猜疑心
「その国を追われた者達がイズモを滅ぼしたのですな
そしてヤマトを建国した…
すると我等ヤマトの民の祖先は渡来人であったのですか?!
いや おかしい大王の話ではまだイズモの国さえ出来てはいない
そうか渡来人に対抗する為 大王の父君達 集落の族長が…」
ゴチン!
オオクニヌシの拳骨がアキヨリの脳天に垂直落下した
「痛え!
何をなさるか!」
「全く察しが良すぎる者に話して聞かせるのは
先を読まれてしまうのではないかと気が気ではない
よいから黙って聞け
大陸の民とは元々交流はあったのだ
国を追われたその者達を不憫と思い集落の多くは受け入れた
朕の集落にも百余名がやって来て共に暮らすことになった
怪我をした者も多くいたので朕が治療し
朕も彼等の持って来た竹簡に詩経をみつけ心を奪われた
彼等は様々な文化や優れた技術をもたらしてくれた
そうして我等は同じ大地に抱かれる民となり
両者の境界線は朧になりつつあった
しかしそれは何事も無く日々が続くことが前提だった
戦火をくぐり追手に追われ
永い間命を危機にさらし続けた渡来人達は異常な程疑り深かったのだ
些細な事で集落を追い出されるのではないかなどと一度騒ぎ出すと手が付けられなくなり
その度 父がなだめて事を収めたが
ある時渡来人の子供が集落の外れ崖の下で遺体で見つかった
朧気だった境界線は亀裂になった
彼等は米倉に朕を人質にして立て篭もり
子供を殺した者を探し差し出せと要求した
朕は覚悟を決め朕の命と引き換えに事を収め
元の様に皆で暮らそうと懇願した
朕も愚かであったな
人質に取られた朕が死んだとなれば両者共にお互いの血を以って引き際とせねばならなくなるなど考えもせなんだ」
「戦となったのですか?!
いや待てよ…痛え!」
アキヨリの頬をオオクニヌシのてがつねる
「だあまあれえ
申し出てくれたのだ
死んだ子供の兄が兄弟喧嘩の末に弟を崖に突き落としてしまったのだと
翌朝渡来人達は集落を去って行った
そうした悲劇は各地であったのだろうな
そうした者達や始めから受け入れられなかった者達が
何かに導かれるように集まり集落となり国となった
それがヤマトの国であ」




