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六角の花   作者: フミ
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迷うことなどなかった

フジオカとジョスイが生き埋めになった日の夕刻

坂東武者達の寝泊まりする長屋では作戦会議が行なわれていた


二百名以上が集まる為に一室六畳一間が九棟くっついて連なる長屋の一つの壁を全てぶち抜いた寄り合い所に皆集まって

皆一様に尻についたアキヨリの手形から重苦しい雰囲気を放出していた


作戦会議と銘打ったものも

日が陰り室内が薄暗くなってきたのも手伝ってか

重苦しさは最高潮となり誰も口を開けずにいた


しかしこのままでは埒が明かぬと

足軽大将として彼等を率いるフジオカは意を決して口を開いた


「皆の者聞こえるか?」


「聞こえん!

座るのが無理なら立って話さんか!」


細長い長屋に集まった為

上座にいるフジオカの声は後ろの方の者には聞こえずらいのだろうか


原因はそれだけではないようだ

フジオカの声はボソボソとやけに下の方から発せられていた


皆アキヨリの一撃により肥大した臀部を上に突き上げうつ伏せになっていたのだ


「出来るだけでかい声で話す故

このままで勘弁してくれ

痛くてかなわんのだ」


生き埋めになった時に

何本がヒビの入った肋骨よりとにかく尻が痛かった


「聞こえた!

すまない肋も痛むのであったな

どうだフジオカ

皆の中心で話してみてはどうだ」


「ではそういたす」


フジオカはそのままの姿勢で肩と膝でモゾモゾ這いずり

皆の中心へと向かった


「しかし痛快であったな」


モゾモゾモゾモゾ


「何が痛快だと?」


這い進むフジオカの横の者がフジオカに答えた


「海賊であるスミトモ達を引き連れ

商人街の大通りを進むアキヨリ様の事だ

彼等五十名が味方となるなら心強いな」


「そんな事を話す為に集まった訳ではあるまい」


「そうであるな」


モゾモゾモゾモゾ


やっと皆の中心に辿り着いたフジオカは二度目の意を決した


「改めて申す

此度皆に集まって貰ったのは

他でも無い

今後の我等とジョスイとの関わりについてだ」


「うーん」


「どうしたものか」


再び重苦しさが皆にのしかかると

突然一番通りに近い引き戸が外より開かれた


「くだらん!こんな寄り合いは今すぐやめろ!」


「くだらんとはどういう意味だダンザ!」


ドスドスドス ドカッ!


足の歩みに怒気をはらんだダンザはフジオカの隣に進み胡座を組んだ


「くだらん以外に何がある!

人との付き合い方を集まって決めるなど大和男子のする事か!


各々違った見解を持つべき事柄を

意見を統一して無理矢理出した答えなど正しいとでも言うのか!」


「言ったな!

ではダンザお前はどう答えを出したと言うのだ!」


「分からん!」


「分からんだとう?!

お前も答えが出せずにいるなら偉そうに物申すな!」


「分からんというのが俺の答えだ!


我等シジマ家の仇は若様のご家人の命を命を懸けて救い

フジオカ お前の命をまた命を懸けて救おうとしたのだ


相反する二つを突き付けられ

そう簡単に答えなど出るものか!」


「だから集まっているのだ

それさえ分からんとでも言うか!」


「分かるさ こんな気持ちを抱えて生きて行くなどたまったものでは無いだろう

だからと言って無理に答えを出しては大きな過ちを犯し

更なる苦しみに見舞われるのだぞ


と…若様が言っていた…」


「ア、アキヨリ様はどんなふうにお考えなのだ!」


「それを聞いてどうする

若様のお考えに従うとでも言うのか

良く聞け!

若様の苦しみは我等の比では無いぞ!

若様がジョスイに奪われたものと

救われたものの大きさ重さを考えてみろ!

我等が成すべきは若様にすがる事では無いぞ

慰めお助けするのが家臣である我等の使命だろうが!」


「言われるまでもない!

しかし明日の朝ジョスイに会ってどんな顔をすれば良いと言うのだ!


罵倒した俺を命懸けで救ってくれた主君の仇にどんな顔をすれば良いと言うのだ!


小さい俺は小さい…

もし最初に生き埋めになったのがジョスイであったら

俺はざまあないと笑っていたかも知れんのだ」


「フジオカ!」


「何だ……」


「俺はお前という男を知っている

そうなった場合でもお前は決してジョスイを見捨てたりはせん!


明日の朝お前はさっきお前が吐き出したお前の心をそのままぶつければ良い!」


「おおおお!

ダンザ!礼を言う!おおおお!

そうする明日の朝きっとそうする」


「礼を言うのは俺の方だ

お前の心に触れ俺もそのままで良いと思えたのだ」


「ならば ならばだ集まって良かったのではないか!」


「そうだな」


ダンザは微笑み同じ微笑みを明日の朝にも出来るかと少し不安になったが

出来るか出来無いでは無く

やるのだ

という彼の信念が頭をもたげてもいた

それは二百二十四名にも共通するものだった




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