勝利への経路
建築物の中にいるとその建築物に異変が起こった場合
把握するのは困難な場合がある
激しく揺れたりする場合などそうだろう
地震などの理由で揺れているのか
崩れ落ちつつあるのか
中にいたら区別するのは難しい
状況を把握する確実な手段は
空や大地のほぼ変化しない物つまり周囲との対比である
アキヨリは塔の置かれた状況を把握する為
幾つか開けられた三尺程の丸い窓から外を見た
満月が上から下に流れて行った
「分かったぞ!
分かったが分からん!
この塔は多々良の守人の力を使って穴を掘る為に作られたのだ!
この塔の下に掘られた底も見えない大穴を掘ったなら大量の土が出る筈だ
それがどこに行ったか不思議だった
分かったぞ!
その土は地下で焼き固められて塔を上へ上へと押し上げているのだ
今迄義父上の多々良の守人の力で
僅かずつ塔は高くなり続けていたのだ
それが炎の龍を取り込み急激に掘りそして伸びたのだ
分かったが分からん
なぜ穴など掘る!
うわああ!」
宙に浮いたアキヨリが上手く着地しようと身体を捻った
その時何かに触れた様に感じ凍り付く悪寒を覚え直様 身体を捻り直した
ズバッ!
触れたのは太刀の軌道だった
「戦いの最中 他に気を取られるとは
迂闊!
ぐべっ!」
アキヨリの脇腹に何かがめり込んだ
「けけけけけけけけけけけ!!」
それは甲高い笑い声の主の握り拳だった
「ぐわっ!」
受け身を取れず無様に床に叩き付けられたアキヨリに更に太刀が襲いかかる
ズバッ!
「ハッ!」
太刀を躱そうとアキヨリは跳ね起きた
メギャ!
その横面に何かがめり込み再び地に伏せるアキヨリ
「けけけけけけけ!」
それは甲高い笑い声の主の蹴り
「なんという凄技!
ヨシツネの恐ろしさは操炎術などではない
斬撃を躱せば拳や蹴り
斬撃を躱さなければその場で真っ二つ
一旦体勢を崩せば挽回する手段無し
どうする!」
「アキヨリ殿!」
もちろんキリュウが黙って見ている筈は無い
ヨシツネの素早さを目の当たりにし
その素早さに対応する為
突進するのでは無く
槍を短く持ち最小限の動作で打ち払うように斬りつける
「けけけけけけけ!」
ヨシツネは槍を躱しながら太刀を振り下ろす
ギャイイイイン!
振り下ろされた太刀は
槍の刃とは反対側 柄の端の石突という部位で跳ね返された
「俺が旋風と呼ばれる訳を教えてやるぜ!」
キリュウの槍は双頭の蛇と化し刃と石突が入れ代わり立ち代わり義経に襲いかかる
「けけけけけけけ!」
ヨシツネは人間離れした脚力で後ろに跳躍して躱す
「ふんっ!」
短く気合いを発したアキヨリがその跳躍の着地点に斬りかかる
着地する瞬間なら躱すのは困難だ
「けけけけけけけ!」
ヨシツネはアキヨリの太刀を空中で身体を真横にして躱し体勢を崩したかに思われた
しかし躱すと同時にアキヨリの頭を掴み真下に叩き付け
その反動で更に飛び上がる
「野郎!」
更にその着地をキリュウの槍が薙ぎ払う
「けけけけけけけ!」
ヨシツネは槍を踏み付け着地した
「でりゃあああああ!」
ドスッ!
動きを封じされた槍を手放し体当たりするキリュウ
ヨシツネはキリュウ共々後方に吹っ飛ぶ
右胸から腕の付け根に衝撃を受けたヨシツネの手は一瞬開き太刀を落とす
「けけけけけけけ!」
胸に食い込むキリュウの肩を左手で掴みヨシツネは右手で脇差しを抜き
キリュウの延髄へと振り下ろす
ブシュアアアア!
吹き上がる血飛沫
「俺が鉄砲だけかと思ったかよ」
血飛沫を上げたのはダンザの脇差しにかき切られたヨシツネの首の動脈だった
膝から崩れ落ちヨシツネは血の海に沈んだ
キリュウは見逃さなかった
倒れたアキヨリが指差した先を
以前として眩く光る巨大タマネギの光の中から飛び出すダンザを
体当たりは苦し紛れの蛮行では無く
彼等にとっての到達点に敵を導く為だった
「ふぅー骨が折れたぜ
アキヨリ殿大丈夫ですかい?!」
「ああ 俺の方は本当に骨が折れたようだ
心配には及ばん肋骨だ
さらしを巻いておけばすぐ治る」
「若様動いてはなりませぬ!
今そちらに参ります!」
脇差しの血糊を拭き鞘に納め
アキヨリに駆け寄ろうとしたダンザの視界が真っ白になった
突然の事態に短く強く息を吸い込むと何か口の中に入り込んで来た
咄嗟に吐き出したそれは白い羽だった




