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六角の花   作者: フミ
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行ってみよう やってみよう

帆柱を下りたドウゼンは今度は関船に積まれた俵の上に立った

そして気を取り直す為か一つ大きく息を吸って

右足で力強く俵を踏みしめた

俵の中身が小石がこすれ合う様な音を立てた


「手土産と言ってはなんだが火薬の原料である硝石を持参したぁ!

お前等はどうせ舶来物に頼り無駄な金ばかり使っておるのであろぅ

我等ヤツガサト衆は硝石を独自の製法で精製しておる

ナリカワ勢一匹残らず撃ち抜くには充分な量であろぅ

感謝するが良いシジマ アキヨリ!」


ドウゼンは一旦後ろを振り返り

ヤマアラシの様な逆立つ髪と僧兵の纏う裳付衣をなびかせ

自分に感謝と尊敬の眼差しを向けているだろうアキヨリに見得を切った


だがいなかった

アキヨリが居たはずの船縁には

這って歩むダンザの(百発億中)と刺繍された陣羽織の背中と尻が見えるだけだった


再びのドウゼンの啖呵の最中アキヨリは未だ接舷し終えていない船から桟橋との十尺程の距離を軽々と飛び越え桟橋へと着地していたのだ


その様子にドウゼンはヤマアラシの様な髪を更にヤマアラシとした


「聞いているのか!?

シジマ アキヨリ!!」


ドウゼンも硝石の入った俵を蹴り桟橋へと宙に身を踊らせた


「ありがとう!聞いているよ!」


ドウゼンの着地地点には不意に両腕を広げたアキヨリが立ち

図らずもドウゼンはアキヨリの腕の中にすっぽりはまる形になった


「う、うん」


ドウゼンは俯いた

俯くヤマアラシにアキヨリが声を潜め問う


「やはり親父殿は来てはくれないか

もしや親父殿と仲違いしてまで来てくれたのかドウゼン」


ドウゼンは鋭い眼差しを取り戻し答える


「案ずるなシジマ アキヨリ

我らヤツガサト衆はろくな領地も持たぬ鉄砲の技だけが頼りの雇われ者

長いものに巻かれるも道理

寡兵に味方して契約に殉じるも道理


戦になれば親父はナリカワつく

俺は一か八かのお前について

いつかの恩を返すばかりでなく大恩を売る

どちらに転んでもヤツガサトは安泰だ

もっとも表立っては迷惑がっていたが

手を貸してくれと訪ねて来たお前と共に戦いたかったのは親父だがな」


「ならば負い目は捨て謝意だけを受け取ってもらう」


アキヨリは深々と頭を下げた


「そこまで感謝するまでもない

俺の他にはたった六十八名だ

家族共々 陸路こちらに向かっている

いずれも大食らいだ腹を空かさせてくれるなよ

シジマ アキヨリ!」


「案ずるなドウゼン

米ならニザエモン殿の蔵にいくらでもある

もっとも皆売り物だがな

あっはっはっはー」


「ふははははは!」


笑みを交わしアキヨリとドウゼンは肩をぶつけ合った

二人の偉丈夫がぶつかり合う威力はお互いを軽く弾き飛ばした

その隙間に割って入る百発億中の刺繍にアキヨリは更に弾き飛ばされた


「んごっ!何だダンザ!」


「若様 不躾ですが このダンザ

ドウゼンと再び合間見えたからにはやらねばならぬ事があります

ドウゼンよ鉄砲の腕 錆び付いてはおらぬだろうな」


ドウゼンのつり上がった口角が答える


「なるほど何があったかは知らぬが間近で見ると一段と武者振りを上げたようだが

やっと俺の足元までといったところか

アンドウ ダンザ!」


「ふんっ!

その一丁前の減らず口を弾丸の代わりに砲身に籠められるならお前に勝ち目もあろうが

口で語るより俺達にはこれだろうが」


ダンザは愛銃を真一文字に突き出すとドウゼンと肩を組み


「おあつらえ向きの場所がある行くぞ!」


そう言って射撃演習場を兼ねる貯水池建設現場へと歩んで行った


「ほんと仲がいいなあいつら

ははっ!ダンザの奴船酔いでまだ足元ふらついてら」


二人を見送るアキヨリの背中はジョスイの呼ぶ声を受けた


「おおい!若大将!

おめえは先にヘイクロウの話を聞いて無駄に回りのいい頭をグルグル回してんだろう

おめえと一緒に報告を受けたなら後れを取ることになって癪に障る

さっきも言った通り倅と家族の顔ゆっくり拝んでから来いよ

ニザエモン殿の所にいるからよ」


ジョスイ キリュウ ヘイクロウの三人はいつの間にか小早船に乗り水路をニザエモンの屋敷へと向かって行った


桟橋にはアキヨリとオオクニヌシがぽつんぽつんと残された





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