↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角の花   作者: フミ
PR
287/788

ピロートーク

いつの間にか手を握られていた。

それを意思したと同時に 心に地よい強引さで引き寄せられた。


引き寄せられた先には境界線があった。

トバ スミトモは一尺(約30cm)の厚みの海を纏っている。


フミは境界線を越えスミトモの海に落ちた。

海中には潮の香りと伽羅(きゃら)の甘い香りが渦を巻き、

海底は着崩した着流しの、はだけた胸元から現れる鍛えられた胸板だった。

心地よく沈んで行ったフミは海底に手をついた。


「どこへお連れしようと仰いますか?

勝手に抜け出したならアキ様に叱られます。

スミトモ様と二人でなんて尚更です。」


「声が大きいよフミ、それに俺の誘いを断ってるように聞こえるけど、フミは断れないよ。」


「あたくしにはあたくしの意思があります。」


「フミが今一番知りたい事を教えてあげるよ。」


「えっ?!」


スミトモの暗示にかかっているのだろう、フミは無意識に声にならないよう感嘆を吐き出した為に大半は鼻から飛び出した。

鼻水と共に。


俯き気付かれない様に拭い、言葉の真意を確かめようとスミトモを見上げ、中々確かめられなかったその表情を目の当たりにした。


「俺がなぜフミが弁天さんじゃないか分かったか…

知りたいよなフミ。」


スミトモの表情は真剣そのものだった。


「はい。」


スミトモにニリカではないと見抜かれた時、フミは自分でもなぜこれ程迄に驚愕するのかと思う程狼狽えた。

正に今一番知りたい事だった。

自分でも知らない自分の何かをスミトモは知っているのではないか。

フミは頷く他に手立ては無かった。


「決まりだね。

フミぐっと歯を食いしばるんだよ。」


「え?!え?!はっ!はい!んぐ。ぐーーー!!」


フミは飛んだ、スミトモの腕に抱かれ飛んだ。

着地したのはニザエモン邸の塀の上だった。


見回すと宙を舞う鉤爪(かぎづめ)の付いた縄(なわ)と、反り返りを繰り返し暴れる庭の竹林が目に入った。

おそらくこの二つを使い飛んだのだろう。


「スミトモォォ!!」


アキヨリの怒声で塀が揺れた。

おぼつかない足取りながら恐ろしい速度で向かって来る。


「アキヨリ 悪いけどフミと少し散歩してくるよ。」


スミトモは鉤爪のついた縄を投げ どこかに引っ掛けたようだ。


「待てえぇぇい!」


「それは聞けない相談よ。

どうしても話したいことがあるのよ。

フミも同意の上よ、なあフミ。」


「アキ様心配御座いません。

スミトモ様は本当にあたくしに伝えたい事があるのです。」


「だったら俺の見ている前で伝えろ!」


「無理よ、恥ずかしくって。

亥(い)の刻(こく)(午後10時)には、お前の家に送るよ、本当よ。

じゃあな!」


スミトモはぐっと縄を持つ手に力を込めた。


「間に合わんか!

フミさん、着物の袖を広げてこちらに向けよ!」


「こ!こうですか?!」


アキヨリは腰の巻物を額にあて何か念じた後、フミの袖に向け投げた。

直後 巻物は袖のど真ん中に綺麗に収まった。


「フミさんの意にそぐわぬ事をしたなら分かっておるな?!」


「あははは、真っ黒こげね、分かってるよ。

心配無いってのに、あははは!」


笑いながらスミトモは、力を込めていた綱に更に全体重を込め 直後に塀を蹴った。

するとスミトモとフミの姿は夕闇の中へと消えて行った。

少し離れた場所で木々の暴れる音がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。