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六角の花   作者: フミ
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235/788

ヘイクロウで御座る

「ほほう!大きな町だなあ

アキヨリここがサカイか?」


馬上のオオクニヌシが手綱を握るアキヨリの肩に頭を乗せて言った

街道の先に無数の街明かりが見える

一行は進路を東に向かい三日目の夜を迎えていた


「ビゼン国のオカヤマだとさっきも申しました

何度言ったら分かるのです」


「アキヨリお前も何度申したら分かるのだ

朕は直ぐ忘れるのだ」


「御自身の名前だけではないのですな

ここの港から船に乗るのは覚えておいでか?」


「うむ 覚えておるぞ

船旅など久方ぶりなのだ楽しみでならん」


「一体何年ぶりなのか拙者には見当がつきませぬ


しかし大王はどうと言う話しかしないな

わざわざついて来たのは大事な話があるからなのではなかったのか」


「何か申したか?」


「いや…

それより大王 見えて参りましたぞ」


などと他愛もなく言葉を交わす内に港町にあるミクリヤの船員達が使う詰所に辿り着いた

日の本中の主立った港町にはサカイ商人の詰所があり

船員が寝泊まりに使う他 船の便の管理もしていた


「こんばんは アキヨリですう

皆様お疲れ様ですなぁ」


詰所の出入り口の引き戸を開けると台帳に向かっていた番頭が顔を上げ戯けたアキヨリを見て笑みを漏らした


「あいやアキヨリ様ではございませんか

ダンザ様にキリュウ様まで

こちらの御婦人は?

はあ 大王様…

深く追求するなという事でしょうか

ともあれ如何なさいましたアキの国ではなかったのではございませんか?

しかし商人言葉がいつになってもぎこちない

何か馬鹿にされてる様で腹立ちますわ」


「すまん すまん 悪気は無いのだ

実はホウライ山で騒ぎを起こしてな

トミナリ城下が物騒になったので陸路ここ迄来たのだ

次のサカイ行きの便はいつになるかな?」


「間も無くかと思いますがその…」


「んっ?

とっくに日は落ちたと言うのに船を出すのか?」


「それがヘイクロウ様が今直ぐ出せと言ってきかないのですわ

アキヨリ様は如何なさいます?

お疲れでしょうから一晩お休みになったら如何で?

明日の昼イヨの国からの船が寄港する予定でございますが」


「ヘイクロウが来ているのか?!

確かチクゴ国のオオトモを探りに鎮西に行っていたな

さては何か掴んだな

今どこにいる?」


「桟橋に行けばお会いになれます

モジの港からヘイクロウ様が便乗なさった船は

この港で荷を積んでサカイに帰港する予定でして

明日の夕刻までお待ち頂くよう申し上げたのですが

一刻も早くサカイに行かねばならぬ

荷を積めば出港出来るなら一人でやる

自分の勝手な事情で船員達の手を煩わす訳には行かんと仰られて

それはもう物凄い勢いで積荷を積み始めたのです

そんな事ですから船員総出でお手伝いしております

ヘイクロウ様のような実直な方を一人で働かせてはミクリヤの名折れでございますから」


「いかにもヘイクロウだ

俺達もからかいに行こう

出港の準備が出来次第

俺達も乗せてもらうから ここには戻らん

世話になった

回り番でサカイに戻ったなら又よろしくな」


「はい 道中 御無事でごさいますよう」


アキヨリ達が桟橋に着くと最後の積荷を今まさに載せようというところだった

キリュウがその最後の積荷に話し掛ける


「おい ヘイクロウ大丈夫かよ?!」


最後の積荷は二人の船員に両脇と足を持たれ運ばれるシミズ ヘイクロウであった


「おお!!キリュウではないか!

それにアキヨリ殿にアンドウ!

これは天のお導きか?!

なぁに大丈夫だ!

少し張り切り過ぎただけだ」


意外に元気なヘイクロウにキリュウが顔を歪めて

やれやれといった笑顔を見せた

するとアキヨリがヘイクロウの側に進み出たかと思うと

素早い動作で船員からヘイクロウを奪い背負って声を潜め言う


「お疲れさん

天の導きと言ったな

一人では抱えきれん程の何かを掴んだな

俺達もサカイに戻る

船上で聞かせてくれるな」


「アキヨリ殿に背負って頂くとは恐縮で御座る!

早く聞いて下され矢も盾もたまらんので御座る」


最後の積荷を積み終え船が出港すると

アキヨリ達は舳先に腰を下ろしヘイクロウを囲んだ

船室など風の無い所に行くとダンザが船酔いして激しく嘔吐するからだ


「早速聞かせてくれヘイクロウ」


「はっ

ですがその御婦人は?」


「ああ俺の義父ゴクラクサイの古い友人だ

それに直ぐに何でも忘れてしまうお方故 問題無い」


「うむ苦しゅうない

朕が聞いてもおそらく分かる話ではあるまい

だがそなたらの熱に触れて居たいのだ」


「ははっ やんごとなき身の上のお方と存じまする

余計な詮索お許し下され

ならば早速!

拙者がオオトモを探りに赴いた理由はジョスイ殿の一つの懸念に端を発するもので御座る

その懸念とは先のイスパニアとアキマサ殿の大戦においての

イスパニアが動員した二万という大軍で御座る

彼奴等は我等と同じ人種では無く

印度や南海に住む者達であったとのこと

彼奴等の住む地より二万の軍勢を運ぶには何十隻という船団が必要で御座る

しかしイワヤの港に現れたイスパニアの軍艦は八隻

後は子早船や安宅船の和船が数十隻

とても大海を渡って来たとは思えぬ

琉球なり近海に彼奴等の駐屯地が有るに違い無い

そう考えたジョスイ殿は生き残った彼奴等の兵を尋問して駐屯地を突き止めようとしたが

ナリカワに敗れほうほうの体で鎮西のオオトモを頼り落ち延びたとの事

ところがオオトモは既にナリカワと繋がっていて

さらにほうほうの体で難破してニザエモン殿に拾われ…」


バチン!


アキヨリが自らの膝を平手打ちした


「繋がったぞ!

彼奴等の駐屯地このアキヨリには見当がついた!」




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