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六角の花   作者: フミ
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263/788

つっかえ棒

(かつてない広さの柱の無い大広間の建造物を建てる)

その依頼をワシノミヤ組率いるウジガワ ギンザブロウが請けたのは五年程前だった

依頼主はミクリヤ ニザエモン


「能楽だの最近流行りの歌舞伎だの

町人 職人の皆さんで楽しんで頂く

この町の象徴と言える建物を普請して頂きたい

武士だの公家だのが腰を抜かす様な規模で

あまり目をつけられない様に見た目は威張り腐っていないのがよろしいですな」


だが問題が一つ

元々材木問屋であったミクリ屋であるが

戦火により荒廃した都の神社仏閣に主だった材木は使われ端材の様な材木しか残ってはいなかった

柱の無い大広間に必要な高い強度の梁を構築するにはそれに見合った材木が必要である

非常に困難な依頼といえた


「要は頭の使いようでござんす

木ってのは組み方次第で石より頑丈に鳥の尾羽よりしなやかになるんでさぁ」


百坪はあるその石より頑丈で鳥の尾羽よりしなやかな建造物は

落成式の直後からミシミシ音を立てゆっくりと広間の中心が鳥の尾羽の様に地上へと降りて行った


「申し訳ねえ旦那こんな筈はねえんでさぁ!

おめえらつっかえ棒だ!つっかえ棒持って来い!」


「なりません!

つっかえ棒などつっかえに行ったら

一つ間違えばぺっちゃんこですぞ

しかしどうしたものか」


「全部おいらの責任でござんす

このぺっちゃんこ買取らせてくだせえ」


「そう!それが一番!」


破格の安さで土地とぺっちゃんこを買い取ったギンザブロウは数十箇所のつっかえ棒を施し

(リュウキュウ屋)と銘打ち職人達が集い憩い喧嘩する大衆酒場とした

店の名前にはもう一つ候補があった

直ぐに却下されたその名前の発案者はギンザブロウの義弟ハンシロウ

ガラは悪いが古今東西の建造物に精通するハンシロウが言うには


「こんだけ柱のある建物は古今東西ギリシアのパルテノン神殿くらいでやんすねぇ

店の名前パルテノン屋ってのはどうでやんすか?」


「うるせえ!南国気分が味わえるリュウキュウ屋だつったろうが!」


南国気分を味わいに最近では坂東武者や海賊達の姿も頻繁に見掛けられる

今夜も店主と海賊が肩を並べ酒を飲む


「ギンザブロウは南蛮人共のガレオン船も造れるかよ?」


「造れるぜ

船はおいらの専門じゃ無えが

おいらの組には凄腕の船大工が多勢いるし

実は座礁した南蛮船からこっそり図面を取ってあるんでぇ」


「そりゃ凄えよ!

ナリカワをぶっ潰して銭をたんまり貰ったなら俺に一隻造ってくれよ」


「構わねえがスミトモさん

そんなでけえ船何に使うんで?

日の本近海じゃ水深が浅くて船底が深く水ん中に潜り込むガレオン船は使い物にならねえんじゃ?」


「貿易よ貿易!

印度 欧州を股に掛ける貿易よ

南蛮人に出来て俺に出来ない訳無いよ」


「海賊稼業からは足を洗うんで?」


「もうすぐ乱世は終わるよ

海賊なんか生きてく隙間無くなるよ

戦が終わってから身の振り方考えてたら遅いってスンポウよ」


「そうなりゃ本当にいいんだが

戦の無え世の中か…」


ギンザブロウがしみじみ杯の酒を見つめ

ある意味乱世の犠牲者となった兄ギンジロウの顔を思い浮かべた時だった


「戦じゃ!戦じゃ!」


開戦を告げる声が響き渡り店の扉が開いた


「遠からんものは音にも聞け

近くば寄って目にも見よ!

我こそはイズモの大王オオクニヌシノミコトであ!

見参!見参!」


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