罰当たり
奇声を発し頭をかきむしり突然走り出す
通常それらを一度に行うのは常軌を逸した行動であり
完全に我を失った状態と言える
ところがそんなアキヨリを追いかけるキリュウの心の中は好奇心が支配していた
目的を感じていたのだ
凄まじい速さで走るアキヨリは領民達の墓石であろう
一連に列ぶそれを飛び越える時両手を合わせて頭を垂れていた
我を失った人間が目的も無く走ったなら障害物に行き当たれば走る方向を変えるであろうし
飛び越えたとしても両手は頭の上で踊っているだろう
二つの根拠がキリュウを好奇心の虜にした
「おもしれえ!おもしれえぞ!
どこに行こうってんだ
何をしようってんだ
流石に速えが俺も足には自信があんだ
その気になればいつでも追い付けるぜ
声をかけて俺が追ってるのに気付いて やろうとしてる何かをやめちまったらつまらねえ
ふへへへへへ
ダンザには悪りぃがおもしろくなって来たぜ」
ニヤニヤしながらキリュウが自分とアキヨリを結ぶ直線上にある
本堂の東に位置する五重塔を見上げたその時だった
「キリュウ!
そなた足が相当速いな
初戦の殿はそなたに任せるとしよう」
「き、き、気付いてたんですかい!?
それにしても初戦の殿って
まさか負けるつもりでいるんですかい?!」
「あっはっはっはっ!
逃げる勝ち戦とてあるのだ
俺を追い抜くつもりで来い
行くぞう!!」
キリュウが視界に捉えたアキヨリの後ろ姿がふと一回り小さくなった
「負けるかぁ!
俺はアキヨリ殿と違って三年前 齢二十六の時
タネフサ様に取り立ててもらうまで馬になんか乗れねえ足軽だったんだ
ぬおおおおおおおおお!」
キリュウも本領を発揮しアキヨリに並ぶと五重塔の開いたままの扉が目の前に迫っていた
「登るぞキリュウ!」
「おう!」
塔に二人が突入すると燭台に灯された火にアキヨリが手をかざし
折り重なるように設えられた急な階段へとそれを導いた
暗闇に階段が灯火に照らされ浮かび上がった
順々に灯って行く灯火を追うように二人は階段を二つ抜かして駆け上って行く
「うりゃあああ!」
「おりゃあああ!」
眉を吊り上げ両者共瞬く間に最上階へと辿り着いた
「俺の勝ちだぁ!
どんなもんでぇ!」
「天晴れキリュウ!」
キリュウを讃えたアキヨリは最上階の手すりの上に立ち唱えた
「ドーマン!」
「これが目的だったかぁ!」
アキヨリの目にはホウライ山の山腹が昼間の様に映っているのだろう
キリュウは小刻みに動くアキヨリの首と瞳に注視した
「あった!あったぞキリュウ!」
「何があったんですかい?!」
「行けば分かる
行くぞ!!」
言い終わる前にアキヨリは手すりから屋根に飛び移り
眼下の四つの屋根を一つ一つ飛び降りて行った
「うひゃあ!
このお方は本物のバカだ!」
キリュウもそれに習い二人が地上に降り立つまで二十六枚の瓦を割ってしまった
仏罰という言葉を二人は知っているだろうか




