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六角の花   作者: フミ
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いつか必ず

米俵の寝床に来てから目を合わせずにいたアキヨリは

上半身を起してヘイクロウの目を見て言う


「まだそうと決まった訳ではない

俺の故郷でも麻は栽培されていたが

精神を狂わす成分を含んだ麻は見た事が無いから俺にははっきり判別は出来ん

当て推量で騒ぎ立てたすまん」


「いや アキヨリ殿の申される通りで御座る

拙者がシミズの家を出奔しジョスイ殿に誘われサカイの町にやって来て初めての仕事で

空き家となった武家屋敷に巣食った半端者共を退治いたした折に彼奴等の吸っておった煙草の匂いと

あの娘の煙草の匂い同じで御座った」


「その半端者とは今はジョスイの手下で

武家屋敷とは今のジョスイの根城か?」


「その通りで御座る

あの阿呆共サカイを訪れる南蛮人から例の煙草を手に入れたようで

拙者等に懲らしめられてからも中々改めようとしない故

やめられぬならそれでも一向に構わぬ

しかし一本につき拙者の拳骨一発を見舞ってやることにいたしたらやっと改め申した

しかし阿呆 半端者は拙者も同じ…」


「なぜそんなことを言うか

そなた程に勤勉 実直な者は今迄出会った事は無い

己を偽らずその様に生きることは困難を伴う

そなたにはその困難に打ち勝つ実力があるのだぞ」


「拙者には過ぎたる御言葉

勿体のう御座る

しかし拙者 困難に背を向け己を偽わりもうした

娘に救われた事キリュウとアンドウの前でどうしても話せなんだ

二人に負けるのが恐ろしかった

軟弱者と思われるのが恐ろしかったので御座る」


「何を言うか

ダンザもキリュウもそなたの完璧な仕事ぶりに感心していたではないか

偶然その娘に助けられずとも

そなたなら何らかの手段を用いて危機を脱したに違い無い

腕を折りながら帰還したトミナリ城での事が証明している」


「あの時あの場所に居合わせたなら

キリュウ アンドウならいかがいたしたで御座ろう!

きっと遮る者共を打ち破り娘を助け出したに違い無い!

拙者は一目散に逃げ申した!」


「そんな筈は無いだろう

オオトモにとって南蛮人の隠れ里は外部には知られてはならぬ

潜入した痕跡を残せは何らかの対策を打つはずだ

我等は後手に回る羽目となる

そなたの判断は正しかったのだ

ダンザやキリュウとて騒ぎ立てたりなどしない筈だ」


「アキヨリ殿ならいかがいたした

奇策に奇策を重ねあの隠れ里を壊滅し

物として扱われる娘達や南方の民を救い出したで御座ろう!」


「買いかぶるな

俺はその様な聖人君子では無い!

同時にその様な迂闊な者でも無い

隠れ里一つ潰したところで根本を正さねば第二第三の犠牲者を生むだけだ

ヘイクロウよ何故それ程まで己を蔑むか?!」


「助けてやると笑った娘の顔は泣いているように拙者には見え申した!

助けてくれと泣いているように見え申した!!

オウミの旋風と百発億中の鉄砲名人と名を馳せた二人を好敵手とし

生家を頼りとせずいっぱしの侍と肩で風切る拙者で御座るが

小娘一人救い出す力が御座らん!!」


「ああ 俺達は無力だ

領地も無ければ何の権威も無い

只の野伏の様なものだ」


「何を申される!

無力と申したはあくまで拙者自身の事で御座る

アキヨリ殿には天下に轟く武名と

アキヨリ殿を主と仰ぐ者 命を預けるに相応しい友とする猛者が数多おられる

領地や権威などより意味のあるもので御座る!」


「そなたを助けた娘を救う力

それ即ち今直ぐ万の兵を率いて鎮西チクゴに攻め入る力だぞ!

我等にはそんな力は無い!

娘一人救い出すなど他愛ないなどと思い上がるな!

娘一人救い出す力すら無いと己を蔑むな!

我等には地の果てまで行ける足と

困難に打ち勝つ強い精神と

対策を生み出す知恵それを実現する両の腕がある

そして心同じくする仲間がいる!

今では無い!」


「はっ!!

肝に銘じまする!」


「だが必ずだ!!」


「ははっ!!」




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