帰ってきたぜ
ガン!ガン!ガン!
大砲と鉄砲のぶつかる音である
ジョスイが船長を務める船が造船所に格納されてから二月が経とうとしていた
既に四門の大砲は甲板に増設された台座に換装されていた
その大砲をダンザが鬼の形相で肌身離さず持ち歩く鉄砲で叩いていた
「一体どういう事なんだよ
ギンザブロウ殿」
「どういう事って言われてもなあ
ジョスイさんには皆さん納得して頂いたと聞いてたんですがねぇ
ダンザさんとこにも四門あてがわれやすが足りやせんかねぇ」
「そんな事は言ってねえ
砲撃指南役の俺に無断で大砲の話が進んでいるのが気に入らないって言ってるんだ
海戦になった場合 大砲の射程距離は勝敗を左右する
なんで射程距離の短いやつばかり載せたんだよ
それにこんなにガッチリ固定したら砲撃の反動で船がぶっ壊れるぞ
それだけの補強はしてあるのか?
まだある なんで片側だけに載せてあるんだ
潮目を読まれ反対側に回られたらお仕舞いだ
一体何を考えているんだジョスイは!」
ガン!ガン!ガン!
「そう言われてもなあ
ジョスイさんもアキヨリさんもそれで構わねえって言ってたからなあ
本人に聞いてみたらどうですかい」
ギンザブロウが顎でしゃくる先には貯水池建設現場で指揮を執るジョスイの姿があった
しかし様子がおかしい
積み上げられた土嚢へと向かい全速力で走っている
「おい!おい!おい!空頭共!
いっぺんにバカみてえに積み上げんじゃねえよ!
地盤がゆるいから様子見ながらって何べんも言っただろうが!」
人の背丈の八倍程の高さの積み上げられた土嚢の上からフジオカが見得を切る
「ジョスイよ良く聞け!
我等シジマ家家臣団は貴様の指図など受けん!
我等が従うはアキヨリ様の命によってのみ
一刻も早くこの貯水池を完成させ練兵に専念せよとのお言葉に従うまでだ!
いちいち口はばったい事をぬかすな
命があるだけありがたいと思えぇぇぇぇぇぇぇ?!」
「言わんこっちゃねえ!
逃げろぅぅい!」
積み上げられた土嚢は静かに緩やかに
地平と垂直にそびえ立った角度を地平と平行にして行く
それに群がって積み上げていた坂東武者達は蜘蛛の子を散らすが如く四散した
「ふん!何のこれしき
とりゃあああ!」
頂上にいたフジオカだけは逃げられはせずにいたが
優れた体術を発揮し崩れ行く土嚢を跳び渡り地上へと降り立った
「どうだ!ジョスイ目にもの見たか!」
「バカ野郎!」
ドワワワワワン!
見得を切るフジオカの姿を無数の土嚢が覆い隠した
「フジオカ!」
「ヤスキヨ今行くぞ!」
坂東武者達はフジオカを救出せんが為再び集結しようとした
「待てぇぇい!」
それを押しとどめるはジョスイ
自らに綱を結びフジオカが居ると思われる箇所を掘りだした
「よく見ろ!
まだ崩れるぞ!
てめえ等は船大工から町人から思いつくだけ人を集めろ!
運が良けりゃ俺がこいつをほじくり出す
悪けりゃこの綱を辿ってみんなでこいつと俺をほじくり出してくれ!」
「ジョスーイ!!」
「うああああああ!」
ドワワワワワン!
坂東武者達の叫び声は轟音に掻き消された
「ドーマン!」
その声は絶望に染められた坂東武者達の心に希望を突き刺した
「アキヨリ様!」
「お戻りで御座いましたか!」
「フジオカとジョスイが!」
アキヨリは一つ頷き杭を拾い崩れた土嚢に突き刺した
「ダンザ!聞こえるか!
ここを狙えええい!!」
ドーマンで二人の位置を確認しギリギリの所まで大砲で土嚢を吹き飛ばそうというのか
「は!」
一部始終を見ていて駆け付けようとしていたダンザはとって返し
稲妻の様な素早さで火薬と炸裂弾を装填して
方位 角度を定め常に懐に忍ばせてある金属製のカイロから火種を取り出し導火線に着火した
「百発億中とくと見よ!」
バアアアン!
ヒュルルル!
炸裂弾は風を切りアキヨリの突き刺した杭を目がけ飛び
杭のど真ん中に命中しめり込ませ炸裂した
ドプアアアアアン!
大量の土砂が飛び散る
「とりゃあああ!」
爆風を受け流す様に跳躍し回転するアキヨリの目は爆発の中心を捉える
「ふんっ!」
そして生き埋めになった二人に爆発の熱が及ばぬように操炎の力を放った
無数の歯車が二人を取り囲む
スタッ!
アキヨリは二人の目の前に着地して腰を屈め両手を差し出した
「アキヨリ様!アキヨリ様あああ!
申し訳御座らん
ああああああああ!!」
「耳がぶっ割けるぜ若大将」
右手をフジオカに左手をジョスイに
これでもかという力で掴まれたアキヨリは
下半身がまだ埋まっている二人をこれでもかという力で引っ張り出し
これでもかという力でフジオカの尻を引っ叩いた




