逢引
「大王申し訳ありませぬ」
バツが悪そうにアキヨリは
去って行く皆の背中に目をやりながらオオクニヌシと視線を交わすことに無く謝罪した
「何がだ?」
なぜかオオクニヌシの言葉は弾んだ音色をはらんでいた
「ジョスイとドウゼンに大王を紹介させて頂かねばならぬのが礼儀
なのにあいつらの脳味噌は自分にとって好ましい刺激を受けると
はしゃぎまわって他の事が目に入らなくなるのです
あっ…
さっきの助兵衛な髭に乱痴気騒ぎのような身なりの男がサナガ ジョスイ
針金を頭から生やした男がサカキバラ ドウゼンです」
「あははっあははっ
乱痴気騒ぎに針金とな
ジョスイは見知っておるよ幼き頃よりな
もっとも彼奴は朕の存在を感じた事は無かろうがな
ドウゼンとは如何なる縁か?
只者ではないのは一目瞭然ではあるが」
「何と!ジョスイを御存知でしたか
大王はホウライ山地下深くにありながら
どれだけの事柄を感じ取れるのですか?」
「ふふ
大したものでは無いぞ
ジョスイは朕と因縁のある一族の出自であるし
世に大きく影響する者は生まれ出でし時より光を放つが如く嫌でも目に入って来おる
それよりドウゼンの話を聞かせろ」
「ジョスイが光を放つですか…
俺はどうだったのです!?
大王は俺をどう感じていてくれたのです!?」
「先ずは朕の問いに答えぬか
まあよい
お前の場合 光を放っていたかどうかなど論ずるまでも無い
朕は生まれる前よりお前を知っていた」
「何と!
生まれる前よりとは一体どういった!?
んごっ!」
焦りにも似た好奇心に突き動かされアキヨリはオオクニヌシを振り返りその視線を探そうとしたが
それはすぐ目の前にあり茶筅髷を上に引っ張られる様に顔を引きつらざるを得ない
「ドウゼンの話!
いつ迄もここに突っ立っていても仕方ない
家人と子息の所に行くのであろう?
道すがら聞かせろ
ほら行くぞ」
オオクニヌシはアキヨリの腕を掴み馬を引いて歩く様に歩み出した
「大王お待ち下され!
道を知っている俺が引かれていたらいつになっても辿り着けませぬ」
「もっともであ ならばこうだな」
オオクニヌシはアキヨリの腕を離さぬまま半歩下がって歩み始めた
「大王!お待ち下され!
これではまるであれだ!
その…あれだ!」
「いいからドウゼンの話
朕が催促するのはこれで何度目であ!?」
「はっ!ははっ!
ドウゼンとはあのあれだ
シジマ家がイセの国攻略の折
我等と対峙する大名セイゲンジ家に雇われたのがドウゼン達ヤツガサト衆だったのです
斬新で緻密に練られた砲術戦術で俺達は苦戦に次ぐ苦戦
散々に辛酸を舐めさせられました」
「ふぅーん」
「聞いておられますか!?」
「聞いておるよーん」




