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六角の花   作者: フミ
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勢揃い

ダンザの喉の辺りに仕切りが出来たのか

胸の辺りは明らかに声を出そうとしているのは傍目からでも分かるのだが喉から上がそれを妨げている

その状態で口を数回開け閉めした後だった


「ゴゥクゥラクゥサイ様!」


やっと声になった


「なんだいシンミョウ驚き過ぎだよ

おいアキヨリよ二人にはここの事は話してないのかえ」


「普通話しませんよ

ここに来れるのは俺だけだと思っていましたし

それより義父上聞きたい事山の如しです

もちろんお聞かせしてくださいますな」


「そりゃその為に呼んだんだけどよ

二人には説明しなくていいのかい?

その前に座ろうか落ち着かんから」


アキヨリとダンザは侍らしい所作で正座すると

キリュウは空気が抜けた様にただ尻を床に置いた


「説明など構いませぬ 面倒だし」


アキヨリは話の先を急かす


「そうもいかないだろうよ

なあシンミョウ」


「いっ今はダンザエモン トキツグと名乗っております!

ああああああぅ!」


置いて行かれまいとするダンザの懸命さがおかしな呻きとなった


「ほうほう 良い名だなあ

それでダンザと呼ばれているのかあ

で キリュウ君の名は何というのかな?

あっ忘れておった

ゴクラクサイという者だよ

リッカの父つまりアキヨリの義父だよ」


キリュウの間延びした顔の真ん中が飛び出す様に引きつった


「義父上?!

ほえぇ!!

さっ先程は奥方様に失礼を!

マッ!マサナオといいやす!」


「よいよい

後々話して聞かせるがソヤカは必死なのだよ…

許してやってくれえ

しかしもう笑って済ませる訳にはいかんとこまで行ってしもうたが…」


アキヨリの膝が一つにじり前に出る


「義母上の事 承知しております

元よりこのアキヨリ義母上もお救いいたす所存

しかし先ずこの塔を義父上が建てた意義をお教え頂きたい」


「如何にも儂が建てた訳だが

その前にお前達一言詫びを入れておけ

大王が縮み上がっておるよ」


ゴクラクサイが指差す先を

アキヨリが注意して目を凝らすと

いつからそこに居たのか薄暗い部屋の隅で膝を抱える人物がいた

よくよく見ると卑屈な姿勢に似合わね古代の王族かと思われる立派な出で立ちである


「大王?!

もっもしや我等が散々怒鳴り散らした相手は大王を騙る火の神で無く

本当の大王であったのですか?!」


「だから申したではないか」


部屋の隅の人物がぼそりと呟く


「失礼いたした!

申し訳御座らん

しかしそなたが名乗らぬ故我等は疑念を募らせたのですぞ」


「だから忘れたと申したではないか」


「自分の名を忘れたなど合点が行かぬ!」


「ひいっ!」


二人の間にゴクラクサイが割って入る


「アキヨリよ落ち着かんか

大王が自分の名を忘れたのには理由があるのだ

しかし大王 貴方様も怯え過ぎだよう

三人共良く見りゃまだまだかわいい顔した小僧っ子だあよ」


「何を申すかナガヨリよ

お前の息子は特に怖い

火の神が相手と勘違いしているにも関わらず取って食われるかと思った

人間なら神を恐れ敬うものだ」


「うー確かに

しかしヨシツネ公のあれを見た後では仕方ないと思っては貰えんかのう

この者達の心根の優しさからだと

ああそうだ

大王の名を知れば疑念も晴れるだろうよ

この方は古の出雲国の大王オオクニヌシの尊だよ」


「何だってえ!」


「何と!」


目玉を飛び出したアキヨリとダンザの横でキリュウは肘をついて横になっている

考え無い人である


「そうそうオオクニヌシだ

訳あってすぐに忘れてしまうのだが

朕の名はオオクニヌシである

しかし朕も語りかける時期が悪かった

そなたらが勘違いするのも無理は無い

すまなかったのう」


「時期が悪いというなら拙者もで御座る」


その声は小屋の出入り口である回転扉からだった


「おお!役者が揃ったようだよう

遠慮せず入って下され

息子が面白半分に建てた小屋故におかしな扉になっておる

扉の端を押せば回って入れますぞ

ああ 右の端でも左の端でも構いませぬ」


「うむ先程 迷惑をかけたばかりで心苦しいがそうも言ってはいられん

伝えねばならぬ事がある

アキヨリよ失礼いたすぞ」


ギィィ


扉が回り姿を現したのは先程アキヨリ達と死闘を繰り広げた

直垂に烏帽子姿のヨシツネだった



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