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六角の花   作者: フミ
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笛の音につけられた名は古の勇者の母の名

鉄砲と三味線を背負い

ややうつむいて首を横に数回ふり


「ふぅー」


大きい溜め息をついて顔を上げたダンザは満面の笑みだった


「それじゃ参りましょうか若様!

あはははあはははあははは!」


「おお!ふっ切れたなダンザ

さすが年季の入った振り回されぶりだな

俺も行くぜ 何だか面白くなって来た」


キリュウも槍を背負うと二人を追い螺旋階段を駆け上って行った


おかしな興奮状態のダンザとキリュウとは打って変わり

先頭を行くアキヨリは神妙な面持ちだった


「しかし巨大な塔だ

しかも壁には継ぎ目が無い

陶製であるのなら

この大きさの物体を一期に焼成したことになる

操炎の力を使ったのは明らかだ

一体どんな技を使ったというのだ」


アキヨリの胸にはあの時のリッカの言葉が甦り渦巻いた


「お父様のように命を燃やし尽くして

惨たらしく!あんなに小さくなって!」


こみ上げるものを目を固く閉じ堪え再び目を開けるとアキヨリの頭上に天井が迫って来た

塔の中心の円柱と天井には円状に十尺程の隙間があり

そこから風切り音がもれ聞こえてくる


「いよいよだな

あそこに光を生み出している何かがあるのだな」


アキヨリの胸中に再び好奇心が隆起し

それは脚力に加算された

そして勢いそのままに螺旋階段の為に開けられた人 一人が楽に通れる穴から天井の上に飛び出した


「なんだこれは…」


今迄見聞きした物に例えるなら玉ねぎである

直径六間程の陶製の巨大な玉ねぎが円柱の上に乗っかっていた

玉ねぎの下部から絶えず螺旋の光が生み出されていた


螺旋階段は上へとまだ続いていたがアキヨリは導かれるように階段を下りた

さっき迄天井であった床と円柱の隙間には

四方に幅六尺程の足場が渡してあり

玉ねぎに辿り着く事が出来る

無論アキヨリは玉ねぎに既に手を触れていた


「若様!」


「うわああ なんだこりゃ!」


天井の上に現れたダンザとキリュウが大声で

危惧、驚異

などを表していたがアキヨリは気にも留めず玉ねぎに夢中である


「中はどんな仕組みになっているのだ

ドーマン!

おお!なんだこれは!

カタツムリのようだ

カタツムリが二つ横たわり重なっている

上のカタツムリの中心から光が殻の出口まで渦巻いて出て来て

それが下のカタツムリに吸い込まれているのか?

いや、どこから出ているというのでは無い循環しているのだ!

循環しながら光が増幅されているのだ

そしてある程度増幅された分の光が柱を伝って下へ向かうようになっている

生前この装置に籠めた義父上の操炎の力が今も息づいていると考えられるのではないか!?」


シュルルル


アキヨリは巻き尺を取り出して

玉ねぎの寸法を計り帳面に記入し始めた

もちろん内部の構造も事細かにである


「どうやら危険はねえようだが

また入り込まれたようだぜ

軽く頭を引っ叩いたくらいじゃ気付いちゃくれねえだろ

なんだか小難しくて良く分からねえから俺は上に行ってみるぜ

おめえはどうするよダンザ」


「ううむ…

俺もそうするか

少し待て夢中になり過ぎて隙間から落ちるといけない

命綱を結ばせてもらおう」


ダンザは鉄砲の火縄の予備として腰に巻いている縄をアキヨリの帯と足場の一本を結び

キリュウの後を追い螺旋階段を登って行った

もちろんアキヨリは気付かない


二人の上にはすぐに天井が現れた

今度は何が出て来るのかと身構えた二人だったが

そこはもう塔の頂きで塔の面積分の平な屋上だった


「なんだもう終わりかよ

しかしいい眺めだな

外からこっちは見えねえってのも何だか面白れえ」


キリュウは槍を下ろし槍と共に背負っていた荷を解いて横になった


「草臥れたかキリュウ」


「ああ草臥れたよ」


「振り回されっぱなしだったからな

グビグビ」


「おい!ダンザ何飲んでんだよ!」


「何って酒だろ?

お前が持って来たんだろうが

ん?

これは俺達の故郷コウズケの酒じゃないか!」


「ふざけんなよ勝手に飲むんじゃねえよ!

ああもういいや!

今回は諦めろって事なんだろう

俺も飲むぞ!」


「はは

いい具合に今夜は名月だぜ」


「月を肴にってか悪くねえかもな」


ピャラララ〜ピィリャ〜


「あれ?

アキヨリ殿笛なんか吹いてくれてるぜ

俺達を労ってくれてんのか?

しかしアキヨリ殿の笛は心に染みるぜ

月と笛が肴だなんて たまんねえなあ」


「ああ、たまらん

ん?

この曲はトキワゴゼン

なぜこの様な悲しい曲を?」


ピリャーピィィィー


「違う!

この笛は若様の笛の音じゃない!」






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