回想
「アキヨリ殿気を悪くしねえで聞いて欲しいんですがね」
「んっ?…ああキリュウか…
なんだろうか?」
帆柱に背をもたれていたアキヨリはキリュウを見上げた
キリュウの手には昼飯の握り飯が二人分持たれている
その日の早朝キョウジヤの商船に
アキヨリ
キリュウ
ダンザ
の三人は便乗し西へと向かっていた
「眠ってらしたんですかい?
すいやせんでした」
「いや、考え事をね…」
「何です?考え事ってのは
アキヨリ殿はいつも何を考えているんですかい?
童みてえにはしゃいでいたかと思うと
おっかねえくらいに家臣を叱ったりもする
かと思ったら何でこんな凄え事を考えられるのかって案を出したり
頭ん中どうなっているんですかい?」
「皆と変わらないと思うが…
気を悪くしないで聞けというのは何だろうか?」
「気になりやすか?」
「そんなふうに言われたら誰でも気になるだろう」
「今アキヨリ殿が考えていた事を教えてくれたら言いやす」
「ううむ…
昨夜ギンザブロウ殿が訪ねて来られたのだ
俺達がサカイを空けると聞いて出航前に聞いて欲しい事があると」
「大事な話だったんですかい?」
「只事では無かった
だから話して聞かせてやる訳にはいかんのだ 許せ」
アキヨリは再び目を閉じて夕べのギンザブロウの話を反芻した
「夜分失礼しやす
ギンザブロウです アキヨリさんは御在宅ですかい?」
ガラガラガラ
二階の窓が開きアキヨリが顔を出した
「ギンザブロウ殿!
堅苦しいのはいらん勝手に上がって来られよ」
ギンザブロウは微笑み酒瓶をアキヨリにかざして見せた
二階のアキヨリの部屋ではアキヨリとギンザブロウが差し向かいに胡座をかき杯を傾け
その間にはやはりダンザがイビキをかく
「ダンザさんにも聞いておいて欲しいんですがね」
「後で俺から話してやってもよろしいかな?」
「いや やはりアキヨリさんだけでいいや
話ってのはですね」
ギンザブロウは杯を一気に飲み干すと足元に置き
両手を膝に乗せた
もう酒は必要では無いのだろう
「このウジガワ ギンザブロウ齢三十五の生涯の半分は復讐に費やして来やした!」
アキヨリも杯を置き背筋を伸ばした
「アキヨリさんはオオホリカワ城は御存知ですね」
「ああ、ナリカワの居城だ
何度か足を運んだ事が御座る」
「どうですか?あの城は」
「石垣、壁、堀、天守 全てにおいて妥協が無く
全てに理由のある城だと見て取れ申した
故に美しい
砦は幾つかあるが居城を持たないシジマ家の俺は羨ましく思ったもので御座る」
「そうですかい…良かった…
アキヨリさんは敵のもんでも
良い物は良いと言って下さるんですね
あの城はですね
あの城は俺の親父ウジガワ ギンザエモンが普請した城なんでやすよ」




