行くべき道は心が示す
アキヨリの体が弓なりに反り返り
右足を振り上げ振り下ろす
裸足の足の指は上に反り返り
上足底という足の裏の指の付け根で赤黒い破片を次々に蹴り飛ばしている
破片は弾丸の如く一直線に遥か彼方へ飛び去って行く
「くそっ!
頭に血が上って神聖な場所を穢してしまった
このまま溶けずに居座られたら
たまったものではない
ところでキリュウよ」
「えっ?あ?なんですかい?」
考え事などという慣れない作業の真っ最中だったキリュウは豆鉄砲を食らった
「どうしたらいいかでは無い!
どうしたいかだ!
お前はどうしたいんだ」
キリュウの顔のよじれが元に戻っていく
「どうしたいかか…
それなら分かるぜ!
自分の気持ちだもんな
本当はどうしたいのか義母上さんに聞きてえ!
どうしても言わねえって言うなら
とっちめ上げて
火の神やらしきたりなんかが邪魔して思うように出来ねえって言うなら
火の神だろうがしきたりだろうが俺の槍でぶっ潰してやる!」
「その前に俺の鉄砲がぶち抜く!」
アキヨリの両腕が大きく広げられキリュウとダンザの肩を力強く掴む
「巻き込んでしまって申し訳ない
とはもう言わん!
義母上を救いたい
リッカを救いたい
大王の話ではあと数年でホウライ山の大規模な噴火があり
もう御山の守人の力でも避けられ無いとの事だ
この国を守りたい!
俺達は同じ時代に尋常で無い力を授けられ生まれ巡り会った
そして成し遂げるべき使命を授けられた
命がけの使命だ
この三人の中で命を落す者もいるだろう
だが言う!
力を貸してくれ!
俺に命を預けてくれ!」
「元よりこのダンザの命若様に預けております!
鉄砲隊に配属されてから常に若様の盾となり付き従うタキが羨ましくて仕方なかった
やっと!やっとこのダンザにも申して下さったな!
若様の背負われた宿命 重責 俺にも分けてくださるのですな!!」
「おう!!
俺が今日の今日まで生き永らえた意味がやっと分かった気がするぜ!
きっと俺一人だったら縮み上がっちまう程 立ち向かうにもおっかねえし
立ち向かって失敗することを考えるのも
おっかなくて仕方ねえ
だがアキヨリ殿あんたに付き従うなら
ダンザおめえと力を合わせるなら
ちっともおっかなくなんか無え!!
君臣の契をくれた時から俺はあんたの槍になったんだ
あんたの下知に従って折れようが砕けようが本望だ
俺の命あんたに預けた!!」
熱かった
多々良の守人であるアキヨリは危機的な熱さなど今迄感じた事は無かった
だがダンザとキリュウの肩を掴んだ手は滾りに滾りかえる熱を感じていた
「そなたらの忠誠そして決意確かに受け取った!
全ての備えが整った後
かの地にて我等の武のことごとく天に地に轟かせるぞ!」
アキヨリが指差すホウライ山の東には切り立った断崖や谷が連続する
「そこにあるのですな
我等の辿り着くべき場所が
討ち倒すべき因縁が!」
「そうだ!
断崖や谷など無い
あるのは火口を取り巻く鉄の高い塀と巨大な四本の塔だ!
残念だが塀に遮られ中の様子は見えん
祭壇ということだが堅牢な城だ!」
「俺の目には見えねえが
燃えてきたぜええ!!」
東の空を睨む二人を頼もしく暫く見つめると
アキヨリはゴクラクサイの墓標から三歩程はなれた所に穴を掘った
そして懐から手縫いに包まれたヨシツネの分身の首をそこに埋葬した
「馬小屋が燃え残っていた
今夜はそこで夜を明かそう」
ゴクラクサイの墓標に桔梗を一輪供えるとアキヨリ達は高台を下りて行った
夕日は既に西の山脈に沈みアキヨリ達の旅を締めくくり
迫り来る夜の闇は労うように早く休めと急かしていた




