鉄産球に挑め
ダンザの作る料理は、陣中食を発展させた物で、見た目の大雑把さとは裏腹に美味である。
アキヨリが食べるのを見越して炊いた、朝の大量に余ってしまったご飯を串に巻き付け焼いた(きりたんぽ)を、勢い良く切って、いや斬って、同じく勢い良く斬った野菜 鳥肉を勢い良く鍋にぶち込んだ味噌味の鍋だった。
冷めてしまっていたが皆あっという間に平らげた後の茶の間には、アキヨリの書いた鉄産球の図面が広げられた。
皆それを囲み、渋柿と濃すぎる抹茶を一片に口に捻じ込まれたような顔を突き合わせていた。
「出来る限り詳細に示した積もりだが、分からないところがあったなら聞いてくれ。
しかし一番喋るのが苦手だったチョウキチが一番早く上達してるとは、不思議と言ったらおかしいかも知れんが驚いたよ。」
皆の渋い顔を他所にアキヨリはのんきな様子だ。
「シュウテツ先生が言うには俺に必要なのは勇気だけだって話だった。
俺はアキに憧れてたんだ。
俺もアキみたいに強く勇気のある男になりたかった。
アキの勇気ってのは腕っぷしだけじゃないんだ、出来ない事や知らない事を正直に、出来ない知らない教えてくれって言えるところなんだよ。
偉い侍のくせにさ。
ちょっとずつでも近付こうとしてたのが良かったのかもな。
で、この中のグルグルと外側の玉ねぎみたいな殻の繋ぎ目はどうなってるんだ?」
「持ち上げるなよチョウキチ。
お前は元々勇気のある男だ、火縄銃なんて初めて持ったら、そりゃ恐ろしいよ。
俺達が武器を戦場で扱えるのは日々修練して慣れてるからさ。
繋ぎ目なんだけど、ドーマンで良く良く見てみたんだが無かった、外側と中身一体で整形したみたいなんだ。」
「俺自身あの一件で吹っ切れた気がする。
今落ち着いて考えると、さっき俺は上手く喋れるようになったのをアキに見せたくて、突っかかった気がするんだ。
アキはさ、面白い話 聞かせてくれた後に俺がどう思ったかを聞くだろ?
俺が話せないの知っててさ。
でも馬鹿にしてる訳じゃないんだ、俺の身振り手振りでもちゃんと言葉として受け取ってくれたよな。
腹の立った事でも何でもいい、強く思った事を早くお前に言葉でぶつけたかったんだ。
皆との約束は破ってしまったけどな。
外側と中身一体で作ったならどうやって焼くんだよ、こんな複雑な形 中まで熱が回らないぞ。」
「二人共…図面に…集中しないか?!
他の事を考えながら…答えの出せる問題じゃないぞ!」
「はい集中します。」
「すみませんでした。」
ゲンに諭されアキヨリとチョウキチはしおしおになり反省したようだ。
「俺が思うに…先生は整形と乾燥と焼結を一片に…行ったんじゃないかと思う…」
ゲンの仮説にマイが反論する。
「そんな事したら…焼け死んじゃうじゃない…」
「忘れたのかマイ…先生は多々良の力を自在に操る…達人で…陶芸家として頂点を極めた人だ。
先生なら…不可能じゃない。」
「それじゃ多々良の守人の俺しか作れないって言うのかよ。
こんな複雑な形を寸法通りに作れるようになるには何年かかるか分からない。
陶芸の仕事に集中出来るならやれない事もないかも知れないがそうも言ってはいられぬ。
下手を打った、ゲンに図面を見せたなら、いとも簡単にとまでは行かずとも、何とかしてくれると思って義父上に作り方まで問わず終いだった。」
「先生が待つアキの子供の頃…建てた小屋にまた行けたのか?
俺も…いつか行ってみたいが…
多分アキが先生に…作り方を聞いても教えてはくれなかったと俺は思う。
教える気があるなら…聞かなくても教えてくれる。
これは俺達に先生が…用意してくれた課題なんだ!
自分達で考えて力を合わせて解決しろって…
そうだ!」
「ゲンどうした?何か思いついたのか?!」
「ああ…思いついた!力を合わせるんだ!
俺達が形作る間…アキが多々良の力で乾燥と焼結をやるんだ!」
ゲンの案にマイがまた反論する。
「それじゃ…私達焼け死んじゃうじゃない!」
「そうならないように…アキが多々良の力で…俺達を熱から守ってくれる…
出来ないなんて…言わないよなアキ!」
皆に丸投げしてお気楽を気取っていたアキヨリの心情は、足の小指をぶつけたが如く悶絶した。
「ぬぬぬ…」
「わたしアキが…もし失敗しても…恨まないよ…」
マイが言った。
「承知した!必ず成し遂げてみせる!
失敗などせぬ!絶対に皆を焼け死んだりはさせぬ!」
「死んだら恨むわ…火傷くらいなら許して…あげる。
いっぱい…練習してね。」
「ぬぬぬ…」




