↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角の花   作者: フミ
PR
196/788

桐生の願い事

キリュウは思い出していた

それはかつての主君カガ タカツネの言葉である

シジマ ナリカワ連合軍に本城まで迫られ

最早カガ家の運命もこれまでと観念したタカツネがキリュウとタネフサの前でふとこぼした


「シジマ アキマサ

彼奴に負けるのであれば詮無き事よ

いや 本望と言った所か」


その言葉はアキマサの戦いぶりによるものだった

策に策を重ねタネフサ率いるカガ軍を翻弄したかと思うと

ここぞというところではイエナガ アキヨリの二枚看板で力押しに押しまくり

一時は勢いを盛り返したカガ軍は完膚無きまでに叩きのめされたのだった


キリュウはアキマサを憎んでいた

策など使わずともイエナガやアキヨリの武勇と

最新の装備を有するダンザ率いる鉄砲隊があれば正攻法でシジマ家は勝てるのではないか

シジマ アキマサは汚い男であると


弱音を吐く主君にも腹が立ったキリュウは思わずタカツネに噛み付いた


「正面から戦い勝つ力がありながら

策を弄するは下衆の骨頂で御座る!

タカツネ様においては下衆に負けるが本望とは如何なるお積もりか!」


ゴバァァァ!


当然の如くキリュウはタネフサの大木槌のような拳に吹っ飛ばされた


半分気を失ったキリュウはぼんやりする意思の中タカツネの最後の命を受けたのだった


「アキマサが策を弄するは味方の兵を一人でも多く生還させるが為

家臣の為卑怯者の誹りを甘んじて受けておるのだ

最早勝敗は決した

儂もアキマサに習うとしよう

この命一つでカタがつくなら安いものよ

キリュウよ戦の勝ち負けを恨んではならん

お前はまだまだ若い生きるのだ

後は任せたぞタネフサよ」


「はっ!」


キリュウはタネフサに担がれ城の裏手へと運ばれた

そこには微かに笛が聞こえて来て

城壁の破壊された三の丸まで来ると

笛の音は手の届くような近さに感じられ

そこには一人の男がいた

黒い巨馬に跨り燃えるように赤い甲冑を纏っていた

淋しげな悲しげな笛の音色を奏でるその男にタネフサは声をかけた


「厄介事を引き受けてくれた事 礼を言うぞアキヨリ殿

城の明け渡しは明日に決した

だがこいつは首を縦には振るまい

焼くなり煮るなりして構わんが命だけは勘弁してやってくれ」


「承知した!

だがタネフサ殿そなたは如何なさる」


「これより冥土の土産に最後の一戦付き合って頂く!」


「存分に!

では戦場にて!」


キリュウはアキヨリの肩に渡された


「マサナオよ生きよ!

生きてこの乱戦見届けよ

さらばだ!」



おびただしい数の十字架を見つめキリュウはやっと主君の言葉に頷き呟いた


「アキマサ殿 やっぱりあんたはすげえお方だ

ずっと前から分かってはいたんですが認められなかった

アキヨリ殿にはまだ言えてねえんですがお願いがあるんでぇ

聞いて頂けやしませんか!?」


「うおおおおおおおお!!」


跪いていたアキヨリが雄叫びと共に突然立ち上がり

キリュウは願い事どころではなくなってしまった




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。