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六角の花   作者: フミ
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265/788

龍と虎と大工と海賊とシーサー

花が咲いていた

実際に見た訳では無いが

スミトモの想像する南国の赤やら黄色やらの花が彼の視界の枠を取り囲み咲き乱れた

その中心に咲く大輪の青い花目掛けスミトモは飛んだ

大輪の青い花との距離八間(約15m)をたった三歩で原色の入り混じった着流しをなびかせ跳び飛んだ


三歩目の跳躍の間にスミトモは

客を出迎えるように出入り口付近に高さ三尺(約90cm)の台に置かれた

二頭の金色に塗られた狛犬が口に咥える黄色い菊の花をかっさらうと

着地と同時に大輪の青い花にそっと差し出した


「トバ スミトモ

人は私をそう呼びます

海運業を営んでおります

どうか記憶の片隅にでも…」


微笑む大輪の青い花は声を上げて笑った


「あはは あはは あはは

全然違う!

アキヨリから聞き思い描いたのと全然違う!

最近では海賊を海運業と言うのかえ?

あはは あはは」


「はて アキヨリ?海賊?何の事やら」


「朕は胸踊らせていたのだがな

何の後ろ盾も無く海を疾駆し支配する海賊とはさぞかし勇壮な男なのだろうなとな」


「弁天さんの言う通りだよ!

この世で一番勇敢なのは海賊だよ

そんで海賊の中で一番勇敢な男がこのトバ スミトモよ

近頃巷じゃスミトモと書いて海賊と読むよ!」


スミトモの浅黒い肌に白い歯が光る


「あはは あはは

調子の良い

しかし思い描いていたのと寸分違わぬ

オオクニヌシであ よしなに頼むぞえ」


オオクニヌシは菊の花を指でつまみ受け取った


「しかし弁天さんがアキヨリの知り合いだったとは恥かいたよ

しかしアキヨリはまだ帰らないのかよ」


「あの…スミトモ俺はここに…」


「まあいいや

俺とした事がみっともなかったよ

俺の事良く知っててくれるなら話が早いよ

そこいらのシケた大名なんかよりいい暮らしさせてやる

欲しい物は全部手に入れてやる

俺と夫婦(めおと)になってくれ」


「おおおい!ちょっと待て!」


割って入ろうとしたギンザブロウが自分の右足に左足が躓きスミトモの腹に頭突きする形で止まった

微動だにせず言うはスミトモ


「なんだよギンザブロウ

人の恋路を邪魔するなよ

もしかしてギンザブロウも弁天さんに惚れたかよ

けれども非常識じゃないかよ

ギンザブロウにはカミさんも御妾さんも大勢いるだろうよ」


「むううう!

身も蓋もねえ事を言いやがって

このクソ海賊!

この姫様はやんごとなき御身分なんだ

いきなり求婚するなんざ非常識はおめえの方だ

今すぐ取り下げろ!」


「そりゃ聞けない相談よ!

俺の一族の掟じゃ菊の花を捧げた女を娶らないと岩に縛り付けられて海に放り込まれるよ」


「いいかげんな事言いやがって

そんな掟あるもんか!

今考えたろ!」


「その通りよ掟なんてそんなもんよ

身分や人の決めたもんなんかで女を幸せになんか出来ないよ

女を幸せにするのは銭と心意気よ!」


「屁理屈ばっかりこねやがって

こうなりゃどっちが姫様に相応しいか勝負だ!」


「おう望むところよ!」


ギンザブロウとスミトモの額がぶつかり合い火花が散った

散った様に見えた


「ギンザブロウ!スミトモ!」


「へい!」


「はいぃ!」


威厳と怒気をはらんだ声に名を呼ばれ二人は子供の様に返事をして

背を丸め少し飛び跳ねて

ビクビクと声の主を見やった


「飲むぞえ 席に案内しろ ほれ早よう」


声の主オオクニヌシは先程の春風とは打って変わり毒々しく微笑んだ


「へい!只今!」


「はいぃ!今すぐ!」


大工と海賊に手を引かれオオクニヌシは店の奥にある特別席へと狛犬の間を通り進んで行った

狛犬の台にはカタカナで(シーサー)と書かれていた



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