大王の声
「ぬううう!」
バチン!バチン!
ドス!
一連のそれはアキヨリが感情を押し殺した時
抑えきれずに漏れ出した感情が呻きとなった声
次いで気持ちを切り替える為のいつもの自らの頬への平手打ち
最後に胡座をかいて座り込んだ音
「ヨシツネ公が兄上と呼んだ人物…
当然ヨリトモ公であろうな…
並びにシズカといった方…
奥方であろうがリッカに瓜二つであった…」
先程見聞きした事柄によりアキヨリの感情は爆発寸前であったが
彼の心には何か小さな棘が刺さった感覚があり
それを取り除くまで危機が去ったとは思えなくなり
理性と知性を総動員して与えられた情報を咀嚼し始めたのだ
「こんな事があってたまるかぁぁ!
アキヨリ殿こいつは本当にあった事なんですかい!!
こんな目にあった人と俺達は戦わされたんですかい!!
ああああ!ああああ!」
ブン!ブン!ブン!ブン!
爆発寸前はキリュウも同じだった
彼の導火線は非常に短く直様爆発したようだ
鳴き声にも似た声で叫びながら槍を振り回し始めた
「キリュウ!」
アキヨリは棘を取り除く作業を中止してキリュウの元へ行こうとしたが
すぐに足を止めた
目の前に突き出されたダンザの掌に遮られたのだ
掌は言っていた
「お続け下され」
ダンザが振り回わされる槍をかいくぐりキリュウの肩へ少し乱暴に手を置くと
キリュウは槍を振り回すのをやめダンザを振り返った
ダンザは自分の心情を表した顔で一つ頷いた
「こいつも俺と同じ気持ちなんだ」
そう読み取ったキリュウは落ち着きを取り戻した
またもや少し乱暴に肩に置いた手で今度はキリュウの首を抱え込み
常識では男の恥となるものを隠さんと無理やりにうつむかせダンザは考える
「いつもこうだ
まず第一に状況分析
状況分析より仲間の心配
自分の心情は二の次三の次
どれだけのものを一人背負われると申されるか
そなたにはこのダンザおります
忘れて下さるな
しかしキリュウよお前の辺り構わず撒き散らす心情は
若様の御心を代弁しているのだ
きっと若様の助けになっているだろう感謝するぞ
いや
感謝とは筋違い既に我等は同胞であったな」
その二人に柔らかな視線を送るとアキヨリは自らの知性に入り込んだ
「火の鳥…
食う…
旨いのか?…
いや余計な事は考えるな…
火の鳥を食うと不死になると言っていたな
そして火の鳥は捕らえられていた
黒い鎖
如何に作ったか?
まだどこかにあるのだろうか?
しかし火の鳥を食って不死になるというのならヨシツネ公より過去に誰かが食っていたという事だ
誰だ…
その人物は未だに生きているのだろうか?
ああああああ!
馬鹿か俺は!」
アキヨリは胸の中の義経に目をやった
「ああ安心した
首だけになっても生き返るのではないかと思ったが…
しかしなぜだ
ヨシツネ公は不死の身体ではなかったのか?!
火口に身を投げた後も生き続けるような事も聞いたが…
我等に先程の事柄を見せたのはヨシツネ公であり
警鐘を意味している気がしたのだが…
警鐘といえばもう一つそれらしき事柄があった
火の神が大王の声色を使いヨシツネ公を謀った…
火の神は言葉を話すのか?
封じられながらも我等にその言葉が届くのか?
そして大王とは何者だ?
この国の天子なら帝というだろう
武士の首席なら将軍だ
そもそも過去にも日の本に大王などという者は存在したのか?
いやいや重要なのはそこでは無い
声色を使い謀るというところだ
姿形では無く声色でだ
大王というからには尊大な言葉遣いなのだろう
ならば早速この事二人にも告げておかねば」
アキヨリは入り込んでいた知性から戻ると立ち上がり声を張った
「二人とも聞いてくれ!」
その声の張り具合にダンザとキリュウはアキヨリの入り込みが終わったのだと理解した
「何の意味も無く我等は先程の惨状を見せられた訳では無い!
断言は出来んがこれはヨシツネ公からの警告なのだ
火の神が大王の声色を使いヨシツネ公を謀ったという事実を我等に伝えようとしたのだ
だが考えてみたものの大王という人物に思い当たりが無い
とにかく姿を見せず偉そうに語りかけてくる奴に気を付けよう」
「承知いたした!」
「偉そうな奴なんざ初めっから相手にゃしませんが分かりやした!」
「うむ」
アキヨリが頷くと塔全体を響かせる様な声が地中深くからだろうか
アキヨリ達の屋上を震わせた
「若き多々良の守人とその同志達よ
見事であった
朕の手が届くまであと少しであるぞ」
「此奴だ!」
「こいつだ!」
「野郎!」
三者同時であった




