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六角の花   作者: フミ
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連撃 連撃 連撃

「一体何匹いるんだ 一、二、三

数えきれねぇ

この浮世離れした龍の団体さんも操炎術なんですかい?!」


操炎術を知る事は気取られる訳には行かない

耳打ちするよう告げキリュウは跳ね起き槍を構え直した

ヨシツネにぶちかました柄の部分が持て無い程ではないが熱かった


「そうだベタな名前だが火炎龍の術という」


アキヨリは脇差しで命綱を断ち切った


「アキヨリ殿も使える術なんで?!」


「無論だ」


「そりゃ凄え 少し安心しやしたぜ」


「但し操れる龍は一つないし無理して二つだけだ」


「へっへっへっそうなんですかい」


先程までヨシツネへの攻撃を邪魔された怒りと

邪魔されなければ仕留められたという口惜しさと

引き止められずそのまま突進していたなら確実に三途の川を渡っていただろう

そこを助けられたアキヨリへの感謝がない交ぜになったややこしい興奮状態だったキリュウの顔から血の気が引いて行った


興奮と血の気が去った後に


「今日が俺の人生最後の日だったのかよ」


が押し寄せて来た

そして思い残した事を思い出した


「アキヨリ殿!」


「キリュウよ!」


ほぼ同時だった

同時だったのはもう一つ


シュババババァン!


絡まり合った炎の龍の数匹がアキヨリとキリュウに襲いかかる

二人は蚤の様に身軽に跳ね飛び躱す


「先に話せ!」


「頼みがあるんだ」


ズバァン!

破片となり舞う塔の床と火炎越しに二人は視線を合わせた


「何だ?!」


「俺をあんたの家臣にしてくれぇ!」


ボババババババ!

二人を取り巻く炎の龍の動きには規則性があり それに気付き始めた二人に会話する余裕が生まれ始めた


「はああ?!

今言う事かあ?!

大体お前はジョスイの配下であろう

願っても無いが筋が通らん」


「酒があったんだダンザに飲まれちまったが」


「益々分からん!」


「ジョスイの旦那が俺に持たせてくれたんだ

アキヨリ殿に持って行けって

アキヨリ殿の故郷の酒だって

あんたの所に行きてえと土下座して頼んだら持たせてくれたんだ!」


「まだあるか!」


炎の龍を躱しキリュウと背中合わせになるとアキヨリは耳元で言った

ズガァァァン!

二人の間に龍が炸裂した両者左右に間一髪飛び退き躱す


「えっ!何が?」


「酒だ!まだ残っているか?!」


「ありやす!半分くれえだが」


「共に飲むぞ!

此奴を叩きのめした後!」


「おう!」


今日が人生最後の日で無くなったキリュウに希望の大波が押し寄せる


「キリュウ!

俺が合図したらさっきの技をもう一度ぶちかませ!」


「しかし隙がでかすぎるんだあれは」


シュゴゴゴゴゴゴォン!

幾分躱すのに慣れはしたが 炎の龍は巻き付くように襲い掛かり 反撃の隙を見せない


「その隙を今から作ってやる

大き過ぎる力など全くの無力より力無き事思い知らせてやる!」


「お前等何をコソコソ話している!

中々出来るようだがいつ迄も躱しきれると思うな

このヨシツネの知る所となったからには

お前等の平家再興の企みなど最早叶わぬぞ!」


ヨシツネは素早く躱し続けるアキヨリとキリュウに苛立ち始めた

一方アキヨリは策士の笑みを一瞬だけ見せすぐに引っ込めた


「ヨシツネ様 思い違いで御座います!

拙者の顔をご覧下され

そなたに生き写しでは御座らんか?

拙者はそなたと同じ血を引く者

平家の落人では御座らん

おそらくヨシツネ様は永く眠っておいでではなかったのでは?!」


アキヨリは目の前の男は正真正銘 四百有余年前の人物 ミナモト ヨシツネと確信していた

事実 義母であるソヤカは高祖父の代の人間であるにも関わらず氷の眠りにより二十代の若々しさであった


「何らかの理由で氷の眠りについたのだ

そして義母上と比べても長過ぎる時間眠っていた事になる

何か人間としての重要な部分が欠落した様子はその為だろう

母恋し平家憎しだけで行動しているのだ

おそらく新たな理解など望めまい

俺の言葉など理解しないだろう

話が通じるならそれで良し

通じぬなら殺る他あるまい

さあどう出る」


「確かに我に似ておる…

なぜ平家の落人が我に似ておるのだ…

分からん!分からん!分からん!」


ダンザの鉄砲を警戒してかアキヨリとキリュウの攻撃に全ての炎の龍を向かわせず

自らを守る様に身に纏わせていたヨシツネの龍が主の心情を表すかの如く荒れ狂い不規則に暴れだした

しかし一匹だけ正気を保つ龍がヨシツネを見据える


「今だ!キリュウ!」


「おう!!!!!」


再び己のバネを縮め始めたキリュウをヨシツネは見逃さない


「下郎!見え透いた小細工!」


見逃さないのは一匹だけ正気を保っていた炎の龍も同じだった


ゴギャギャギャギャギャ!


咄嗟に突き出したヨシツネの腕を跳ね除け一匹だけの炎の龍はヨシツネの喉笛に食らいついた


「ぐぎゃあああああ!

この龍は貴様の龍か!

貴様多々良の守人であったか!

おのれ!おのれ!おのれ!おのれ!」


暴れるヨシツネの龍達は首を断ち切られた蛇の如くのたうち回り始めた

それはヨシツネの制御の元から外れ

繋がりが切断された事を意味する


「とりゃああああああ!」


アキヨリが気合いを発すると

暴れ狂う龍の内二匹が彼の腕の動きに同調してヨシツネの両脇腹に食らいついた


「ぐぎゃあああああ!」


パチィィィィィィィィン!


キリュウのバネが再び弾け飛ぶ


「くらええええええい!」


ヨシツネに向かい突進するキリュウの横を制御を失った龍達がすり抜けて行った

新たに何かに制御されたと考えると納得の行く動きではあったが

やはりキリュウは意に介さない


「ただ一つを成し遂げるまで!

迷わぬ決意に不慮の事態は追い付けぬ!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


キリュウはただ一つを成し遂げられなかった


「うわああああ!なんだああ!」


突然の地響きの様な轟音と共に彼の身体は背丈程に飛び上がらせられた


同時にアキヨリも床に跳ね飛ばされ宙に浮いていたが落ち着いていた

いや

落ち着いてはいなかったが取り乱すまでは行かなかったようだ

それはこの異変の一部始終を目にしていた為である

そのアキヨリの目に焼き付いていたのは

制御を失った龍を瞬く間に全て吸い込んだ巨大タマネギの眩い光だった



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