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六角の花   作者: フミ
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やや内角を狙い抉り込む様につつくべし

「目を覚まさぬな」


「起きませぬな」


オオクニヌシとアキヨリはアクヤの鼻をつついている

アキヨリ達が住む土蔵を改築した住居の出入り口を入るとちょっとした土間があり

その奥にはアクヤとリヨウが寝泊まりする馬小屋があった

深夜 馬小屋の暗がり中 二人は音を立てずにアクヤを目覚めさせようとしていた

就寝した皆を起こさぬようにでは無く

未だ灯りの灯る部屋の主 マイに気付かれ無いようにだった


「植物を糧とする生き物は捕食者を恐れて この様に熟睡せぬのでは無いかえ?」


「普通そうなのでしょうがアクヤが眠っていたとしてもこの図体故

襲って喰らおうとする生き物などおらぬ故この様な豪胆となった次第で」


「仕方あるまい

ナガヨリがこしらえた茶碗などもこうして手に取り眺める事も叶った

お前の息子達を愛でてはやれなんだがこうなったのも朕が落ち度

次であ次

お前の家臣達の所へ行くぞえ」


「あの…大王も歩きませぬか?

正直申しますとアクヤをあてにしてここまで走って来たもので…」


「次はおんぶが良いなぁ」


「うへぇ 仰せのままにぃぃ」



数刻後オオクニヌシとアキヨリは再び暗がりの中 鼻をつついていた


「目を覚まさぬな」


「起こさずにおいてやって下され

此奴等は外に飲みに行く訳でも無く

人一倍働き国元へと仕送りしておるのです

酒場にいた連中は様々な意味で型にはまらぬ奴等でして

生家から勘当され自由気ままのその日暮らし

困ったものです

しかし三度に一度位は仕送り組を誘い奢ってやっているようですが…」


オオクニヌシがつついていたのは武家長屋で折り重なり眠る坂東武者達であった


「武士という者はいついかなる変事にも対応する為にこの様に熟睡せぬのでは無いかえ?」


「ううむ…俺もいついかなる時も深く眠り込んでしまうものでなんとも…」


「朕にはこの者達がこうして安心して眠っていられる理由が分かるぞえ

ほれお前もお前もヘソを出しおって布団が意味を成さぬでは無いか

もう明け方は冷えるぞえ」


オオクニヌシは独創的な形で点在する布団を坂東武者達にかけていった


「大王かたじけない

で 此奴等が安心する理由とは?」


「それはお前であアキヨリ」


「俺ですか?余計に分かりませぬ

分かるように話して下され」


「さて次はギンザブロウの工場であったな」


「ふぅ…俺は今猛烈に反省しております」


「どうしたえ?急に」


「振り回される人間の気持ちが分かったのです」


「あははあははあははあはは

良い経験となったな

ほれ背中を向けろ」


「はい…仰せのままに」


数刻後オオクニヌシとアキヨリはワシノミヤ組の三百坪はある工場の暗がりで複雑に組み合わされた材木をつついていた


「これは一体何をこさえておるのであ?」


「街の外にある道祖神塚に普請する予定の砦や街を囲う様に建ち並ぶ土蔵に取り付ける足場になる物です

こうやって工場で加工出来る所まで仕上げて現場で組み立てるのです

以前全体の仮組み作業に立ち会ったのですが

それはもうあっという間の出来事でして」


「ほほう

ギンザブロウは相当腕の立つ匠人であると見える

しかしよく分からぬ

組み立てて完成した様子を見たいが勝手にやったら何をされるか分からぬな

次であ次!」


「へへぃ貯水池でしたな」


数刻後 貯水池の手前の港の桟橋付近でアキヨリは仰向けに倒れていた


「大王!もうびた一文走れませぬ!」

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