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六角の花   作者: フミ
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ねじれて問え

ガダッ!


正座の状態のアキヨリが右肘から先を平行に床に突き跪いた

詫びているのでも無く敬意を表している訳でも無い


「うおおおおおおおおお!」


幾多の困難を乗り越えて来た

数々の葛藤を飲み込んで来た

だがオオクニヌシの激白は

齢二十二になったばかりの若者が一度に受け入れられるものでは無く

己が器からこぼれ溢れた何かを吐き出すのに跪いた格好は最適な姿勢だった


「アキヨリよう…」


ゴクラクサイが膝で歩きアキヨリに寄り添い背中に手を置こうとした


「義父上ぇ!」


手は嗚咽混じりの声に弾かれた


「何だえ?!」


「何故今まで教えてくれなかったああああ!」


「すまん…」


「何故こんなに過酷な憂き目に会いながら

俺にはずっと笑顔しか見せてくれなかった!」


「すまん…」


「悔しいかアキヨリよ」


叱咤する様なそれでいて包み込む様な

この小屋にいる人物の誰にも思い当たらない声に

アキヨリは背中をつままれ顔を上げざるを得なかった

そして見た


「大王!」


その声はオオクニヌシだった


「ナガヨリがお前に全て打ち明け無かったのは

お前を巻き込みたくは無かったが故

と同時にお前に力が無かったからだ」


「大王ちょっと待てよう」


「ナガヨリ少し黙っておれ

お前が可愛がり過ぎた故にここまでの苦難をアキヨリに与えたとも言えなくは無いのだ

知っておるのとおらぬのでは対処の仕方も変わるというもの


さてアキヨリよ良く聞け

誰かを護らんとし

何かを成し遂げんとする者であるなら力無きは即ち罪悪

だが

多々良の守人としてまだまだ未熟なれど

お前は個人の武力や技よりも得難く素晴らしい力を持っておる

仲間を信じお互いを高め合い困難に打ち勝つ力だ

操られしヨシツネを退けた勇姿オオクニヌシしかと見届けたぞ

故ナガヨリよアキヨリをもう子供扱いするで無い」


「そんなのはアキヨリが子供の頃から知ってたわい

ただよ

こんなのは儂の代で終わらせたかったんだあ」


「そうは言ってもナガヨリよ

ただ単にアキヨリが可愛くて仕方なかったのであろうよ

そのような訳だアキヨリよ

ナガヨリが胸の内分かったな

いちいち腹を立てるは筋違いぞ」


「理解いたしたぁぁ!」


アキヨリは跪いたまま体をねじらせ顔を上に向けて答えた

体のねじれは彼の胸の内を表していた


「次ぃぃ!!

次の何故ぇぇ!!」


アキヨリの胸の内は疑問でねじれていた


「何故オオクニヌシそなたが火の神を封じておるのに

義母上やリッカ御山の守人はホウライ山に縛り付けられなくてはならんのだぁぁ!!」


上を向いたアキヨリの顔を上から覗き込みオオクニヌシが答える


「もっともな問いだ

朕は朕の浅はかさにより極限にまで活性化してしまった火の神

即ち火山活動を多々良の力にて溶岩の熱を外界に発散させ沈静化させておる

しかしあくまで沈静化だ

噴火を永遠に防ぐ事は出来ん

御山の守人は役目は二つ

冷の力により朕を手助けし少しでも噴火の時期を遅らせる事

発散された熱を結界に守られた祭壇に取り込み祭壇の仕掛けを作動させ

火の神より放出される呪いの原因となる瘴気を封じる事だ

朕と御山の守人両者により今の状態が保たれておる

しかしそれも後十年も保つまい」


「なんと!十年!

しかし!だがしかし理解いたしたぁぁ!

次ぃぃ!!

次の何故ぇぇ!!

何故火の神を海に解き放つことが叶えば全て丸く収まるというのに

火の神を封じていられる時間はあとわずかというのに

義母上は意固地になって古いしきたりを守ろうとするのだぁぁ!」


ゴクラクサイがアキヨリの顔を覗き込み答える


「捧げ過ぎたのだ」


「理解できませぬぅ!」


「一族の掟とこの国を守る為に

ソヤカは己の幸福とリッカの人生を捧げてしまった」


「義父上の幸福と人生もで御座いますぅ!」


「うん…

捧げたものが大き過ぎた

故に後戻りは出来んのだあ

火の神が海より放たれ万事解決するなど

大き過ぎた犠牲の意味が無くなってしまう様なものだあ

異常に恐怖を感じてしまうようになったソヤカにとってそれはどれだけ恐ろしい事だろうか…」


「理解…うう…

理解できませぬぅ!

義母上は運命より解き放たれたくは無いのですか?!

リッカやゲン達と再び暮らせるのですぞ

それがどれだけの幸福か!!」


「お前の理想の国の在り方とはどんなだ?」


「いきなり何で御座いましょう?!」


「答えよアキヨリ

儂には何と無く分かるぞえ

いつかのお前の呟き儂には聞こえたぞえ」


「うう!」


「お前はこう考えてはいまいか?

日の本は山脈や河川により人の住まう土地は区切られてしまう

国主の目の届く範囲の小さな国が点在し

小さな国同士協力し合いお互いの相違を理解し

一つの共同体となった日の本が理想とは思ってはいまいか?」


「うう!」


「言葉にするのも恐ろしかったか?

豪胆のお前が何故この様な事を恐れる?

分かるぞえ

日の本を統一しようと命懸けで取り組んで来た父や兄達や主君の尽力が意味の無いものと思えてしまうからであろう

同じだあよ

ソヤカの気持ちもそれと同じだあよ」


「うう!

理解いたしたぁぁ!」


「すまぬな辛かったか?」


「だからこそ理解いたしましたぁ!

次ぃぃ!

次の何故ぇぇ!

何故オオクニヌシそなたは火の神と同化する事など出来たのだぁ!

ヨシツネ公が火の鳥を喰ろうて火の神を封じ込めようとしていた

それと繋がりがあるのかぁぁ?!

同化するとはそういう事を言っているのかぁぁ?!

義父上!オオクニヌシ!ヨシツネ公!

片っ端から答えて下され!

体がねじ切れてしまう!!」


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