アキヨリは歯車 桃の花は?
「はっ 只今」
三味線 続いて鉄砲がダンザの手からアキヨリの手に渡された
しかしキリュウは腕組みして槍を抱えたまま中々渡そうとしない
「キリュウ早く渡してくれ
凄い物が見れるぞ 早く」
「アキヨリ殿 顔を出しちゃくれませんかね」
「なぜだ?」
「疑う訳じゃねえんですが
狐か狸に化かされてるみたいな心持ちなもんで
命より大事な槍を渡すってのは…」
「分からんでも無い
少し待て
さっきも言ったとおり狭いのだ
んごっ!」
岩からアキヨリの腕が引っ込んだかと思うと
何やらモゾモゾと衣擦れの音がした後
真横を向いたアキヨリの顔が
腕が出ていた箇所から捻り出された
「これでいいか?」
搾られた雑巾の様なアキヨリの顔にキリュウ並びにダンザは目を剥き体を仰け反らせた
笑いを堪えているのだ
「なんだ!
やれと言われたからやったんだぞ!
腹が立った
キリュウお前は置いて行く」
そう言うと顔は引っ込んだ
「すいやせん!
置いてかねえで下せえ!」
「冗談だ」
再び飛び出したアキヨリの腕に槍が渡され
キリュウとダンザの姿も岩の中へと消えて行った
「アキヨリ殿」
「キリュウお前さっきからいちいち五月蝿いぞ」
また いちゃもんをつけようかと言ったキリュウにアキヨリの代わりにダンザが応える
「そう突っかかるなよダンザ
キリュウ何だ?言ってくれ」
「何も見えねえ中 狭い所を通るのはどうも不安で」
三人共体を横に向けて一例に細かい歩幅のカニ歩きで進んでいる
「だったら俺の袖を掴んでいるか?」
間も無くキリュウの手にアキヨリの袖が触れる感触
「そんなガキじゃあるめえし…」
「そうか」
「あの ちょっと待って下せえ!」
「おおおおおおおお!」
キリュウが袖を掴もうとした時
最後尾のダンザが感嘆の声を発した
「びっくりした!
何だよいきなり」
「おお!
見えるのだなダンザ
と言う事はもうここら辺は結界の中になるのか
だったらもう大丈夫だな」
すぐそこにあったアキヨリの気配はスッと居なくなり
キリュウは袖を掴まず終いだった
「そんな!俺は見えねえんですぜ!」
「大の男がガタガタ言うな
後がつかえているんだ早くしろ」
涙目のキリュウの尻をダンザの膝が三回蹴り上げた時キリュウの目にも見えた
三味線を右手に鉄砲を左手
槍を脇と首に抱えたアキヨリの笑顔の後ろに
半径三十間の円状に開けた地の中心に
半径八間
高さ四十間
はあろうかという五つの南蛮風な屋根を持つ巨大な円筒形の塔がそびえ立っていた
塔は時折 螺旋状の光を纏い
その光を間近で目を閉じドーマンの術で見たダンザの心理と口は直結した
感じたままに口が動いたのだ
「桜か梅かと思ったが桃の花だったか
しかしなぜ目で見ると只の光がドーマンで見ると桃の花に見えるんだ」
「ダンザ俺の手を見ろ
こういう事さ」
ダンザの第三の目にはアキヨリの腕に纏わり付く無数の歯車が見えた




