嵐の早合点
謎の声が聞こえてくる下方を睨む三人の様子に気付いていないのか
謎の声は続いた
「永きに渡った我等が宿願も後僅かとなった…」
「待たれよ!」
アキヨリが割って入る
「何かな?若き多々良の守人よ」
「拙者の素性存じておられるようだが名乗っておく
シジマ アキヨリと申す
そなたの名は?!」
「あっああ…
朕の名か
ああ…ええと…
あまりに永きの間名を呼ばれておらぬ故忘れてしまった
いや
そういった記憶もあちらに持って行かれたのであったか…」
「名乗られよ!!」
「ひっ!
あの あれだ
皆は朕を大王と呼んでいた」
「何だとう!!」
「間違いないな」
「この野郎!!」
またもや三者同時
「待て!待て!
一体何事か?!
ナガヨリの意思を継いでこの目論みを達成せんが為
この塔に参着してくれたのでは無かったのか?!」
アキヨリの茶筅髷が逆立つ
「義父上の名を語ったな!
目論みとは何だ!
姿を現せ
貴様が我等を謀らんとしている事などお見通しだ!」
「ひっ!ひいっ!
なぜその様にいきり立っておるか
そっそうであるな
どこぞの誰かと思い違いしておるのだな
落ち着くのだ
我等がまみえるのは此度が初では無いか」
「初対面だと…
いや 思い出した!
貴様の話振り聞き覚えがある
以前 このホウライ山で
敗れ落ち延びるジョスイとそれを追うヒデカツと遭遇した後だ
確かに貴様の声この耳で聞いたぞ!
そうだ!
貴様が火の神だ
俺を取り込まんと間欠泉におびき寄せたなどと吐かしておった!」
「ひぃぃぃぃぃ!
違う違う違う!
そちらが火の神だ
朕の半身を取り込み知恵をつけおったのだ!」
「まだ吐かすかぁ!!」
「ひぃぃぃ!
ええと…
また来ます」
「待てぇい!!」
アキヨリ達が声のする下方へと向かう為
螺旋階段に殺到すると直前で罠が仕掛けてあったのか
床が回転扉の様に回り為す術なく三人は階下に落下して行った
「うわぁぁ?!」
「何とぅ?!」
「ぬぎゃああ!
落ちる!落ちる!」
が 落ちなかった
三人は薄暗く狭い部屋の中にいた
頭上には燃える水を使い火を灯すギヤマンの燭台が揺れている
アキヨリとダンザの鼻を懐かしい匂いがくすぐる
「ああ ここか
そういう事だったか…」
「若様これは一体?!
ここはシジマ家の屋敷にある
若様の小屋ではありませんか
こういう事とは?!」
「ダンザ落ち着け危険は無い
俺も突然で上手く説明出来ん」
「はっ ならば あれこれ騒がぬとしますが…」
アキヨリとダンザの信頼関係はこの理解不能の事態においてもダンザを狼狽えさせなかった
一方キリュウはもう考えるのをやめ
間延びした顔でちぐはぐに組まれた屋根裏の梁を眺めている
三人の騒がしさが気化して屋根裏に吸い込まれた
その時だった燭台に灯された火が少しだけフッと明るくなり
三人の向いに座った人物を照らした
「アキヨリよう来た
シンミョウ久しぶりだなぁ
それとお前さんはキリュウといったかね
それはそれとして
お前達早合点が過ぎるぞぇ!」




