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六角の花   作者: フミ
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割れ杯の誓い

転落事故


オオホリカワ城の普請と聞き

アキヨリの頭の奥底からその言葉が浮き上がって来た


「完成間近のオオホリカワ城は天守閣に組まれた足場を取り除く際

その足場が崩壊して多数の職人達が命を落としたと聞いた

まさかギンザブロウ殿の父君が?!」


「表向きにはそうなっておりやす

ですが真相は…」


ギンザブロウは両手を握り締め震わせ

じっとそれを見つめた


黒と赤の入り混じった感情が二つの拳から放たれると

ダンザのイビキは止まった


「ギンザブロウ殿

何やら大切な話と見受ける

俺は席を外す事にする」


「いや、聞いて下せえ

ハナから長々と話す気は無かったんだ

二十年前

俺の親父ギンザエモンと親父が棟梁を務めたワシノス組は

オオホリカワ城の細かな構造やら隠し通路やら何から何まで知っているのが原因で城の完成を祝う席で…


ナリカワ ヒデミツに毒を盛られて皆殺しにされた」


ダンザは直様 襟を正し背筋を伸ばして正坐し一つ頷いた

アキヨリも隣で拳を握りしめて頷いた


「毒は酒に盛られていたせいで

ガキだった俺は毒を飲まずに済んだ


バタバタみんな倒れて行くのを見てとち狂う俺を

鼻から口から血い吹きながらギンジロウ兄貴が抱えて走って

職人達しか知らねえ城の隠し通路から逃がしてくれたんだ」


穏やかだった

二十年の月日がそうさせたのか

自分の人生を決定した出来事を話すに穏やかな口調だった


だがそれは激変した

ギンザブロウは両の拳を畳に突き立て

その真ん中に額を突き立てた


「こっからは俺のお願いでござんす!!

命を拾った俺は彼方此方流れて大工仕事をして参りやした!


なんとかかんとか小せえながらも

てめえの組を持つに至りやした十年前

ニザエモンの旦那に目を付けられやして

やって来たのはこのサカイでござんす!


ニザエモンの旦那が言うにゃあ

このサカイを威張り腐った侍共から商人の自由を守る城に仕立てておくんなせえとの事!


二つ返事で請負った俺は無え知恵絞って今日まで励んて参りやした


そこで耳にしたのぁ近々サカイは侍と喧嘩するとかしねえとか

しかも相手はあのナリカワ ヒデミツだ

なんとかナリカワに一泡吹かせてえと思ってたところに目にしたのは

西国一の知恵者と呼び声高い

サナガ ジョスイ!

そして東国の赤鬼と天下に武勇轟く

シジマ アキヨリ!!


次から次と溢れ出す勝利への策

次から次とアキヨリさんを尋ねやって来る猛者


もしかして!

もしかしたら勝てるんじゃねえか!

いや!

絶対勝ってくれると俺は信じてござんす!

槍も鉄砲も扱えやせんが

盾になるよう そこに突っ立ってろって言われりゃあ喜んで突っ立っておりやす!


後生でござんす!

言われるまでも無えかと存じやすが

勝って下せえ!

どうかこのつまらねえ大工の願い

聞き届けてやってござんせえ!!」


間髪入れずアキヨリ


「承知致した!!」


肩を掴まれ体を起こされたギンザブロウの目の前になみなみと酒のつがれた杯が差し出された

ギンザブロウはそれを受け取ると次に差し出された二つの杯にまたなみなみと酒を注いだ


「固めの杯にて御座る!」


アキヨリがそう告げ杯を口に運ぶと

ダンザとギンザブロウも口に運び

三人は同時に一気に飲み干した


ガンッ!


アキヨリはおもむろに杯を畳に置き拳で叩き割った


ガンッ!


ダンザもそれに続き杯を手刀で叩き割る

何の事か分からないギンザブロウがそれに習おうと杯を畳に置こうとすると

アキヨリが割れた杯を懐紙に包みながら


「割れ杯にて御座る!

これで我等が誓い二度と割れる事は御座らん!!」


ガンッ!


三つ目の杯が粉々になった




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