで、ダンザとドウゼンにも褒めらたわ!」


カギノスケは得意気に鼻をこすり、頷くダンザとドウゼンに代わる代わる視線を送り交わした。


「わっしの村もアキヨリどんに力貸すで!

今までわっし等は侍の決めたもんに否応なしに従わされてきたんじゃ。

それをアキヨリどんはお願いするなんて言ってくれた!

こう言ったら変かもしれんが、選ぶことが出来るんじゃ。

「はい」とも「いいえ」ともどちらとも言えるんじゃ。

だったら「はい」言うわ!」


「ワシもじゃ!泥だらけで田植え手伝うてくれた!

アキっぺを見捨てたら村の童っこに怒られるがな。」


「ワイもじゃ!」


「ウチもだす!」


次々に協力を申し出る村長達を目にするフミの頬を涙が後から後からとめど無く流れていた。

もちろん胸を打たれせいであるが、一割と少しくらいだろうか、その涙には罪悪感も含まれていた。


「アキ様が集落の皆様とドンチャン騒ぎ…

いいえ!御親睦を深めていらしたのには理由が御座いましたのですね。

しかしそれは利益では無く情に基ずく繋がり。

でなければこれ程にアキ様を支持して下さる筈は御座いません。

知った風な口をきき、アキ様を問い詰めた事 謝らなければなりません。

ああ、あたくしなんておバカだったのでしょう。」


目出度く大団円(だいだんえん)を迎えたかと思われたが、ニザエモンは先程から歓喜と交わらず仏頂面の一人の村長から目を離さずにいた。

ニザエモンの話の冒頭で「正気ですか。」と目で言っていた男である。

男の名は コマバ スネエモン。


「皆の者!村を束ねる立場にありながら雰囲気に流され滅びの道を選ぶか!」


皆の者とは言ったがスネエモンの目は真っ直ぐにニザエモンを見据えていた。



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