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六角の花   作者: フミ
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お祭り騒ぎと人知れずのあなたとわたし

背負っていたヒサハルを、移動手段は馬を常とし、

ほぼ使用しない大名駕籠(だいみょうかご)に押し込むと、

ヒデミツの耳には祭囃子(まつりばやし)が聞こえて来た。

それは引き連れて来た一万が待機する大通りの方からである。


「殿、ヒサハル殿は何処(いずこ)で御座いますか?!」


息を切らしやって来た従軍医師の顔は何故か楽しげにほころんでいる。


「怪我人が出たというに、何をニヤついておるか。

座興が元でとの事を聞いたなら無理も無いが、少しは慎め。」


「これは迂闊千万(うかつせんばん)で御座いました。

しかし殿、大通りは今 絢爛豪華な極楽浄土の如き有様ですぞ。」


「ぬぁん!」


別に返事をした訳ではなかった、ヒデミツは急かされていた、急かされて胸の中で(ぬぁん!)と言い、そのまま口にし、

家臣達の目を気にしながら、不審に思われない最大速度で、

小走りと早歩きを行ったり来たりして、大通りへとニザエモン邸の庭を進んだ。

それ程までに我を失う理由は、大通りのお祭り騒ぎは、シジマ アキヨリによる(仕掛け)だとの確信があった為である。


ピャァ〜ララ!ドン!

ピャァ〜ラララ〜ドンカラドン!


大通りは音と色の坩堝となっていた。

山車に乗った、摺鉦(すりがね)・締め太鼓・大胴・笛の祭囃子が、四方から鳴り響き。

呼びかけ合い、応え合いを繰り返し、

音の渦に飲み込まれたナリカワ兵達は、恍惚と興奮で、旅の疲れも忘れ歓声をあげ、中には踊り出す者も現れた。

更にその兵と楽団にまとわりつくように、

色とりどりの薄衣の羽衣を靡かせ、

天女の如き数十人の娘達が、舞い駆け回っていた。


ヒデミツは立ち尽くしていた。

このお祭り騒ぎに見入っていたのでは無い、

思考していたのだ、お祭り騒ぎに込められたアキヨリの思惑を。

それ故 ヒデミツを追って来た、彼を囲み護衛する

数人の兵達の足拍子にイラついた視線を向け止めさせた。


「奴(やっこ)さん出て来やがったぜ。」


「おう!てめえ等出番だ!」


人知れず その遣り取りが交わされると、

祭囃子隊は山車を飛び降り、空になった山車を

どこからか現れた屈強そうな男達が、引き、押し、

兵達の真ん前、お祭り騒ぎの中心へと集結させた。


ドドン!!


集結した四つの山車は太鼓の合図で、屈強そうな男達により、

瞬く間に解体され、

瞬く間に一つに再構築された。

それは見上げ程の 高さ四丈(約12m)のハリボテの天守閣であった。


「うおおおおおお!!」


あまりの素早さと、出来上がった天守閣の大きさに、

兵達からは どよめきと歓声と拍手が巻き起こった。


すると天守閣を組み立てた男達は、気を良くしたのか

朱色の杯(さかずき)を取り出し、祝杯をあげ始めた。

それは芝居であり 杯は空で、酔いましたよという印に、男達はお互いの顔に紅を塗りたくった。


「いいぞ!いいぞ!

芝居じゃ!突然このような見事な芝居が見物出来るとは、さすがサカイじゃ!」


兵達の興奮は異様な迄に高まった。


「次は俺の出番だな。」


「おう!頼んだぜジョスイさん!」


人知れず その遣り取りが交わされると、

天守閣の最上部から能の(紅葉狩)に登場する鬼が、せり上がって登場し赤い髪を振り乱した。

すると赤い顔の男達は突然 喉を抑え苦しみ、血を吐いて倒れた。


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