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六角の花   作者: フミ
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熱病

「さっきのはフリだったんですかい?」


五重塔から飛び降り多少いい気になっているのだろう

六割から七割位の走力で軽やかにダンザの元に走るアキヨリは

並んで走るキリュウの不意な問いの意味を理解出来ずに問いに問いで返した


「フリって何?」


「さっきのうわああってやつですよ

本当は全然取り乱してなんかいねえ

落ち着いてたじゃねえですか」


「ああ、あれか

またダンザのヤツに負かされたから悔しくてさ

あんなふうに真っ正面から来られたら何を言い返したって野暮になる


だからと言ってあいつの言いなりになるのも癪だ」


「違げえねえ!

しかしどうするんで?

俺もアキヨリ殿に頭をはってもらいてえ一人だ

いいやフジオカ達だってそう思っていますぜ」


「ううむ…

領地も無く主君など称する程ツラの皮は厚くは無い」


「無けれは奪えばよろしかろう」


アキヨリとキリュウの間にダンザが割って入って来た


「どこを奪うと言うのだ

ダンザまた気配を消していたな

終始見ていたのだろう

ならば説明は要らんな行くぞ!」


「はっ!

奪うべきはこのアキの国

この国の民は日の本を救ったアキマサ様の弟君の若様を国主と認めるに違いありませぬ」


「そうなれば願ったりだが

まずはサカイを守る事に専念しなければならん

そして今は義父上の遺して下さったものの元に急ぐぞ

今夜はそこで夜を明かす

我等の足なら半時程だ済まぬが二人共もう少し頑張ってくれ」


「むろん!」


「はいさぁ!」


山伏が修行で山に入る為のオンケイ寺から山頂へと続く山道を

登り坂を物ともせず三人は風を切り走る

目的地を知るアキヨリはダンザとキリュウの少し先を走り

二人は少し間を置き後を追った


「なあダンザ

おめえは何でアキヨリ殿にそこまで入れ込むんだ?

凄え人だとは思うが おめえからはフジオカ達と違った何かを感じるぜ」


キリュウは普段話すように全く息を切らせてはいない


「そうだな お前には話してもいいかな

俺はな元服してすぐの十四の時重い病にかかって死にかけたんだ」


「病ってなどんな病なんでえ」


「分からん

ただ高熱が続いた

シジマ家で家老を務めていた親父が医者を片っ端から呼んでくれたがどの医者にも分からず終いだった


倒れてから三日目だ俺は諦めた

本当に苦しかった

苦し過ぎて夢に見たシジマ家一の武士になる事も諦めて

心が倒れないようにがっちりはめ込んでいたつっかえ棒を外してしまったんだ

楽になったよ苦しかったのが嘘の様だった

ぐるぐる回ってた天井が澄み切った青空に見えた


その時だ

俺を呼ぶ声がしたんだ


ダンザ魚釣りに行こうぜ!


てな

俺は心底腹が立った

魚釣りなんか行ける筈ねえだろうって

どこの誰か分からんが許さねえって


その後無理やり枕元にあった冷えた粥を胃袋に流し込んだ

また死ぬ程の苦しみが襲って来たが口に手を突っ込んで吐くのを堪えたんだ


それから毎日だ

魚釣りに行こう

虫捕りに行こう

馬で遠乗りしよう

朝になると俺を呼ぶんだ

熱で頭がぐるぐる回っていたがどうやら二人だってのは分かった

このまま死んでたまるか

あいつらをぶっ飛ばしてから死んでやるって俺は苦しみに耐え続けた


そんなのが十日も続いたかな

その声が変わったんだ

遊びに誘うんじゃなく


ダンザ

ダンザ

ダンザ

ダンザ


って俺の名を叫び続けるんだ

その時分かった

その声は若様とタキの声だったんだ


俺は布団を蹴飛ばして立ち上がった」




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