青い渚を走りふんどし一丁がやって来る 夢と希望の大空に…
新装開店に合わせ改築された赤い格子戸が開かれ、
村長達を集めて廻っていたリンタロウを先頭に彼等は現れた。
今回リュウキュウ屋へと招かれた集落の長は三十四人。
内 農業を生業とする集落は二十。
漁業を主な生業とする集落が四。
残りの十の集落は、明確な都市計画により整備された、水路と土蔵の幾何学模様のサカイ本町を取り囲む、
無計画に拡大した粗末な建築物群、近年サカイに職を求め移住して来た者達が住まう外町と呼ばれる、貧民街であった。
豊かに暮らす本町に住まう者に反感を抱く者も少なく無かったが。
「うおっ?馬糞の旦那じゃない!最近見なかったが達者だったかい?」
村長と呼ぶには少々年若い外町の長の一人がそうアキヨリを呼んだように、
アクヤのたれた巨大な糞で滑り転び、背中に潤滑剤をこびりつかせたまま外町の入り組んだ横丁を散策するアキヨリには親近感を抱いていた。
「名前で呼んでくれよカギノスケ…
いや カギノスケ殿。
俺の名前知ってるだろ?
いや 存じておりましょう
村長の皆様方の前で馬糞の旦那じゃ格好つかないよ。」
「悪りい悪りい、いやいや、
申し訳ないアキヨリ殿、かな?」
「なんだよ馬糞の旦那ってのは、カギノスケ教えろよ。」
胸元を赤く日焼けさせた、小柄ながらも頑丈そうな体格の村長の一人が、
カギノスケの肩に節くれだった指を生やした手をまわしニヤついた。
「カメキチ殿!知らずとも良い事だ!」
慌てて立ち上がったアキヨリはけつまづいてよろけた。
「さあさあ皆様方、アキヨリと懇意にして下さる方も多数いらっしゃるようで ありがたい事でございますが。
お忙しい皆様を何時迄もお引き止めする訳には行きません。
ご挨拶もそこまでにして頂いて、順に御着席願います。」
自ら格子戸を開け、村長達を迎え入れていたニザエモンはそう急かすと、三十四名が店内に入るのを確認し静かに格子戸を閉め、
議長席へとスッと伸びた背筋と丁度良く引いた顎の上に微笑みをたたえ歩を進めた。
どこと無く媚びた感のある商人のそれはもうそこには無かった。
心地よい張り詰めた雰囲気が店内に匂い始めたが、
静かに閉められた格子戸が乱暴に開け放たれてすぐに消し飛んだ。
「すまねえ!仕事に夢中になってたら もうこんな時間よ!」
ふんどし一丁のスミトモが息を切らして現れると、店内には笑い声が溢れた。
当時のふんどしは股間を包むだけでは無く、
胸元まであり首の後ろで結ぶ物であったが、恥ずかしいには変わりない。
「スミトモ様お着物!」
更に息を切らしたフミが、スミトモの着流しを持って入場すると、
ニザエモンの作り出した緊張感は更なる笑い声に更に消し飛んでしまい、
緊張感を再構築するはめになったニザエモンは溜息混じりに議会の開始を告げた。
「ふう…
皆様揃いましたところで 改めて私共からお伺いするべきところ 御足労頂きました事 厚く御礼申し上げます。
甚だ不躾では御座いますが、御足労頂いた御礼もそこそこに。
早速お集まり頂いた所以を告げ知らしいたします。
この度我等サカイ衆は、再三にわたる ナリカワ ヒデミツの法外な戦費要求、並びに税率引き上げ、利権剥奪を断固拒否。
己の都合ばかりを振り回し、民を護るという本来の目的を忘れた侍共の犠牲となった諸人の作り上げた、このサカイの意気地を守り通すため、
一戦交える事といたした!」




