二人の秘密
「スミトモ様、ニリカ様は医師でもあったのです。
ゲンノスケ様の喉にも治療をしておいででした。
ニリカ様はゲンノスケ様に仰いました、言葉を話す修練を続ければ必ず良くなると。
ですからスミトモ様の手も必ず良くなるに違いありません。
あたくし信じております。」
「そいつは本当かい?
ゲンが喋れるようになったらアキヨリは泣いて喜ぶだろうよ。
他の職人達はどうなのよ?」
「シュウテツ先生は御存知ですか?」
「知ってるよ、やたら目付きの鋭い医者よ。」
「あたくしはお顔を拝見してはいないので分かりませんが、先生が皆様を言葉を話せるよう御指導しておいでのようです。
あっ、アキヨリ様には内緒ですよ。」
「そいつは良かった、本当に良かった。
しかし ちっと困ったな、俺はこの変てこりんな親指に綱を引っ掛けて舟を操る癖がついちまってる。
普通に動くようになったら今迄みたいに操れなくなるよ。」
「いいえ!もっと御上手に操れるようになります!」
「そうだな、きっとそうさ。
ところでフミ お前 成り行きでサカイに来ちまったみたいだが、家族やお前を心配して待ってる奴はいないのかよ?
なんだったら後で俺が船で送って行くよ。」
「いません。」
「一人もかよ?」
「………」
「しつこかったよ 悪かった。
無理に話さなくていいよ、フミはサカイにいて欲しいよ。」
「はい、あたくしもスミトモ様やアキ様や皆様と一緒に居たいと思っております。
あたくし 思い上がっているのかもしれませが、先ほど話して下さったスミトモ様の生い立ちをお話下さったのは、あたくしだけなのではありませんか?」
「何だよ突然、まあその通りよ。
子分達は村から出てから集めた奴等だから知らないし話してないよ。」
「ご親友のアキヨリ様にもですか?」
「あー、何度か話そうと思ったけど、俺と違ってあいつの肉親は冗談みたいに立派な奴ばっかりだから、人間のちっさい俺はやっかまれて とうとう話せず終いよ。
アキマサとイエナガに揃ってお目見えした時はチビったよ。
特にアキマサの貫禄は威厳なんてもんじゃなかったね、笑顔で受け入れてくれたが余計に怖かったよ。」
「うふふ、そんなふうに素直にお話しになるのは器量の大きい証拠です。
スミトモ様はミアケ ノリタダを御存知でしょうか?」
「ははっ、フミはキリュウと同じで突然話が変わるよ。
これでもシジマ家お抱えの海賊になってからは大名やら各国の有力者やら色々覚えたよ。
ミアケ ノリタダね、知ってるよフナオカヤマの大戦で負けてオキノシマに島流しになった大名よ。」
「あたくしの祖父でございます。」
「ええ!なんだって?!」
「あたくしスミトモ様にあたくしの生い立ちを知って欲しくなりました。」
「その様子だとアキヨリにも話してないみたいだな?」
「はい、スミトモ様だけにお話しします。」
「分かったよ、故郷のシマの海に誓って誰にも話さないから教えてくれ。」




