人の道
「義母上かあああぁ!」
白い羽がアキヨリに連想させる事柄は
最愛のリッカを連れ去られた人生最大の失態
連想させる人物はシラセ ソヤカ
肋骨の骨折の痛みは吹き飛び
眉尻は吊り上がり
燃える水の入った腰に下げた竹製の水筒は真っ二つに割れ
彼の怒りを表すかのように泥水の様な火炎が迸る
「でりゃあああああ!」
白い羽を焼き尽くさんとアキヨリは火炎を鷲掴みにし投げつける
シュパアアア
白い羽は質量の軽い物体とは思えぬ速さで八方に拡散して火炎を躱した
そして天井付近に再び集結し屋上に続く螺旋階段の為の穴へと飛んで行く
血溜まりと床に落ちた太刀
そして義経の遺骸のあった場所にはそれ等の痕跡は無く
陶製の床に染みたであろう血も跡形も無くなっていた
「逃がしはせんぞ!」
螺旋階段を駆け上がるアキヨリを追うダンザとキリュウ
炎の気配を気取られぬ為 消していた鉄砲の火縄の火を再び着火するはダンザ
「誰も逃げやしないよ
ここでこれ以上暴れられたら
ナガヨリ様の遺して下さった物を壊されてしまうからね
ついておいでアキヨリ!」
屋上に躍り出たアキヨリ達は
月明かりに照らされたヨシツネの姿を見た
口を開けていた首の裂傷は何事も無かったように元通りになっていた
しかし食す為喋る為の口は力無く無造作に開いている
「ああああああああああ!!
苦しい!苦しい!苦しい!」
太刀を浴びせてやろうと構えたアキヨリは躊躇する
「一旦白い羽にして再び元通りにする事で流れ出た血を体内に戻し
傷を塞いだのか?!
しかし死に瀕する痛み苦しみは無くなってはいないようだ
なんという事だ!なんという事だぁ!」
すると義経の肩に刺さっていた白い尾羽が一つ渦を巻いて飛ぶ
「ヨシツネ様もう少しです
あの者達は憎きキヨモリの忘れ形見
生かしておいては災いの元
さあもう一度太刀をふるって下さいませ」
「ああああああ!
それは誠か!
ああああああああああ!」
どこからともなく聞こえてきたソヤカの義経をたぶらかす声は
アキヨリ ダンザ キリュウの心に掛けられた鍵を外した
「義母上!!そこに居られるか!!」
「わたしは今リッカの側にいるよ
うふふふ」
「そうであるか!
きつい仕置きをしてやりたいが我慢いたす
如何に処したかは分からんが
一途に母を想い平家を憎むヨシツネ公をたぶらかし利用し
此度もまた人としてやってはならぬ事ぉう!
やってくれたなぁぁぁぁ!!」
「おお怖い怖い
わたしはもう戻るとするよ
このお方さっきとは一味違うからね
お前が切り刻まれる様を見たかったが残念だよ
あははははははは!」
「暫し待たれぃ!
拙者キリュウ マサナオと申す!
一言物申したき議があり申す!!」
「何だいやかましいねぇ
聞くだけ聞いておくよ」
「首を洗って待っておれ!
アキヨリ殿の義母とて容赦せん!!」
「下郎!調子に乗るでないよ!」
「俺の名はダンザ!
何がやりたいか良く分からんが
若様を止める事など出来んぞ
我らがそなたの企み打ち砕く日を震えて待っておれ!」
「ふん!
負け犬の遠吠えなど聞こえないね
お前達とはこれきりだよ
あははははは!」
ソヤカの笑い声は満月に溶けて行った




