友達っていいよね
「ヘイクロウちょっと待ってくれよ。」
人が歩み出すにはまず、体を前に傾けてから足を前に出すものである。
当然前に出す筈の足を掴まれたなら、倒れざるを得ない。
言葉の第一歩をスミトモに掴まれたヘイクロウは、精神だけで無く身体までよろけた。
「スミトモ殿、何事で御座るか!
さっきからフミ殿をじろじろ見ておられるが。
まさか色恋沙汰で拙者の晴れ舞台に割って入ったのではありますまいな。」
「へっへっへっ、怒るなよぅヘイクロウ。
一つ聞いておかなきゃ俺は、遣る瀬無くってたまんないのよ。
なあフミよ。」
「はい、何でしょうか?」
「あんた夕べの弁天さんと違うよな。」
「!!、はい…」
「それだけ分かればいいのよ。
根掘り葉掘り問い質す積りはないよ。
だったら黙ってろって言われるかも知れないが、俺にとっちゃ大問題なのさ。
それとアキヨリ、隠してるって言ったらお前は違うと言うかも知れないが、全部話してはくれてないよな。
見た目は同じなのに、夕べは弁天さん、今日はフミ、そんな具合の普通じゃ信じられないような事よ。」
「むう、迷っている。
一言で言うならば迷っているのだ。」
「そのまんま話せばいいじゃないかよ。
お前が迷ってる理由は俺達が信じるか、理解出来るかだけじゃないだろ?
ナリカワとの戦は俺達の命を預かって、誰が死のうが生きようが必ず勝つって覚悟してくれてるよ。
だけどお前のカミさんを救い出し、火の神だかなんだかをぶっ飛ばす一件に関しちゃお前一人が命張って何とかしようって積りがまだどっかにあるんじゃないかよ?
じゃ無かったらお前は命を預かった奴に話そうか話さないかなんて迷ったりしないよ。
多勢で行ったら、いっぺえ死ぬ奴が出るから俺達だけでやるって言ってくれたが。
それは誰か一人でも死んじまったら、たとえ全てが上手く行って、お前のカミさんのおっ母さんが因縁から解放されて帰って来たとしても。
おっ母さんを恨む奴が出来るのが嫌でそうするんだろ?
だがよ、お前が死んじまったら俺はおっ母さんを一生恨み続けるよ!」
「すまぬスミトモ、だが分かってくれ、俺がこの因縁に決着をつけねばならぬと…」
「まだ言うかよ!
ダンザ、フジオカ、キリュウの顔見てみろよ!
お前とこいつ等は何だよ?
主君と家臣か?
違うよ!
俺とお前は何だよ?
雇い主と雇われ海賊か?
違うよ!
分からねえって顔してるから教えてやるよ、ガキみたいな事言うが笑うなよ。
友達よ!!
ここに居るみんなそうさ。
俺とお前が始めて会った日さ、俺が大名の味方なんかしねえって言っても。
俺の隠れ家に居座りやがって子分共と仲良くなりやがって。
仕舞いにゃ俺が根負けして味方するって言えば、何度も何度もありがとうありがとうって、大名の息子のくせに何度も何度もよう!
お前がどう思っていようと俺達は友達だよ!
友達に関して我慢ならない事が一つあるよ。
友達が苦しんでるのに同じだけ苦しめないって事よ!
いいから洗いざらいブチまけろよ!」
「承知したあああああ!!」
アキヨリはアキの国での出来事を一つも欠ける事無く話し始めた。
それはいつもの理路整然とした彼とは違い、行ったり来たりのたどたどしい話しぶりだった。
お預けを食らったヘイクロウも納得した様子だった。




