あんた酔ってんのかい?
「どうやら収まりがついたようだな
ギンザブロウ殿とスミトモ
どちらが強いか見て見たかったが皆仲が良いのが一番だ
フジオカ 席は空いているな俺達は俺達で飲み直そう」
アキヨリは自分の指定席である坂東武者達の居座る店の隅の更に奥
腰の高さまで高くなって畳の敷かれた一角に腰を下ろした
「アキヨリ様おかえりなさいませ!」
「アキ兄様!」
「若殿 長旅お疲れではございませぬか?」
たちまちアキヨリは家臣達に囲まれた
「うむ 皆変わり無いようで何よりだ」
家臣達一人一人の鼻をつまんだり頬をこね回したりしてアキヨリは微笑む
「しかしアキヨリ様あれでよろしいので?」
フジオカが隣に腰を下ろし問う
「あれとは何だ?」
「御連れの姫君で御座る
ギンザブロウ殿とスミトモ殿が相席する酒の席など危険極まりないのでは御座いませぬか?」
「ああ その事か 心配あるまい
ギンザブロウ殿もスミトモも男の俺でさえ惚れ惚れするほどの器量の持ち主だが
女が惚れたなら その女は確実に不幸になる類の男だ
二人共な
世間知らずの小娘であるならいざ知らず
大王はあれで聡明な御方だ
それにおそらく俺よりお強い」
「酒がで御座るか?」
「ふふ そうだな …
では一つ貰おうか」
アキヨリは銀のぐい飲みを懐から取り出した
「これは 気が利きませんで」
フジオカが冷の徳利を手に取ると
「いや やはり止めておく
すまぬが茶を貰おう
急須に茶碗を乗せて蒸し出す香りの良い唐土の茶があったな
あれが飲みたくなった」
「はっ!只今持って参ります!」
「いや 俺が!」
「いやいや拙者が!」
「それがしが!」
坂東武者達は慌ただしく調理場へ走って行った
「おいおい 給仕を呼べばよいだろうに
まあそうだな 甘えるとするか
しかし大王の御様子
どこか無理してはしゃいでおられるようだ
何かが大王の御心を苦しめているのは確かだ
それが分かるまで酔っ払う訳にはいかんな」
べんべんべんべんべんべん!!
それは三味線の音
それはアキヨリの思案顔を粉々にした
「百発撃てば億のシカバネェェ
お天道様撃てば海に落ち夜が来るぅぅぅ!
百発億中ぅぅアンドウ ダンザとぁぁ俺がことだぁぁぁ!」
それは酔っ払いの歌声
「おうダンザ!ドウゼン!出来上がってるな!
勝負の決着はついたのか?」
アキヨリはシーサーに跨る二人に声をかけた
「若様いらしたのですか!
俺は遠当て早撃ち合わせて七十六発の的中にて
俺の勝ちで御座います!」
口の開いた阿形のシーサーに跨るダンザが答えた
「勝負の決着と言ったかシジマ アキヨリよ!
遠当て勝負にて三十発
早撃ち勝負にて四十六発
全て的中した俺の勝ちだぁ!」
口の閉まった吽形のシーサーに跨るドウゼンが答えた
「あははははははは!
それを引き分けと言うのだ!
ダンザ!笛を合わせるから もっと弾け!」
「仰せのままにぃ!」
「おお!始まったぞ
皆の者こんな事してる場合じゃ無いぞ!
あ それそれそれ!」
アキヨリに持って行く急須を奪い合いっていた坂東武者達はフジオカの音頭で笛と三味線に合わせ踊り出した
バキャ!
それはオオクニヌシが特別席を囲う籐を編んで作ったついたてを蹴り飛ばした音
「朕も仲間に入れろぅ!!」
トタタタタッ!タタ!トタタタタッ!
それは小刻みに足を踏み鳴らし踊るオオクニヌシの足音




