選択するべき後悔
両の眼に闘志漲るアキヨリをヨシツネと名乗った男は全く熱の無い目で唯見た
「シジマ?アキヨリ?
知らん…
平家一門の者では無いのか
そこの槍 お前はどうなのだ
それと先程の不意打ち…
あのおかしな得物…」
ヨシツネがアキヨリからダンザに視線を移したが
既に先程まで立っていた螺旋階段にその姿は無く
ろくに隠れる物の無いこの階にも関わらず気配さえ忽然と消えていた
「成る程 不意打ち専門という訳か…
厄介と言えば厄介…
燻り出すか…」
パチィィィィン!!
ヨシツネと名乗った男から熱風が放たれたと同時だった
何かが弾け飛んだ感触が辺りに響き渡った
空気を震わせ伝わる音では無かった
それは床を伝わり巨大タマネギの階を駆け巡った
その中心に位置するはキリュウ マサナオ
彼の押し縮めたバネが解放されたのだ
「ハアアァァァァァァ!!」
気合いと共に放たれた巨大な弾丸と化したキリュウの目にアキヨリに生き写しの青白い顔が映る
しかし彼は微塵も意に介さない
迷うだの考えるだの何かと何かどちらかを選択するなど
彼の脳内には毛ほども無い
決めたのだ
この悪意を放ってくる男を倒すと
経験して来た数々の戦闘の記憶から理解したのだ
躊躇していて倒せる相手では無いと
その果断さは幾度も経験した
(護れなかった)
という後悔に起因する
キリュウ マサナオは危機に瀕した際一旦どう行動するか決定したなら一切思考しない
どうせ人は後悔するものだ
「だったら護れなかったと後悔するより
やっちまったと後悔するんだよ!!」
一直線に構えた槍がヨシツネと名乗った男のみぞおちに突き刺さったかと思われた刹那
男の身体が横に伸びる様に広がった
凄まじい速さのキリュウの槍をド凄まじい速さで躱したのだ
しかしキリュウは狼狽える事など無く槍を横一文字に構え直し
鋼でこしらえた槍の柄で男を捉えそのまま突進し続けた
「ぶっ刺してやりたかったが
壁でブッ潰れて貰うぜ!!」
槍の柄と壁で圧死させようと更に全身を前傾させたキリュウの身体はいきなり後ろに吹っ飛んだ
いや、その場に急停止したのだ
凄まじい速度からの急停止はキリュウに後ろに吹っ飛んだ錯覚を与えたのだ
「アキヨリ殿!
何で邪魔するんだよ!」
アキヨリに肩と腰を掴まれていたのだ
アキヨリがキリュウの突進を食い止められたのは
腰からピンと張られ足場に結び付けられた命綱のお陰だ
振り返り怒気を表すキリュウは視界の端に光を感じると共に
今度は本当にアキヨリ共々後ろに吹っ飛んだ
その最中もアキヨリは目の前の脅威から目を離さない
アキヨリの眼に映る異様な形の赤い光を見たキリュウは
突進を続けた場合 今自分がいるであろう所に目を移した
「なんだ こりゃあああああぁぁぁ!!」
そこにはおびただしい数の炎の龍がとぐろを巻いていた




