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六角の花   作者: フミ
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267/788

飛びます飛びます

「おお!

暴れ太鼓の如き足の運びであるが規則性があるのだな故心地よい

ダンザの三味線の四拍子の一拍子の間に四回踏んでいるのか

タタタタ タタタタ タタタタ タタタタで十六拍子とでも言うべきか

ん?

少し変わったぞ

タタタ タタタ タタタ タタタ

今度は一拍子に三つ!

何と心地よく胸昂ぶる拍子だろうか

大王の時代には皆この様に踊り拍子を刻んだのだろうか?

しかし何故俺の時代に受け継がれる事無く廃れたか

大王が国を譲りこの日の本より姿を消したイズモの国の文化は

次代の権力者により封印され抹殺されて来たのだろうな

義憤に堪えん!

いや 大王と出会いイズモの文化の片鱗を目の当たりにした奇跡に比べれば些細な事だ

今は余計な思案などせずこの奇跡に酔いしれようぞ」


もちろんアキヨリは笛を吹いているので口に出して言っている訳では無い

ハタから見れば唇に笛をあてがい指を踊らせ

オオクニヌシに力を込めた視線を送り

目を少し見開き気味にし小刻みに二度三度頷いただけである

だが昂ぶる自分の内側を伝えるには必要充分な動作であった


無心で三味線と笛に合わせ小刻みに足を踏み鳴らすオオクニヌシの足元に発生した波は

腰を伝わり背骨を優雅にしならせ首を伝わる頃には恍惚へと変貌し

柔らかく朧に少しだけ開かれた瞼に到達した

そして瞼の奥の瞳はアキヨリの視線を捉えた


「どうであ?朕の舞は」


少し傾けた首

腰にあてた両手

拍子を刻むのを止めて右足に体重を預け放り出した左足

オオクニヌシのそれらはそう語った


「極上にて御座る!」


ゆっくり二度頷きアキヨリは語った


「お前もやりたかろう?」


タッタタッ


オオクニヌシの足音が語った


「無論!」


ピャァァ!


ワザと半音高く鳴らされた笛が語った


「朕を真似て踏んでみよ」


タッタタタタ


「これでよろしいか?」


タッタタタタ


「筋が良いぞえ」


タタタタ タッタタ


「朝飯前にて」


タタタタ タッタタ


「お次はこれであ出来るかえ?」


タッタッタタタタ タッタタ


「なんの!なんの!」


タッタッタタタタ タッタタタ


「一つ多いぞえ」


タタタ タタタ タタタ タタタ タッタタ


「オマケで御座る」


タタタ タタタ タタタ タタタ タッタタ


「朕に合わせろ続けて行くぞえ!」


「しくじりましたら御愛嬌!」


タッタタタタ

タタタタ タッタタ

タッタッタタタタ タッタタ

タタタ タタタ タタタ タタタ タッタタ!

ダン!


「いぃぃやったぁぁぁ!!」


「良いぞ良いぞアキヨリ!

楽しいのう楽しいのう!!」


バキッ!


二人は長く水中に潜り水面から顔を出し呼吸を許されるた様に声を上げ

勢い余って同時に近くの柱を蹴り飛ばした


柱は呆気なく吹っ飛びつっかえ棒へと位を落とした


見事に踊るオオクニヌシとアキヨリにヤキモチなど吹っ飛ぶ感動を覚えたギンザブロウは歓声を上げようとしたが

その口から出たものは別のものだった


「みんな逃げろぉぉぉぉい!!」


プンッ プンッ プンッ プンッ!


そう音を立てアキヨリとオオクニヌシの吹っ飛ばした柱を中心に四本の柱がしなり吹っ飛び

つっかえ棒になり横たわった

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