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六角の花   作者: フミ
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一つの地球に一人ずつ一つではなく

「ううむ、ただお答えするのは いささかつまらぬ故、

誰より授かりしを当てて頂くというのは如何か?」


アキヨリは手持ち無沙汰にニザエモンの手にある、

竹の皮に三つ乗った握り飯を一つ ひったくり そう持ちかけた。


「簡単な謎解きだよ、ミナヅネだろう?」


「むぐっ!ごほっ!ごほっ!

御名答で御座る。

しかし何故その様に呆気なく?」


握り飯が喉につっかえた理由は二つ、

即答での正解が一つと、

アキヨリとニザエモンの共通の主君である、オアイ ミナヅネの名を敬称抜きで聞いたからであった。

生前ミナヅネはキラ ノブモトすなわちニザエモンを 兄そして師であると言っていた。

おそらく公ではミナヅネが主君、私事ではニザエモンが義兄といった間柄であっただろう。

武家ではよくある事例である、序列を明確にしなければ秩序が失われる。

しかし人と人との関わりというものは直線で触れ合っているものでは無い。

家督を継いだ者が甥であっても公の場では主君とし、私事では可愛い甥を猫可愛がりをしていた、

叔父ナリマサと兄アキマサの間柄が思い出された。

アキヨリは自分の目の前でニザエモンが主君ミナヅネを呼び捨てにした事で、

兄と叔父と同様にミナヅネとニザエモンを近しく感じられ、

それがニザエモンを(親父様)と呼んだ事への返答だと感じ、

思わず口中に握り飯があるにも関わらず、不用意に息を飲み喉に詰まらせたのだった。

それはニザエモンにも我が意を得たりと伝わった。

しかし一々確かめるような野暮はせず、即答で正解した理由が語られた。


「少々 変則的に転用された無刀逆流れではあったが、

相手の手首を捻り、利き手を脇に添える際の円を描くが如き動きがミナヅネのそれと瓜二つ。

それに良く良く思い起こせば、私がこの技を伝えた者の内、アキヨリと直接関わりがあるのはミナヅネだけであろう。

そんなところさ。」


「道理で御座る。

そう考えるといささか間抜けな問答でした。

では俺から一つ問います。

以前 親父様は武士として名乗ると言い、カミカワ ニザエモンと名乗られた。

武士として名乗られるならキラ ノブモトと名乗られるが筋では御座らぬか?」


「それについては気が引けるな。

どうしてもキラの名は名乗りたくなかったのだ。

ミナヅネの元を去り、このサカイに赴く際 私はキラの名を捨て盟友二人に由来する二文字を貰いカミカワを名乗った。

其方の父アキナガの領地 コウズケの上とナリカワ ヒデオキから川の字だ。

共に苦楽を共にした日々を忘れたく無かったのかもな。」


「御自身の事を(かも)とは…

いや、しかし人とは自分自身を正確に理解している方が稀というもの。

ならばもう一つ問いが生まれ申した…」


ニザエモンはその問いを遮った。


「それまで!

問われて語るならば、この陣羽織の意味が無い。

アキヨリかフミさんかどちらがお喋り者かは知らぬが、

捨てた名が知れ渡ってしまったからには話しておこうと腹を決めて、こんな物を羽織って来たのだ。

何故私がミナヅネの元を去ったか、

何故サカイの商人となったか。

全てはフナオカヤマの合戦に端を発する。」



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