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六角の花   作者: フミ
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238/788

仇の正体

「うおおおおおお!!」


その雄叫びはダンザのものであった

炸裂するが如く発せられた雄叫びに一同たじろぎ仰け反ったが

一人アキヨリだけは西の空に向けた視線を一直線に向け雄叫びに応えた

その視線にダンザも応える


「僥倖ですぞ!!

未だ確たる証は無いが若様の目算通りで御座ろう

異国の侵略の片棒を担ぎ人を人も思わぬその所業 断じて許せんが

我等にとってはアキマサ様並びにシジマ家の同胞達の漠然として捉えられずにいた仇の正体がはっきり見えたのだ!

これを僥倖と呼ばずになんといたす!!」


アキヨリは力強く頷く


「そうだダンザ!

兄上の聖戦に参じる事叶わなかった我等取り残された者に汚名を晴らす機会が与えらたのだ!

だが今の我等には力が無い

今は臥薪嘗胆の時と耐え忍び サカイの地にてナリカワを打ち破ることに専念するのだ

戦いを有利に運び彼奴等を窮地に追い込んだなら

ナリカワと繋がるオオトモとイスパニアの水軍が現れぬとも限らん

いや必ず引き摺り出してやる!

その時こそ彼奴等のそっ首根こそぎかっ切ってやろうぞ!!」


アキヨリとダンザは胸を張るだけ張り ド突き合わせた

そこに割って入るはキリュウ


「俺もやるぜ!

今となっては俺もシジマ家家臣

いやアキヨリ殿の家臣だ!」


三人の肩はガツガツと数回ぶつかり合わされた

ヘイクロウも加わって来ると高を括り

彼の為の隙間を用意していたキリュウだったが

ヘイクロウは力無くへたり込むように座ったままだった


「おいヘイクロウどうしたんだよ

おめえもやれよ

アキヨリ殿もダンザも遠慮するような仲じゃねえだろう」


「あっ、ああ

そうであるな…

キリュウよ念願叶ってアキヨリ殿への仕官聞き入れて頂いたのだな…」


「おう!ありがとよ

おめえにアキヨリ殿んとこ行きてえって打ち明けた時は快諾してもらったよな

しかしなんだよ いいとこ見せたし大手柄じゃねえかよ

何でそんなに元気ねえんだ?」


「何でもないのだ

見聞きしたこと聞いてもらって

張り切って荷を積んだ疲れを今になって自覚したのだ

アキヨリ殿 アンドウ 御婦人殿 拙者は先に休ませて頂く

では今宵はこれにて失礼」


ヘイクロウはおずおずと立ち上がり

寝床と決めていた積荷の間へと姿を消した


「なんだぁ?

よっぽど疲れたみてえだな」


とキリュウ


「怪我や体調を崩したのではあるまいか?」


とダンザ


「いや その心配は無いようだ

だが何の心配も無いと言う訳では無いようだな

ダンザ キリュウ 大王

ヘイクロウの事はこのアキヨリに任せて休むといい

此度の旅においては二人共 八面六臂 獅子奮迅の活躍

改めて礼を言わせて貰う

ありがとう」


アキヨリは深々と頭を下げた


「我等は家臣でごさいます故当たり前の事をしたまで

それにそこ迄なされては我等の立場が無い」


苦々しさに喜の感情を滲ませるダンザにキリュウが言う


「嬉しいなら嬉しいって言えよ

俺は嬉しいぜ

アキヨリ殿ヘイクロウの事はお頼みいたすぜ

そいじゃ行くぞダンザ!」


「風通しのいいとこだぞ

若様それでは」


ダンザとキリュウも去り後にはアキヨリとオオクニヌシが残った


「大王も休まれては?」


「むくつけき船乗りの中に女人を一人きりにするつもりかえ?」


「そうで御座った

ヘイクロウからは見えない所でお待ち下されよ

さて参りますか」


負の理由で一人になりたがる者は力尽くでも一人にしない

幾つかあるアキヨリの信念の一つが彼を積荷の隙間に誘った


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