確信
「た、た、大概にせぬか。
今を生きるお前にわたしの名前がどうして知れよう。」
言葉とは裏腹に震えるオオクニヌシの手は、アキヨリの襟首を掴み催促した。
わたしの名を呼べと。
「ニリカ!!
そなたが生を受け最初に受け取られた贈り物に御座います!」
「ニリカ!ニリカ!それがわたしの名前…
アキヨリ確信と申したな、根拠も無しに大言を吐くお前では無い。
聞かせておくれ!それをどこで聞いたか、それとも知らずに記憶の奥底をわたしが漏らしたか?!」
アキヨリは一度頷き、重みのある動作でオオクニヌシの手を握り、その震えを受け止め、一度口中で最初の言葉を噛み締め口を開いた。
「俺にはドーマンの術があり申す。
この術を授けて下さったヨダ殿は、俺の異常に早い術の習得を驚き喜んで下さった。」
「うん、うん。」
急かす様にオオクニヌシは頷く。
「今頃になって気付いたのですが、その様に早い習得に至った訳は、俺には生まれついての資質があったのです。」
「うん。」
「俺は幼き頃より前触れ無く遠くの風景を見る事があり、それが資質であったかと思われます。
それは決まって過去の風景で、俺が見る筈も無い生まれる以前に失われた物もあり申した。
なぜその様なものを見るのか。
何と無くはその訳に自分なりに答えを出していたのですが、確信に至る出来事があり申した。
それは其方の名を知り確信した出来事と重なり申す。」
「うん、それは何であ!」
「だい…其方がヤマトとの戦について語って下さったあの時、俺は見たのです。
高台の岩場で邂逅する其方とグァンユウ殿を。
グァンユウ殿は確かに申しておられた、其方の名をニリカと!」
「あゝ!ああああ!
誠か?誠かえ?!なぜ!なぜ今迄黙っておった!」
アキヨリはほんの少し震える手を握る力を強めた
「その問いには一つの確信を以ってお答えいたす!
岩場での風景は常に其方の視線であった事から、以前から俺が予想していた通り、俺が見るは過去の風景では無く人の強い想いである!
それ故にその人物の主観が混じり事実と異なる場合もあるやもしれませぬ。
それに見ているのは俺です、俺の主観が混じるとも限りませぬ。
それ故に軽々しく其方の名を口には出来ませんでした。
今其方の御名前を申し上げたのはもう一つの確信であり申す!
先程其方が俺に下さった教訓の中に、高台の岩場が其方が幼き頃遊び場とした思い出の場所であるとあった。
それは船中で俺に語って下さった話には無く、俺の見た岩場での出来事ではグァンユウ殿が申しておられた。
故に俺は確信し申した!
俺が見たは真実!
其方の御名前はニリカ!!
思い出して頂けたろうか?
思い出して頂けたならそれを最後の確信といたしたいところであるが。叶わぬなら僭越ながら俺がたった今名付けて差し上げる!
たった今からニリカ様はニリカと名乗られよ!!」
「やたらめったらを申しおって!
お前が名付けてくれるまでも無い。
父から貰った名であ!わたしの名はニリカ!
思い出したぁ…
ああ!ああああああ!」




