俺を信じてくれたのか
「あー陸だ 揺れてねえ あー…」
早船から桟橋に降り立ち膝を左右にぐらつかせ
自慢の長髪が潮風で綿毛となったジョスイを真夏の西日が照らしている
「ジョスイ殿 大旦那様の所へ向かうので御座いましょう
水路を使ったらいかがではありませんか
でなければ馬を用意しますが」
港を管理するミクリヤの番頭がジョスイと並び桟橋を歩く
「船も馬も揺れるもんはしばらく御免だ 歩いて行く
あーかなり進んでるじゃねえか」
停泊する商船の間を抜けると
まず貯水池と成り行く
土と石と木材が目に入った
高い所では人の背丈程に積み上げ土嚢
杭を打ち込む為に組み上げられ
夕日に照らされ長い影を落とす櫓は
己の思い描く物が形となる
言いようの無い陶酔感にジョスイを浸らせた
「俺はまだ着工すらしてねえと思ってたんだ
ニザエモンの旦那は俺が帰るまで待てと言うだろうし
ギンザブロウはふざけた普請をやらせんなと
取り付く島もねえだろう」
「アキヨリ殿の鶴の一声であったと聞き及んでおります」
「だろうな
この普請には あいつの匂いがプンプンするぜ
とにかく人をのせるのが上手いヤツだ
まずはあいつに会いに行くか」
「今日はもうご自宅へお帰りかと」
「ああ もうここら辺でいいぜ
仕事があるだろ
明日には手下共が乗った船が着くと思う
よろしく頼むぜ」
「もちろんで御座います
本当にお疲れ様で御座いました」
ジョスイは番頭に後ろ姿で手を上げ応えた
「曲がりなりにも俺を信じてくれたんだよな
そうだよな若大将」
夕日も沈みかけた頃シラセ工房宿舎の前に辿り着いたジョスイは
引き戸の取っ手に手を掛けたまま固まってしまった
「なんか嫌な予感がするぜ」
ガラガラガラ
引き戸は内側から開かれ
引き戸に掛けられたジョスイの右手は左方に払われ
嫌な予感に背中を向けた形になってしまった




