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六角の花   作者: フミ
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この道は通しゃせぬ

「お待ち下され大王

他にも俺なりに訓という形にしたものを聞いて頂きたい」


やっとアキヨリは僅かに頭を上げた

しかし視界にオオクニヌシを捉えた訳では無いようだ


「もう良い お前がどの様に朕の昔話を捉えたか試すなど朕が愚かであった

前もって伝えもせず人を試すなどすまなかった

よいかアキヨリよ

お前が言うか言うまいか

いや 朕が今から言う事は お前が言わずに済まそうとしている事であ」


「尚更お待ち下され

俺が大王が伝えようとした事柄を理解していると分かって下さったならそれで良いではありませぬか!」


「理解しておらぬであろうから言って聞かせるのであ

朕がヤマトとの戦の直前 幼き日遊んだ高台の岩場でグァンユウと再会した時の話であ」


「幼き日?!」


「どうしたえ?まさか忘れた訳でははあるまいな」


「忘れる筈などありませぬ!

もうおやめ下され!」


「黙って聞け!

あの時朕はグァンユウに朕の軍勢が豪雨と共に進軍すると伝えた

逃げて欲しかった生きて欲しかった

その想いが無かったとは言わぬ

だが朕はグァンユウが仲間を解放する為にその事をヤマトに洩(もら)らすであろうと見越し利用しヤマトの軍勢を奇襲したのだ

グァンユウは朕を利用し

朕はグァンユウを利用し…」


「お頼み申す!もうおやめ下され!」


アキヨリは仰向けからうつ伏せに寝返り立ち上がりオオクニヌシへと駆け出そうと腕を立て足に力を込めた


「黙って聞けと申したであろう!!」


オオクニヌシの威厳と怒号はアキヨリに重量としてのしかかり

上半身を起こしていた腕は肘から折れ歴戦の強者を再び地に伏した

その様子を認めたオオクニヌシは静かに一歩だけ桟橋を歩み言葉を続けた


「声を荒げてすまなかった心を静かに聞いてくれ

グァンユウは仲間を助けようと朕を裏切り

朕は民を守る為 勝利する為にグァンユウを裏切った

アキヨリよ人の世には人と人との絆を上回る事柄が嫌という程に充満しておるのであ

多くの者から慕われ上に立つ人間なら尚更であ

お前がこれから歩むであろう道は熾烈を極め仲間との絆を引き裂かんと数々の試練が立ち塞がり

お前の元を去って行く友もあるであろう

しかしアキヨリよそれは裏切りとは言わぬのだ

ただ違う道を歩むという事なのだ」


「俺は俺に付き従う者を絶対に裏切ったりなどいたしませぬ!!

ダンザ フジオカ 古参のシジマ家家臣達は元より

新たに俺の臣となってくれたキリュウ

心を通わせる友であるヘイクロウ スミトモ ドウゼン ギンザブロウ殿

そして…そして…

ジョスイ!サナガ ジョスイ!!

仁に厚く義に生きる彼等が俺を裏切るなど万に一つもありませぬうあああ!!」


アキヨリはオオクニヌシの重量を跳ね除け叫んだ


「あるであ

絶対に裏切らぬ者などこの世にはおらぬ」


「ならば教えて頂きたい!

俺達の絆を上回る事柄とやらを!!」


「それはお前達が守るものであ

民 国 先人から受け継いだ誇り

数え挙げればきりが無いわい

それらと仲間を両天秤にかけねばならぬとすればお前はどうする

事実一つにまとまりかけたこの国を再び戦火の絶えぬ大乱世とせぬが為にジョスイはお前達と主君を裏切ったではないか

だが真の問題はそこでは無い

守るべきものを守り通す為ならお前の友は喜んで命を投げ出し戦うであろう

だが友を犠牲にする判断を強いられ続けたなら

いくら信念を強く持つお前でも

いや そういうお前だからこそ

精神を疲弊させいつかお前はお前自身を裏切る

お前の友がお前を裏切る時

それはお前がお前を裏切った時なのだ

朕がそうであった

お前には朕と同じ蹉跌を歩んで欲しく無いのだ

アキヨリよ頼むから聞き入れておくれ

アキヨリよ」

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