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六角の花   作者: フミ
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安らぎ

「ううむ それで?」


アキヨリが口に出る寸前で引っ込めた


「答えになっておりませぬ」


の代わりに出た言葉がそれだった


「ヨシツネは多々良の力のみならず

尋常ではない神通力も身に付けておった

その強力な神通力で朕に語りかけてきたのだ


「一族の仇を討ちたい兄の力になりたい

強大な力を有する平家を討ち滅ぼしたい

力を貸してくれ」


とな

既に火の神どころかほぼ大地と同化していた朕は独立した意思を取り戻し目覚めた

目覚めた朕のぼやけた頭には膨張しようとする意思

すなわち火の神の今迄 見聞きした全てが流れ込んできたのだ

あまりに膨大で恐ろしくなり拒絶すると

いとも簡単に火の神と同化していた朕のこの幼稚な自我だけ吐き出されるが如く分離されたのだ


だが朕もただでは知恵を奪われたりはせぬ

朕も奪ってやったのだ火の神の力をな

その力を使い外の世界に居るヨシツネやナガヨリそしてお前達とも意思を通わせ

時折 他者に憑依してこうして現れたり出来る

そして何より以前にも増して強力になった熱を操る力により火の神の動きを封じておる」


「ヨシツネ公の願いは叶えてさしあげたのですか?

いや大王は叶えてはいない

ヨシツネ公は火の神が大王の声色を使い謀られたと言っていた

力を貸したのは火の神だ

火の神はヨシツネ公に力を貸す代わりに利用しようとしていたのですな」


「そうだえ

その様な力を持つなら自分でやれと言ってやった

朕は既に過去の存在であるとな

そして眠ってしまった

人の世になど興味は無かったのだ


その後の経緯は大まかに知っておるだろう

詳しく知りたければヨシツネ本人に聞け

またまみえる機会があるであろう」


「人の世に関心の無くなった大王が何故これ程までに俺を導き力添え下さるのです

俺はずっと以前より大王の存在を感じていました

最初の問いをもう一度答えて頂きます

我が無二の友 タガ カゲナリすなわちタキを与太郎に憑依させ

蘇らせてくれたのはそなたですな!」


「ううむ

言うなと釘をさされたがな…


朕の心を変えたのは先ずはヨシツネとナガヨリの愛する者そして民を思いやる心に打たれたのが一つ

そして朕に真の意味で人の心を取り戻してくれたのは

お前の友タキであ


ジョスイとやらに敗れたお前は

吹雪に見舞われ更に火の神に誘われ間欠泉の洞窟へと逃れたな

あの時火山の毒により意識を失ったお前に火の神が忍び寄ったのだ

他者に憑依する力は相手の意識が薄弱でないと成り立たぬのは何となく分かっておろう

火の神にとっては絶好の好機であったであろう

朕もお前を必死に探したが火の神に一歩先を越された

その火の神の前に立ちはだかったのは既に死せる肉体を魂のみで立ち上がらせたタキであった

タキの渾身の気魄に恐れをなした火の神はお前に憑依するどころか近づく事さえ叶わなかったのだ


やっとお前を探し当て駆け付けた朕の意識はその様子に胸打たれた

だが力を使い果たしたのかタキの魂自体が消え行こうとしていたのだ

魂だけの存在であるようなものである朕は一か八かタキの魂と同化して消失を食い止めようとした

呆気なく上手く行き安堵しているとタキが語りかけてきたのだ


「八幡菩薩でありましょうか

はたまたシジマ家の守護神てありましょうか

誠にかたじけない

救って頂いた上に厚かましく存ずるが

このまま三途を渡るのは無念でなりませぬ

たった一度

たった一度だけこのカゲナリにアキヨリ様の危機を救う力を与えては下さらぬか」


後は察しろ

そして安心しろ

今タキの魂は安らかな状態で穏やかな場所でお前を見守っておる」


「ありがたい…

しかし俺は礼の言葉一つ労いの言葉一つかけてやれなんだ」


「案ずるな伝わり過ぎる程伝わっておる」


「大王っ!…」


「案ずるな朕にも伝わっておる」


右手で己の額を鷲掴みしたアキヨリはオオクニヌシの粋により更に口を開く事を免れ

無様に己の中身を吐き出す事を免れ

タキの安らぎを守り通した


既に昇り始めた朝日の中 船を追う影が一つ

人目を避け共に乗船せず海上での合流を命じていたリヨウだった



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