強え味方
「大ちゃん臆したか?!!」
アキヨリの幼名ダイベンマルから派生したあだ名を呼んだダンザも
何者かのただならぬ気配を感じ恐怖していた
だが身体を硬直させるアキヨリの姿を目にして血をたぎらせた
今こそ磨き上げた己の武を解放させる時と
「誰が臆したと!シンミョウ!」
シンミョウマルというダンザの幼名を呼んだアキヨリの身体には既に強張りなど無い
あるのは唯踊り狂う武の乱舞
「あっはっはっは!
アキヨリ殿の幼名は確か大糞丸!
俺は長男なのにゴスケと呼ばれたぜ!」
宙を飛ぶ槍の鞘が床に落ちる前にキリュウは螺旋階段を下り
何者かが姿を現すであろう階段の為の床の開口から槍の間合いの距離に位置し構え渾身の力で縮めていった
己の根幹にある巨大なバネを
「二人共そんなにいきり立つな
何者か確かめるのが先だ
しかし何と頼もしいものか
百発億中とオウミの旋風よ
そなたらが居れば毘沙門天とて倒せようぞ!」
「毘沙門天とは気前よく褒めてくれるぜ
だが!
いちいち確かめていたら手遅れになる相手だぞ大ちゃん!」
バァン!バァン!
螺旋階段に立つダンザの両手の馬上筒二丁が火を吹いた
標的は床の上に生首の様に現れた何者かの肩から上
「早まるなダンザ!」
しかしアキヨリの憂慮も意味を成さない
二発の鉛玉は水飛沫が如く弾け飛んだ
高熱に溶かされたのだ
「操炎術!」
アキヨリは言葉には出さなかった
代わりに二人に目配せした
修羅の場に身を置き精神を研ぎ澄ました百発億中とオウミの旋風は瞬時に目配せの意味を理解した
「操炎術は知らぬふりをしろ」
目配せはそう言っていた
ダンザとキリュウに視線を向けていながら
視線の端に捉え続けていた
既にこの階の床に立った何者かを視界の中心に据えたアキヨリは何者かの正体を確信した
確信の材料とは
赤糸威の大鎧
笛
トキワゴゼン
操炎術
そして鏡を見ているのかと錯覚する程自分に良く似たその顔
既にこの世の者では無い事など確信を妨げる事は無かった
「この者は…」
何者かは突然弛緩した全身に力を漲らせ
「我が名は源 九郎 判官 ヨシツネなるぞ!」
名乗った
その大河の様な敵意の三つの支流の一つが自分に辿り着くと
おおよそ人の言葉の通じぬ地獄の亡者と直感し
アキヨリは右手に太刀 左手にイエナガの脇差しを抜き二刀に構え
「我が名はシジマ サブロウ アキヨリ!」
名乗った




